まるわかりノーベル賞2017

ことしもノーベル賞の発表の季節を迎えました。日本人は、ここ3年連続で受賞していて、初めての4年連続となるかにも注目が集まっています。ことしは、どのような研究が注目されているのか。タレントで中学1年生の鈴木福君が、東京・お台場にある日本科学未来館を訪れ、ノーベル賞の“予習講座”を受けました。まず案内役を務めてくれたのは、未来館の科学コミュニケーターの石田茉利奈さんです。

ノーベル賞 人類に貢献した人に

まるわかりノーベル賞2017

福:よろしくお願いします。

石田:よろしくお願いします。これから未来館を案内します。まず3階の常設展に向かいます。

石田:ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルさんの遺言にしたがって設立された賞です。人類の幸福に最も貢献した人に贈られています。

ここには、未来館に来てくれたノーベル賞受賞者からのメッセージを展示しています。 こちらは2000年にノーベル化学賞を取られた白川先生のものです。どんなことを書いていますか?

まるわかりノーベル賞2017

福:「なぜと問うのはなぜだろう?不思議に思う心を育くもう!」と書いています。

石田:なぜ?って思うこと、結構ある?

福:ありますね。こういうふうに書いてあるのも、なんでだろうって思いますね。

石田:お~。すごい研究者向きかもしれないね。たくさんの方がメッセージをくれているけど、いまみたいに、なぜ?って思うことが大事ですって書いている人が多いです。みなさんの研究も「なんで?」があったからこそ、成し遂げられたものなんですね。

まるわかりノーベル賞2017

石田:そのノーベル賞は、毎年10月に受賞者が発表されます。もうすぐです。

福:そろそろですね。

石田:毎年、未来館では、ノーベル賞の発表前に誰がどんな研究で受賞しそうかを予想し、発表後には受賞した人と研究内容を解説するイベントをしています。こちらですね。「どうなる!?どうなった!?2017年のノーベル賞」です。

まるわかりノーベル賞2017

石田:未来館では、特に自然科学にまつわる医学・生理学賞、物理学賞、化学賞を取り上げていて、2~3個のテーマを予想しています。来館者の皆さんにも「この研究が受賞しそう」と思った研究者にシールで投票してもらっています。

まるわかりノーベル賞2017

日本科学未来館 GeoーCosmos

石田:あちらにあるのは、未来館のシンボル展示です。近くまで行ってみましょう。

福:はい。

まるわかりノーベル賞2017

石田:「GeoーCosmos(ジオ・コスモス)」といいます。未来館の館長、毛利衛は宇宙飛行士で、日本人で初めてスペースシャトルで宇宙に行きました。

福:聞いたことある。

石田:宇宙飛行士として宇宙からの地球の姿を見たときに、国境がないことや、さまざまな人や生物がつながって地球ができているんだなっていうことに気付きました。
ぜひ皆さんにも同じ視点で地球を見てもらって、地球やその間にあるさまざまなつながりに気付いたり、考えたりしてほしいと、展示されています。

90日間の実際の雲の映像が映し出されていて、ちょっと前に生まれた台風とかも見えます。この「ジオ・コスモス」に使われている一つ一つの有機ELパネルも、さっき福君に読んでもらったノーベル化学賞を受賞した白川先生が電気を通すプラスチックを発明したことで、開発されました。スマホをいまみたいに軽くできるようになったのも、電気を通すプラスチックのおかげです。

地球温暖化を体験

まるわかりノーベル賞2017

石田:これは「ジオ・スコープ」という展示で、地球にまつわるデータが約40種類入っています。このあとの授業にも関係してくるから、ぜひ地球温暖化にかかわるデータを見てみましょう。

福:はい。

石田:触ってみてください。地球温暖化は、文字のとおりだよね。地球が暖かくなっていくことなので、一番わかりやすいこれを見てみましょうか。「未来予測シミュレーション 気温」。ここを押して、始めてみてください。ここに年代が出ています。スタートが1900年ぐらい。1900年ぐらいの気温はこうで…。

福:どんどん赤くなっていく。

まるわかりノーベル賞2017

石田:赤くなるとプラス3度ぐらい、プラス6度だと黄色、白になると、どんどんあったかくなりますね。どんどん未来になってきました。2050、2060、2080、2100。2100年だったら、まだ福君は生きてるんじゃない?そのとき、日本はどうなっている?

