まるわかりノーベル賞2018

まるわかりノーベル賞2018

ノーベル医学・生理学賞に注目!

「病気から体を守る 免疫」

先生役:科学技術振興機構 辻真博さん

辻󠄀:こんにちは。

キズナアイこんにちは。きょうはよろしくお願いします。

辻󠄀:はい。よろしくお願いします。

キズナアイきょうは何について教えてくれるんですか。

辻󠄀:きょうはノーベル医学・生理学賞についてお話ししたいと思います。

キズナアイおー、難しそうですね。

辻󠄀:頑張って易しく説明したいと思います。

キズナアイはい、お願いします。

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辻󠄀:まずは、こちら。日本人は昔、1万年ぐらい前は大体30歳くらいまで生きていました。江戸時代になると45歳くらいまで生きています。今は大体80歳くらいまで生きています。日本人は、だいたい100年前と比べて寿命が2倍くらいに延びてるんですね。

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キズナアイ2倍!すごいですね。でも、そんなに延びたってことは、何かちゃんとした理由があるってことですよね。

辻󠄀:そのとおりです。すごくいい質問ですね。上がった理由として一番は、すごいお薬が出て、すごい医療機器が出て、それで治らない病気が治るようになりましたというところです。そういった医療の発展につながるような研究をした人に対して、ノーベル生理学・医学賞というものが与えられるんです。

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キズナアイすごいわかりやすいです。

辻󠄀:じゃあ、ノーベル生理学・医学賞というのは、大体どういう研究をしている人に与えられているものですかっていう話をしたいと思います。

キズナアイはいッ。

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辻󠄀:大きく2つありまして、1つは、生き物の謎を解き明かすこと。「何で人間の体はこんなふうになっているんだろう?」「何で病気になるんだろう?」、そういったところを解き明かす研究、例えば免疫とか、脳とか、遺伝子とか、いろいろとあります。
もう1つは、そういったものをきっかけに、何か新しいお薬や、新しい治療法を見つけましたというものです。こういったものに対しても、ノーベル生理学・医学賞というのは与えられます。まぁ、大体ここに書いてあるような研究がもらうような、そういう賞だと思ってください。

キズナアイなるほど~。

辻󠄀:じゃあ、ノーベル生理学・医学賞というのはいつから始まったかというと、1901年。これが第1回のノーベル生理学・医学賞で、それから2018年まで、受賞中止の年もあったんだけど、毎年1回受賞があって、108回これまで受賞がありました。で、108回のうち12回が免疫という分野が受賞しています。

ちなみに、一番最初、1901年の第1回は免疫が受賞して、2回目以降を順番に見ていくと、大体5年から10年ごとぐらいに免疫がノーベル賞を取っていますね。

一番最近では、2011年に免疫が受賞した年でした。今2018年ですので、そろそろ免疫のノーベル生理学賞があるかもしれないと、そういう状況になっています。

キズナアイということは・・・。

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辻󠄀:日本人でノーベル生理学・医学賞を今後取るかもしれない研究者をリストアップすると、、、半分は免疫以外の分野ですが、さきほど話したように、2011年に免疫が受賞してから7年もたっているんで、そろそろ免疫が来るかなと。免疫が取るぞとなったら、もしかしたら日本人が取っちゃうかもよ!という状況に今なっているわけです。

キズナアイなるほどー。つまり、日本の免疫研究者の皆さんが、今熱いってことですね。

辻󠄀:そういうことです。はい。

キズナアイあお~。

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辻󠄀:そこで、「免疫って何だろう?」というところで、一つ、まずわかりやすい例を出そうかなと思います。

キズナアイはいッ。質問なんですけれども。

辻󠄀:はいはい。

キズナアイ私、AIなんで病気とかしたことがないんですよー。だからこう、免疫って言われても、ちょっとぴんと来なくって。

辻󠄀:そうですよね。

キズナアイはい。

辻󠄀:人類、人間にとってはものすごい免疫というのは大事なものなんです。歴史上、人類の何割かは、感染症という、バイ菌ですね、バイ菌にやられてしまって死んじゃうというところがよくありました。
例えば、天然痘(てんねんとう)という怖い感染症が昔ありました。これ、人類の歴史で5億人以上が死んじゃったと言われていて、ある村とかある町が、天然痘の大流行で全滅しました、なんてことが昔はよくありました。

