首都直下地震はいつ?「今後30年で70%」の根拠は
最悪の場合、死者2万3000人、経済被害は95兆円に達すると言われる首都直下地震。発生確率は今後30年間に70%とされています。本当に起きるのか。想定の根拠は何か。背景には関東南部直下などを繰り返し襲った地震の歴史があります。
2019年放送の番組「体感 首都直下地震」で紹介された内容です
目次
南関東で起きた8つの大地震
2014年、政府の地震調査委員会が示した「今後30年で70%」という数字。これは過去に発生した8つの大地震を根拠にしています。
①1782年 8月23日 「天明小田原地震」(M7.0)
②1853年 3月11日 「嘉永小田原地震」(M6.7)
③1855年11月11日 「安政江戸地震」(M6.9)
④1894年 6月20日 「明治東京地震」(M7.0)
⑤1894年10月 7日 「東京湾付近の地震」(M6.7)
⑥1895年 1月18日 「茨城県南部の地震」(M7.2)
⑦1921年12月 8日 「茨城県南部の地震」(M7.0)
⑧1922年 4月26日 「浦賀水道付近の地震」(M6.8)
この8つの大地震は1703年の「元禄関東地震」(M8.2)と1923年の「大正関東地震(=大正の関東大震災)」(M7.9)の間に発生しています。
関東南部の沖合には「相模トラフ」があり南からフィリピン海プレートが沈みこんでいます。「元禄関東地震」と「関東大震災」はいずれもこのプレートの境目「相模トラフ」で発生した“巨大地震”です。
特に大きかった2つの地震の間に起きた8つの地震は、規模は小さいですがマグニチュード7前後あって、「相模トラフ」ではなく、多くの人が住む地域の直下で発生し大きな被害をもたらしています。
首都直下地震に類似する「安政江戸地震」
8つの大地震のうち首都直下地震に特に類似するとされるのが1855年の「安政江戸地震」です。ペリー提督が黒船で来航した2年後、第13代将軍 徳川家定の時代に発生しました。
東京湾北西部が震源と考えられ、当時の江戸の広い範囲が激しい揺れに襲われました。特に江戸城の東側、いまは超高層ビルが建ち並ぶ東京 千代田区丸の内のほか、墨田区、江東区、それに横浜市などで揺れが強かったとされています。およそ1万5,000軒の家屋が倒壊し火災も発生。死者は7,000人以上に上ったとされています。
220年間で8つの大地震 将来は…
地震調査委員会は「元禄関東地震」から「関東大震災」までの220年間を1つのサイクルとして、今後のマグニチュード7クラスの大地震の発生確率を予測しています。220年の間に8回発生しているため、単純に計算すると27.5年に1回。これをもとに地震学で用いられる将来予測の計算式に当てはめると「今後30年以内に70%」という発生確率が導き出されます。(※震源は特定せず領域内のどこかで発生するものと評価)
切迫する首都直下地震
「前半は比較的静穏で、後半に活発になっている…」
専門家の中にはこう指摘する人もいます。220年間をよく見ると地震活動の“静穏期”と“活動期”があります。
期間前半の100年間は1782年の「天明小田原地震」だけですが、期間後半では「関東大震災」の前年とその前年に合わせて2回、それに1894年から翌年にかけては3回などと大地震が相次いでいます。
「関東大震災」からことしで100年近くが経過し、これから活動期に入ると指摘されているのです。
歴史をさらにさかのぼると…
さらに歴史をさかのぼって大地震を指摘する声もあります。今から1100年余り前の9世紀のことです。
▽869年「貞観(じょうがん)地震」
▽878年「元慶(がんぎょう)関東地震」
▽887年「仁和(にんな)地震」
「貞観地震」は東北の太平洋沖合で起きたマグニチュード8を超える巨大地震です。
沿岸に大津波が押し寄せ、2011年の東日本大震災に類似しているとされています。
注目するのはその9年後です。
当時の相模国、武蔵国(いまの関東南部)に激しい揺れをもたらした「元慶関東地震(=「相模・武蔵地震」)」が発生。「貞観地震」を2011年の「東日本大震災」と仮定すると、「首都直下地震」にあたる「元慶関東地震」の発生した9年後は2020年になります。
これらは限られた歴史記録をもとにした推測にすぎませんが、歴史的におきたことでもあります。
首都の中枢機能に大きな影響をもたらし深刻な被害が想定されている「首都直下地震」。いつ起きてもおかしくないと考えて備える必要があります。
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