NEW2020年09月24日

とにかく何でもリサイクルの時代に?

先日、ユニクロが古い衣類を回収して新しい商品へと作り替えるリサイクルのプロジェクトを始めると発表。また、花王とライオンは、ライバルどうしが手を組んで洗剤の容器のリサイクルに乗り出すことを決めました。大手企業が、これまでより一歩踏み込んでリサイクルの取り組みを活発化させています。企業のねらいはどこに?経済部でメーカー担当の太田朗記者、教えて!

ユニクロのリサイクルはどんなことをするの?

太田記者

消費者から回収した衣類に使われている原料を再利用して新しい商品に作り替えます。このプロジェクトの第1弾として発表されたのが、羽毛を再利用したダウンジャケットです。

まず、回収した古いダウンジャケットを機械を使って裁断。そこに風を当てて重さが違う羽毛と布地を別々に取り出すという新しい技術を取り入れました。従来は手作業で行っていましたが、自動化を実現したことで作業効率は50倍も上がり、量産化を可能にしたというわけなんです。

“リサイクルダウン”はことし11月から一般に発売することにしていて、今後はさらに別の商品にも広げたいとしています。

これまでも店頭で商品を回収していましたよね?

太田記者

ユニクロでは古着の回収を2006年から行っています。これまでは回収した衣類は汚れを取り除いたうえで、難民キャンプや災害の被災地などに届けていました。使わなくなった服を必要な場所に提供して再利用する試みで、「リユース」と呼ばれています。

会社としてはこの取り組みも継続しながら、今後はリサイクルにも力を入れるとしています。

アパレル業界でほかにリサイクルの動きはありますか?

太田記者

アパレルと深いつながりがある大手商社が海外企業と手を組んで動き始めています。

丸紅は去年、古着を溶かして原料を取り出す技術を持ったアメリカの企業に出資しました。リサイクル生地の販売に向けて検討を進めているということです。また、伊藤忠商事は特殊な薬品を使って古着からポリエステルを分解して取り出す技術を持った中国の企業と提携して、アパレルメーカーに生地を販売しています。

ほかの業界ではどうなんでしょうか?

太田記者

日用品大手の花王とライオンは、共同でリサイクルに乗り出すことを決めました。対象となるのは、洗剤やシャンプーなどの詰め替えで使われているプラスチック製の容器です。

詰め替え容器は品質を保つために何枚ものフィルムを重ねた構造になっています。複数の素材を組み合わせて作られているため、分解が難しく現状ではリサイクルできません。自治体の区分によって異なりますが、使い終わったら燃えるごみなどとして処理することが多いですよね。

そこに目を付けた2社。ライバルどうしが手を組む異例の形でリサイクル技術を研究することにしたのです。

素材ごとに溶け出す融点が異なる特徴を踏まえた分離手法の研究や、リサイクルが簡単な素材を使った容器を開発することも検討します。同時に、自治体や小売店と連携して使用済みの容器を回収する仕組みも整えて、2025年を目標にリサイクルを実現したいとしています。

ライバル企業どうしが協力までしてリサイクルに取り組む理由は?

太田記者

世の中の環境問題への意識の高まりが企業を動かしているといえます。花王とライオンは競合相手ですが、環境問題に取り組むうえでは、ライバルとも技術を共有すべきだと判断したのです。

ただ、リサイクル原料のものを使うと通常の原料を使う場合に比べてコストがよけいにかかるケースが多く、その分は販売価格に上乗せされる場合も出てくるかもしれません。

一方で、消費者の意識が高まっていることで、多少値段が高かったとしても環境にやさしい商品が選ばれるのではないかと、企業側も考えているのです。

こうした取り組みが今後広がるかどうかは、私たち、消費者の選択にもかかっているといえそうです。