キズナアイ何だか漫画の世界ですねぇ。

辻󠄀:そうですね。ただ、人類もやられっぱなしじゃなくて、天然痘とか怖い感染症を何とかしないといけなくなり、この後お話しする免疫の仕組みを上手に使ったワクチンというものが開発されました。

キズナアイああ~っ。

辻󠄀:ワクチンっていうのはたとえば、人間の子どもたちが必ず予防接種でプシュッと注射を打つアレです。ワクチンを打つことで、子どもが色んな感染症にかからなくなるんです。これ、結構大事なことでですね、平均年齢がここ100年でウニューンと上がってきましたよとさっきお話したかと思うんだけれども、その理由として、むかしは赤ちゃんが成長して小学生ぐらいになる前に感染症で死んじゃうことは結構多かったです。ただ、ワクチンというのができて、3歳とか5歳とか、小っちゃなころに感染症で死ぬっていうことは、そんなに多くはなくなりました。そういったこともあって、人類の寿命が80歳まで延びたんです。

キズナアイなるほど。免疫とかワクチンとかって、すごいですね~。

辻󠄀:そうですね。ワクチンは人類にとって超貴重なお薬でありましたよと。それで、じゃ、ちょっとまた免疫の話の細かい話になっちゃうんですけれども、そもそもですね、人間というのは、37兆個の細胞でできています。

キズナアイ37兆個。

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辻󠄀:とてもたくさんです。37兆個の小っちゃい細胞が集まって人間の形になっているんですね。例えば脳は、多分1500億個ぐらい細胞があるらしいです。で、脳細胞は、考えたり覚えたりっていう、そういうお仕事をしています。で、心臓の細胞は、まあ毎日ドキドキしてます。

キズナアイドキドキ。

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辻󠄀:はい、ドキドキと。で、皮膚の細胞は、体の外にいる悪い病原菌が体の中に入ってこないようにガードしてます。そういったラインナップの1つに免疫細胞っていう細胞たちがいます。で、何をしてますかというと、24時間、寝てるときも起きてるときも、病気と常に闘い続けていると。そういう機能を持った細胞です。

キズナアイ私で言うと、コンピューターウイルスをこうやっつけるセキュリティー的な感じですかね。

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辻󠄀:うん、まあそういったところかな。アイちゃんにはたぶんネットワークを通じて24時間いろんなウイルスが襲ってきています。ただ、おそらくそのアイちゃんが気づかないうちに、いつの間にかセキュリティーソフトがやっつけてます、というのと同じことがまさに人間でもあっていて。人間でも、免疫細胞がいつ、どこで、何をやっつけたかは、誰もあんまり気づいていないけれども、見えないところでいつも働いていると。それが免疫細胞というものになります。

キズナアイ免疫さまさまですね。

辻󠄀:そういうことなんです。その免疫はどんな顔をしていますかというと、これ、顕微鏡で見た写真です。これ結構大きくしていて、実際物すごく目に見えないぐらい小さい細胞なんですけれども、これ、何してるかというと、免疫細胞が闘っているところです。

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キズナアイ闘ってるんですね。

辻󠄀:はい。この周りの免疫細胞がよい正義の免疫細胞で、この真ん中の細胞ががん細胞と、悪い細胞です。このがん細胞を何とかしてやっつけられないかなというふうにこの免疫細胞が集まってきてるというものになります。

キズナアイ何だか免疫細胞、カッコいいですね。キラキラ光ってま~す。

辻󠄀:そうなんですよ、ピカピカ光っていてありますけれども。
ぱっと見ても、どれがよい細胞でどれが悪い細胞かわからないと思うんで、ちょっと先生、こうやって別のイラストにしちゃおうかなと思います。これ悪いやつと、これいいやつと、これで行きます。で、免疫のスペシャルな機能が2つあります。