福:もう真っ赤っか。赤でもなくなってしまっている。

石田:6度ぐらい、いまからあったかくなっていますね。

福:40度ぐらいだ。

石田:ね。夏40度ぐらい。耐えられる?

福:きつい(笑)。

石田:そう。あったかくなると、どんな困ることがあるかっていうと、例えばこれは「未来予測シミュレーション 海表面温度」。北極の氷。あったかくなるとどうなりますか?

福:とけていっちゃう。

石田:そう。とけていっちゃいますね。

福:いまどんどん沈んでいっちゃってる。

石田:そうそう。沈んでいってます。ホッキョクグマもここにいるし。

福:アザラシとか。

石田:そう。ホッキョクグマとかアザラシの住みかが、2100年にはほぼ…。

福:ほとんどない。

石田:こんなに氷が薄かったら、もう割れちゃいますね。

福:割れちゃうし、溺れちゃう。

まるわかりノーベル賞2017

石田:これは、ナガサキアゲハの生息地域。ちょうちょうですが、1950年ぐらい、まだここだったのに、どんどんあったかくなっていって、いまはもうここまで来ています。べつにちょうちょうが生きているところが増えるのはいいことかもしれないけれど。

福:悪くないけど。

石田:悪くないけど、ほかの虫も同じだよね。例えば夏になったら、何が出てくる?

福:蚊とか。

石田:そう。蚊が住める範囲が広くなると…。

福:あったかくてムシムシした水が多い場所に…。

石田:そうそう。蚊がなんかの病気を媒介してるとか聞いたことある?

福:え~と、デング熱とか

石田:よく知ってるね。そのとおりです。デング熱とか、最近話題になったジカ熱などが、まだ、なぜそこまで日本で流行んないかというと、いまの気温だったら、日本は少し寒いの、蚊にとっては。でも、あったかくなって住めるようになると、ひとごとじゃなくなっちゃうね。

福:冬にも発生するということがありますか。

石田:そう。いまの気温だと冬だと死んじゃうんだけど、そのまま冬でも死ななくなることが起こってしまうかもしれません。この地球温暖化、こんなたくさん影響があるんだなということがこのあとの授業で出てくるので、ぜひ覚えておいてください。

福:はい。

医療 遺伝子の不思議

石田:次に行きましょう。「ともに進める医療」という医療について考える展示を見てもらいます。いっぱい紹介したいんだけど、きょうは一つだけ紹介します。

福:はい。

まるわかりノーベル賞2017

石田:DNAという言葉を、聞いたことありますか?

福:はい。あります。

石田:どんなイメージがある?

福:まあ、受け継がれていく自分のもととなるもの。

石田:そう。もうよく知ってるね。私たちの体は細胞っていう粒がたくさん集まってできている。福君はね、大体40兆個ぐらいの細胞を持っています。

福:40兆個。

石田:そう。見える?

福:見えない。

石田:見えないね。でも、そんな細胞がたくさん集まって、私たちの体の組織、目だったり、皮膚などができています。
この細胞一つ一つにDNAが含まれているんですが、実はよく耳にする「がん」という病気は、DNAの変異で起こってしまうものなのです。
細胞からのスケールも含めて見ていきましょう。どんどん小さいところを見ていきたいと思います。乳腺、乳管…、あ、がんがあるね。これが、がんの組織。でも、これをもっともっと詳しく見ていくと、がん細胞。がん細胞が増えると、こんなふうに肥大をしてしまいます。

福:どんどんおっきくなっていく。

石田:そう。どんどん大きくなっていっちゃう。これも全部細胞の集まりです。で、この細胞の中に、核っていうものがあります。この核の中に、さっき言ったDNAが、たくさん折り畳まれています。
じゃ、折り畳まれているDNAを、ひもといて見ていくと…、おっ、こんなふうに二重らせん構造になっています。これをもっともっと詳しく見てみると、DNAは4種類の塩基というものの組み合わせでできているんですが、こんなふうに、正常なものと、がんのDNAの違いを見てみてください。

まるわかりノーベル賞2017

福:色が変わっている。

石田:そう。たった一つのここが違うだけで、がんになっちゃうことがあるんですね。

福:じゃ、正常にたくさん組み合わさっていかないと、ちょっとでも違ったら、だいぶ変わっちゃう。

石田:そう。ちょっとでも違ったら、だいぶ変わっちゃうかもしれない。このDNAは32億個のペアがあると言われているんだけど、そんなにあるのにちょっと違うだけで変わっちゃうことがあるかもしれない。じゃ、これが病気とかを治すために思いどおりにこれを切ったり貼ったりできたら、すごくない?

