「老後に2000万円必要」本当はどうなの?
老後の資産形成をめぐり「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会の報告書に批判が相次いでいます。「公的年金の責任を放棄している」などというのが批判の内容ですが、では、老後のお金は本当に大丈夫なのでしょうか?
批判されている報告書って、そもそもどんなものなんですか?
「高齢社会における資産形成・管理」と題された報告書よ。大学教授や企業経営者、エコノミスト、弁護士などがメンバーとなった金融庁の審議会のワーキンググループがまとめて、今月3日に公表された。
今60歳の人のうち、およそ4人に1人が95歳まで生きるという試算がある。「人生100年時代」ね。こうした時代に、個人はどうすべきか、資産運用や投資などの金融サービスを提供する側はどうすべきか、方向性を示すことが狙いなの。
そこに、老後に2000万円必要になると書かれていたわけですか?
詳しく説明するわね。老後の人生を、多くの人が仕事をリタイアする65歳+30年=95歳と仮定して、試算したの。
夫65歳以上、妻60歳以上の仕事をしていない夫婦2人の世帯の平均で、
▽年金などの収入=20万9198円
▽支出=26万3718円。
これを差し引きすると、毎月の不足額が5万4520円となるわね。報告書ではこの不足分を「赤字」と表現し、「保有する金融資産(貯蓄や退職金など)から補てんすることになる」としている。
毎月の赤字を30年分、20年分で単純計算すると、
▽30年で約2000万円
▽20年で約1300万円になると示している。
報告書は、公的年金にプラスして「お金」がどの程度必要になるのか、示すための単純な試算だったというわけ。
なるほど。でも、いきなり2000万円必要だといわれると、やはりちょっとびっくりしますね。
そうね。ここ数日、報道を受けてネット上でさまざまな意見が出された。
国会でも、野党から「政府の公的な責任を放棄している」など批判が相次いだ一方で、与党からも「誤解を招く」などと批判が出た。
結局、麻生副総理兼金融担当大臣が11日、「世間に対して不安や誤解を与えている」と述べ、担当大臣としては、正式な報告書として受け取らない考えを示した。
この結果、報告書は金融庁に提出されず、内容が政策に反映されないことになったの。審議会の報告書が提出されないのは、異例のことね。
しかし、安心して老後を迎えるには、年金だけでなく、ある程度のお金が必要だという不安は多くの人が感じていることですよね。2000万円かどうかはともかく、実際にそれなりの蓄えも必要なのではないですか?
そうだと思うわ。報告書で示された2000万円は、あくまで平均としての試算。
現役時代の収入や貯蓄、退職金のあるなしや、その金額、それにそれぞれの人のライフスタイルや、何歳から年金を受け取るのかなどによって、「老後に必要なお金」は大きく違ってくる。
「人生100年時代」という、これまでにない長寿社会に向けて、お金の問題にどう対応するか、政府も改めて検討していく必要がありそうね。
そして、これから「老後」を迎える人たちは、年金や退職金がどうなるのかや、貯蓄や資産運用をどうするか、老後にどういうお金の使い方をするか、一人ひとりがしっかり考えておきたいところね。
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