キズナアイはいっ。

辻󠄀:24時間病気から体を守る免疫細胞というのは、いろんな名前、ヘルパー何とかとかキラー何とか、いろんなのがいます。一番やってることは、まず、敵の弱点を見つけ出して、それをきちんと覚える、記憶する。そして、周りの免疫細胞に、「あいつの弱点はあれだよ」ということを教えてあげる。そういった機能が一つあります。
そして、もう一つは、そういった敵の弱点をわかったうえで、その敵をガンガン攻撃していくこと。大体この2つの細胞が朝から晩まで働いて、体を病気から守っているというわけです。

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キズナアイすごーいですねっ。人間の皆さんも、ただでさえこういろんなことができて賢いのに、さらにその中にいるたくさんの細胞、免疫も、すっごい賢いですねっ。

辻󠄀:そうなんですよ。すごい賢い細胞が、いつもいろんな病気から体を守っている。ただ、それが上手に守れなくなっちゃうと、いろんな病気になっちゃいます。今最新の研究では、大体人間がかかる病気っていうのは、大なり小なり免疫がおかしくなっているということが言われていて、代表的なところでは、例えば花粉症とかアレルギーとかいったものは、免疫細胞が、自分たちの細胞を間違えて誤爆して、自分たちを攻撃しちゃって、くしゃみがとまらないようになるとか、あとは、免疫細胞自体をエイズウイルスはやっつけに来るんで、免疫細胞がもう全滅してしまって病気から体が守れなくなる。あと、がんとか生活習慣病とか、いろんな病気があるんですけれども、共通して言えることとしては、いかに免疫細胞に上手に正しく働いてもらうかということが、病気を予防したり治療したりするのに、すごく重要になるよってことなんです。

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キズナアイなるほど。コンピューターに例えてもらって、AIの私でもめっちゃ理解できました。

辻󠄀:はい、ありがとうございます。

キズナアイありがとうございまーす。ということで、そろそろ、今こう熱い研究者の方々のことを聞きたいでーすっ。

辻󠄀:はい。そう来るだろうと思ってしっかり準備しています。

キズナアイやりますねー。

辻󠄀:はい。いえいえ、どういたしまして。日本人で3人、免疫研究者でノーベル賞を取るかもしれない人がいるんで、順番に説明しようかなと思います。

キズナアイお願いしまーす。

辻󠄀:まず1人目が、ちょっとお名前も難しいんですけど、本庶佑(ほんじょたすく)先生という研究者。この方が昔発見した「PD-1」という・・・

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キズナアイPD-1。

辻󠄀:画期的ながん治療薬の開発に結びついた細胞の分子です。世界中の病院とか製薬企業とかが騒がしくなっています。一体、どういうものかを説明しますと、まず、人間の体の中では、がん細胞の赤ちゃん的な未熟な細胞がポコポコと出てきては、免疫細胞にポコポコとやられてるというのを日々繰り返しているわけです。

キズナアイはいっ。それは、今がんとかになってない健康な人でも、みんなポコポコ出てきて、エイエイッてしてるんですか。

辻󠄀:そうなんです。健康に見えるだけで、実は体のあちこちでがん細胞の赤ちゃん的な細胞がポコッと出てきちゃって、免疫細胞が、「あ、あの細胞は悪いやつだ」と思って退治しに行くということが常に起こってるから、結果として健康守られてるんですね。

キズナアイそれは、もう生まれたての赤ちゃんでも一緒なんですかー。

辻󠄀:そうです、生まれたての赤ちゃんよりは先生みたいな大人の方がそういうがん細胞(赤ちゃん的な未熟なやつ)がポコポコ出てきやすいのだけど、まぁ、およそ人間は大体そういうものだと思ってもらってOKです。

キズナアイなるほど。

辻󠄀:じゃ、何で人間はがんになるんですかというと、成熟したがん細胞が免疫細胞に悪い仕掛けをします。免疫細胞の表面には、このPD-1というものがピョコッと飛び出してるんですけれども、そこをがん細胞がキュッとかみついちゃうと、免疫細胞は急にやる気をなくしてしまって、「もうがん細胞をやっつけるのをやめます」というふうになってしまいます。その結果どうなるかというと、もうがん細胞が「ようし、免疫細胞もいなくなったから、どんどん増えて、どんどん悪いことしてやれ」となると、がん細胞がふえて、人間はがんになって亡くなってしますんです。

