セブン&アイ なぜアメリカのコンビニ買収?
流通大手のセブン&アイ・ホールディングスが、アメリカ第3位のコンビニを2兆円余りで買収することを決めました。新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカ経済が急激に落ち込むなか、なぜ今、巨額の買収に乗り出すのでしょうか?
セブン&アイが買収を決めたのは、どんな会社なんですか?
買収するのは、アメリカの石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニを併設するガソリンスタンド部門「スピードウェイ」です。セブン&アイは210億ドル、日本円にしておよそ2兆2000億円を投じて、来年1月から3月の間に買収するとしています。スピードウェイは、アメリカのコンビニ業界で3位となる、およそ3900店舗を展開しています。
実は日本のセブン&アイは、連結子会社を通じて、アメリカでは9000店舗余りのセブン‐イレブンを展開していて、現時点でもアメリカのコンビニ業界1位の地位を占めています。今回、業界3位の店舗数のスピードウェイを買収することで、およそ5900店舗を展開する業界2位のコンビニを大きく引き離したい考えです。
背景には、日本国内の小売り市場が今後大きな成長が見込みにくい一方で、堅調な成長が見込まれるアメリカ市場で店舗網を拡大することで、グループ全体の成長につなげるねらいがあります。
ガソリンスタンドにコンビニが併設されているとは、いかにも車社会アメリカらしいですね。
コンビニが併設されたガソリンスタンドは、スピードウェイだけでなく、 アメリカでは一般的です。セブン‐イレブンも、アメリカではガソリンスタンドに併設されていることも多いようです。
ただ、ガソリンか、コンビニか、売り上げの構成は各社によってさまざま。セブン&アイによれば、買収するスピードウェイの売り上げの構成比は、ガソリンが76%余りなのに対して、コンビニでの商品が23%余りです。
一方、北米のセブン‐イレブンの売り上げの構成比は、ガソリンと商品で半分程度ずつとなっています。スピードウェイはガソリンへの依存度が高いと言えそうです。
7月、アメリカの電気自動車メーカー「テスラ」の時価総額が「トヨタ自動車」を抜いて、自動車メーカーとして世界一になったというニュースがありました。電気自動車が注目される中、市場では、なぜ今、セブン&アイがガソリンスタンドに関わる事業に投資するのかという声もあります。
セブン&アイの井阪隆一社長は、今回の買収に関する電話会見で「ガソリンの販売を増やすことが目的ではない」と説明し、コンビニ事業の拡大のために投資を行ったと強調しました。
それにしても、今回は大きな買収になりましたね。新型コロナウイルスの感染拡大で経済に大きな影響が出ているなかでの大型投資ですが、大丈夫でしょうか。
スピードウェイをめぐって、セブン&アイはことし3月にいったん買収を断念しています。巨額の買収金額で交渉が折り合わなかったためとみられています。当時、交渉を進めていた際の買収額は220億ドルとされていて、今回は当時よりは少し安く買収することになりましたが、とはいっても日本円で2兆円を超える案件。セブン&アイとしては、グループの将来の成長のためには何としてもこの案件をものにしたいと考えたとみられます。
セブン&アイの事業展開を見てみると、傘下の総合スーパーのイトーヨーカ堂と、デパートのそごう・西武では人員削減や店舗の閉鎖といった構造改革を打ち出しています。
また主力のコンビニ事業では、住宅地にある店舗が堅調な一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってオフィス街や行楽地にある店舗は苦戦しています。
井阪社長は電話会見で、「新型コロナの収束のめどは立たないが、5年先10年先を考えて成長に大きなメリットになると判断した」と述べ、買収の意義を強調しました。
巨額の費用を投じる今回の買収が、会社が想定しているような形で長期的な効果を発揮するのか、株主や全国のコンビニオーナー、そして市場といった多くの関係者が注目しています。
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