福:すごいですね。でも、簡単な話じゃないですね。

石田:そんなちっちゃいのに遺伝子変えられるの?って思うけど、変えられる技術ができています。さっきのDNAは「物質」のことなんだけど、DNAの持つ遺伝情報のことは″ゲノム″といいます。そのゲノムを変えることができるゲノム編集という技術があって…

福:チョキン、チョキン。

石田:そう。チョキン、チョキン。それもあとで授業で説明しますので、楽しみにしてください。

福:はい。

石田:じゃ、次を案内しますね。

宇宙 ニュートリノ観測

まるわかりノーベル賞2017

石田:岐阜県の神岡鉱山内にあるスーパーカミオカンデの10分の1の模型です。
「ニュートリノ」というものを観測しています。

福:ニュートリノ?

石田:はい。聞いたことないよね。ニュートリノは何かというと、素粒子です。

福:粒子?

石田:そう。たとえば私たちの体は、よくよく見ると、細胞のように粒々が集まってできています。でも、細胞よりずっとずっと小さい、もうこれ以上分けられないほど小さくした粒のことを素粒子って言います。この世界の基本の粒子が素粒子と言えます。その中の1つがニュートリノです。ニュートリノは観測するのが非常に難しいと言われ続けていたんだけど、カミオカンデができたことで観測ができるようになりました。これを設計・監督し宇宙からきたニュートリノを初めて観測したことで、小柴昌俊先生が2002年にノーベル物理学賞を受賞しました。さらに、これを使ってニュートリノに重さがあることを発見した梶田隆章先生も、2015年にノーベル賞を受賞されました。この中入れるので入ってみましょう。

石田:光っていますね。ニュートリノは、スルスル通り抜ける粒子で、幽霊みたいだと例えられています。いまも1秒間に体を100兆個ぐらい通り抜けています。

まるわかりノーベル賞2017

福:通り抜ける?

石田:そう。通り抜けてる。体の中をシュッて。

まるわかりノーベル賞2017

福:体の中から出ていく?

石田:ううん。ニュートリノは宇宙とかからやってきて、通り抜けていく。感じます?

福:いや、感じない(笑)。

石田:感じないよね。

福:宇宙から来てる?

石田:そう。来てる。1兆個のニュートリノが福君の体を通り抜けています。そんなにスルスル通り抜けるから、観測が難しくて。

福:何百億分の1の量みたいな感じですよね。

石田:そうそう。だから、すごい観察するのが難しい。だから、これをつくりました。

本当はこの中に、超純水と呼ばれる、とてもきれいなお水が入っています。これ10分の1の模型なので、本当は10倍の大きさです。ということは、水はかなりたくさんありますね。なんと5万トンもあります。

それだけ大きな装置をつくると、1日に何度か水の分子にニュートリノがぶつかります。すると、ぶつかったところがかすかに光るんですね。その光を壁に並ぶ検出器で捕まえることで、ニュートリノがいたことを観測できる。
なんでニュートリノが観測できたらうれしいんだろう?。
ニュートリノは宇宙でたくさん生まれています。太陽の中で生まれていたり、超新星爆発という星が最後に爆発したとき、または宇宙誕生の瞬間にも生まれていたはずです。
ニュートリノが観測できるようになったら、太陽の中で起こっていることや、超新星爆発の仕組み、星の誕生の秘密など、これまで「目で見る」望遠鏡だけではわからなかった世界を「視る」ことができるようになるんです。

石田:星が生まれたときに生まれたものを。

福:感じ取れる。

石田:そう。感じ取れる。つまりニュートリノが明瞭にわかるようになったことで、私たちは望遠鏡だけじゃない、新しい「目」を獲得することができました。でも、それだけではわからない世界がいっぱいあります。その世界を視る新しい目となる「重力波」というものも最近観測できるようになりました。これもこのあとの授業でやるのでお楽しみに。

福:はい。

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