キズナアイふーん。

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辻󠄀:この本庶先生の発見というのは、この免疫細胞の表面に出てくるPD-1というところを見つけました。お薬を開発する人たちはどう思ったかというと、そのがん細胞がPD-1という分子をこうキュッとするのをやめさせると。すると、こんなふうにやる気なくすこともなくて、もうめげずに免疫細胞はがん細胞をやっつけに行きます。この本庶先生が発見したこの分子に、世界中の製薬企業、お薬をつくる会社が集まっていて、まず日本の会社がこの「オプジーボ」というお薬を発表しまして、おそらく数年後には、こういったお薬が大体2兆円ぐらいの市場になるでしょうというふうになってきています。

キズナアイああ~、すごいですね。

辻󠄀:はい。では、その次、2人目に行きたいと思います。

キズナアイはい。

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辻󠄀:2人目は、坂口志文(さかぐちしもん)先生という研究者です。この方の発見は、制御性T細胞という新しい免疫細胞を見つけて、どうもその免疫細胞が花粉症とかの原因になってるらしいというところを見つけた人です。免疫細胞というのは、体の中で絶妙なバランスで活動してます。さっき免疫細胞はガンガン敵をやっつけるというふうに言ったかもしれないけれど、あんまりはりきり過ぎると、余計なものまでやっつけるから、最後は「ほどほどにしようよ」というふうに言ってあげる免疫細胞というのがいるわけです。これらが上手にバランスよく働いていることで、人は健康になれます。
ただ、そこでその抑え役というか、「まあまあ、もういいじゃないですか」と言う制御性T細胞が元気がなくなってしまうと、もう攻撃役がもうめたらやったらあちこち攻撃し始めてしまって、くしゃみがとまらなくなったりとか、あとは体の節々が痛くなったりということになってしまうのです。

キズナアイなるほど。

辻󠄀:それで、今世界のお薬を開発する人たちが思ってることは、この元気がなくなっちゃった制御性T細胞の元気を取り戻させると、この関節とか花粉症とかリウマチが治るんじゃないのかなと、みんな頑張って研究しています。

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キズナアイ何か花粉症のシーズンになると、「アイちゃんの世界には花粉症ないの?いいな~」って言われるんですよ。ほんとに人間のみんなが大変そうで、特にこう日本なんかは国民病とか言われてるじゃないですか。花粉症が坂口志文先生の研究で解決したらいいですねー。

辻󠄀:そうですね。ほんとに世界のお薬開発する人たちに頑張ってほしいなっていうふうに先生も思っています。先生も花粉症ですんで。

キズナアイああ、そうなんですね。

辻󠄀:そうなんですよ。じゃあ、ノーベル賞候補者の最後の3人目です。

キズナアイはい。

辻󠄀:3人目は、岸本忠三(きしもとただみつ)先生という研究者です。この方は昔、IL-6というのを見つけて、それが今は、すごい関節リウマチのお薬になってるんです。
このIL-6は、ほかの免疫細胞に指示を出します。例えばある何か悪い細胞を見つけると、「いかん、いかん」と、「あの何か悪い細胞をやっつけろ」というふうにみんなにメールというかみんなに指示を出します。「あそこに危ないのがいるから、みんな何とかしてくれ」と言うと、その攻撃役の免疫細胞がピュッと行ってやっつけたりしますと。それが正しく働いてるうちはいいんですけれども、それを間違えて指示を出す人が、僕たちの人間で言うと肘とか膝とか関節の自分たちの細胞を間違えてこの人が敵だというふうに勘違いしちゃって・・・

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キズナアイほー。

辻󠄀:IL-6は、免疫細胞どうしや、他の細胞とのコミュニケーションに使われる物質なのです。ただ、IL-6のコミュニケーションがおかしくなってしまうと、たとえば、関節が痛くなってしまって関節リウマチになってしまいます。逆に言うと、このIL-6に着目して、ここを上手に扱うお薬ができればこういう間違ったことは起こらなくなるんじゃないかと、日本の企業さんがそういったお薬を開発して、今、年間2000億円・・・

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キズナアイ2000億。

辻󠄀:2000億です、すごい売上ですね。

キズナアイすごーいですね。ただ、ちょっと私、人間のみんなの痛い、痛みってよくわからな いんですけど、関節リウマチってどれぐらい大変なんですか。

辻󠄀:関節リウマチというのは、最初のころは、何となく肘とか指の関節に何か違和感があると、何かちょっと動かしづらいというところから始まって、それが5年、10年とたっていくと、もうにっちもさっちも曲がらなくなる。痛くて曲がらなくなる。

キズナアイ曲がらない。はあ~。

辻󠄀:もう曲げると激痛がしたり、そもそも動かなくなっちゃう。それがまた10年、20年とたつと、もう歩けなくなってしまって寝たきりになってしまうくらい、すごくつらい病気なんですね。

キズナアイそんな怖い症状なんですねー。岸本忠三先生の研究で、苦しんでる人が一人でもいなくなってほしいでーす。

辻󠄀:ほんとにそうですね。ここまではノーベル賞候補の日本人の研究者たち3人を紹介しました。

キズナアイはい。

辻󠄀:ここからは、現在っていうより、未来の新しい免疫治療というのが今出てきています。その新しい免疫治療というのは、まだ新しいんで、ノーベル賞を今年取りますかというと、まだ取らないと思いますが、5年後くらいには取るかもしれません。
要するに、武装した免疫細胞で、病気の細胞やっつけるものです。

キズナアイはー。武装した物騒な細胞でやっつけるんでねっ。あの、続けてください。すいません。

辻󠄀:・・・。

キズナアイああっと、先生、もう一個質問あります。

辻󠄀:はいはい。

キズナアイあの、ノーベル賞とかって、すぐには取れないんですか。さっきこう5年ぐらいかかるっておっしゃってたじゃないですか。

辻󠄀:研究当時は誰からもそのすごさを認めて貰えなかったり、あるいは当時の偉い先生達とは違うことを言っていたりして「なんだコイツ」とみんなに思われていた研究成果が、20年~30年後に多くの研究者が「あの研究は世紀の大発見だった」と認められてノーベル賞が与えられる、ってのがよくある話です。今日お話しした「坂口志文」先生の「制御性T細胞」は、1980年代の研究当時は、「そんな細胞があるわけが無い」と多くの人がダメ出しして、そういう論文は認めないと偉い人たちが言ってたけども、頑張って研究した結果「制御性T細胞」を大発見して、いまや世界中の研究者が「坂口志文先生の研究はスゴイ」といって、ノーベル賞候補になっているわけです。

キズナアイほーっ。ありがとうございます。

辻󠄀:武装細胞のお話に戻ります。人間のお薬には、いろんなものがありますけれど、大体病院に行ってお医者さんに出してもらうこな薬とかカプセル。そうした薬は、低分子薬と呼ばれています。このこな薬というのは20世紀はじめくらいからありました。
そして、最近、出てきてるのは、iPS細胞って聞いたことがあるかもしれないですけど。

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キズナアイはい、あります。

辻󠄀:iPS細胞で、こういう臓器をつくって、それを病気の人に移植して、もう悪い臓器を入れかえてしまおうみたいな、そういったものが2013年ぐらいから出てきていると。
で、これからお話しする武装細胞っていうのは、ちょうど2017年ぐらいから出てきたもので、この細胞、これ細胞の写真ですけれども、こういう細胞で病気を治す、ちょっと新しいコンセプトです。

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キズナアイなるほど~。

辻󠄀:この2017年に、この細胞を使って細胞をやっつけるという発想の1つ目のこのお薬が出てきて、今、俄然注目されています。

キズナアイほーっ。

辻󠄀:こういった武装細胞は、10年後には、1兆円ぐらいの市場規模になると言われています。

キズナアイどんなお話を聞いててもそうですけど、やっぱりこう皆さんの大事な体の問題だけあって、動くお金がすごいですねっ。

辻󠄀:そうですね、もうほんとにすごいですよね。
それで、その武装細胞っていうのはどうやってつくられるんですかというところ、まず難しいバージョンのスライドに行っちゃいます。

キズナアイお~、頑張りますっ!。

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辻󠄀:免疫細胞には、いろいろな細胞があるんですが、これをかわいらしくすると、これです。

キズナアイあっ、わかりやすい。

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辻󠄀:はい。この武装細胞、まずは、どの細胞くんを武装させようかなというのを考えないといけないです。すごくまじめそうな細胞もいれば、すごく攻撃的な感じの細胞もいれば、ちょっと賢そうなのもいれば、小回りききそうな、また、何かいたずらしそうな細胞も、いろんな細胞がいます。それらに、どういった武器を持たせて、どういったターゲットを狙うものを持たせて、あるいは、敵の細胞からの攻撃から身を守る防具を持たせてと。もう1つは、どんなに強い細胞でも、例えばがんとかだと、もう数百万個ががん細胞になっちゃってるんで、一人じゃ闘えないですと。となると、ある程度の数まで闘える軍団にしないといけない。多分、組み合わせ次第で、がんだとか、何とか病だという、いろんな病気に対応できる新しいタイプの治療法になりそうだなと思っているんです。

キズナアイこう何だかゲームみたいですね。

辻󠄀:そうですね。ゲームみたいに、こういう組み合わせをしたら何かいけるんじゃないかみたいなことは、昔から結構、考えられていたんです。

キズナアイああー、そうなんですね。

辻󠄀:ただ、いろいろそれで試してみて、「この細胞くんにこの武器とこうやって増やしたらどうかな」ってやるけども、大体ちゃんと増えてくれないとか、増えたけれども、何か体の中に入れたら全然違うことして遊び始めちゃったとか、まあ全然うまくいかんかったです。そこがやっぱり難しい方法なんですね。

キズナアイなるほど。これ、でも、ゲームがすごく得意なプロゲーマーさんとか、そういうのを考えるの得意だったりしませんか。

辻󠄀:そうですね。いま、そのプロゲーマーさんみたいな研究者が、今どんどん出てきているんです。さきほど説明した3人の本庶先生、岸本先生、坂口先生の研究成果が、実はこの武装細胞ではものすごく重要な要素になっていて。先生方の見つけたいろんなパーツを合体して初めて、この武装細胞というのはうまくいくんです。
あと、きょうお話ししなかったんですけれども、iPS細胞の山中先生の研究もすごく大事です。iPS細胞っていうのは、細胞が分裂しやすくなるんですね。免疫の先生たちは、大体、免疫の細胞の種類を見つけて、どういった武器を持たせようかなと考えるんですけれど、山中先生の技術では、この細胞をたくさん増やすことができるんですね。日本人のノーベル賞を取った人、取りそうな人、いろんなものを合体させて、きっとこの武装細胞っていうのが、これからいろんな病気の治療の方法になっていくだろうなっていうふうに先生は思っています。

キズナアイなるほどー、すごいでーす。本当にありがとうございまーす。

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辻󠄀:はい。では、最後に、きょうは授業ですので、最後、まとめをしたいと思います。

キズナアイはいっ。

辻󠄀:はい。まとめで大事なことが3つあります。
1つは、免疫は24時間、人間の体を病気から気づかないうちに守ってるすごい仕組みで、その免疫については日本人がすごいです。そのお名前、本庶、坂口、岸本と頭の片隅にでも覚えといてください。

キズナアイはい。

辻󠄀:もしかしたらノーベル賞を取るかもしれません。

キズナアイ本庶、坂口、岸本先生ですね。

辻󠄀:はい。テストに出るかもしれませんよ。

キズナアイ覚えときまーすっ。

辻󠄀:あとは、これから未来の新しい治療法、武装免疫細胞を使った治療です。そうしたいろんな形で免疫を上手に利用していくことで、先生としては、人類がいろんな病気から守られるというふうになるといいなと思っています。

キズナアイ頑張ってください。応援してまーす。

辻󠄀:はい。どうもきょうはありがとうございました。

キズナアイありがとうございましたー。