サントリー 人事担当者に聞く

“やってみなはれ”の未来図は?

2019年03月13日
(聞き手:鈴木マクシミリアン貴大)

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チャレンジ精神がDNAだというサントリー。国内の酒の消費量が減る中、海外展開にも積極的に取り組んでいます。そうした状況の中「やってみなはれ」を創業精神とする人事担当者が選んだマストなニュース3本はこちら…

米中貿易摩擦

2018年3月、アメリカのトランプ政権が鉄鋼製品などに関税を上乗せしたことをきっかけに、以後、互いの輸出品に関税をかける制裁措置の応酬が繰り返された。両国が「貿易戦争」と呼ぶほどまでエスカレート。

学生
鈴木

このコーナーでは複数の企業がピックアップする「常連」のニュースなのですが、やはり重要なのですね。

ニュースなどでも毎週のように取り上げられていますよね。(サントリーは)もちろん日本が一番売り上げという意味では大きいですが、「アメリカ」「アジア・オセアニア」「ヨーロッパ」でそれぞれ13%~15%ぐらいずつの売り上げの構成比があり、ビジネス的には結構グローバルに展開しています。ところで、角ハイボールって飲んだことありますか?

杉田さん

まだないです。

まだないですか…。ジョッキで食中酒としてハイボールを飲むという文化を、ウィスキーの復活も含めてこの5年で日本で根付かせてきましたが、そういった文化を海外でも広めたいという戦略をとっています。具体的には、ジムビームのジョッキスタイルのハイボールをアメリカで根付かせていくというプロジェクトをやっています。

アメリカでは、ビーム社という、ウィスキーやウォッカなどを扱うメーカーを1兆6500億円という非常に大きな金額でM&Aをしました。ここ数年、サントリーはグローバル化を加速しています。そういう状況の中では、世界の情勢というのは経営に大きなインパクトがあります。

具体的にどのような影響があるのですか。

大きな影響がすぐ出ているかというと、そうではないと思うんですけど、アメリカと中国は大きなマーケットですし、かつ、今、仕掛けにいっています。経済情勢が悪化するというのは、先のビジネスに対して非常に大きな影響が出てきますので、しっかりと対応しなければいけないと思っています。

中国についてはどうですか。

中国ではネット通販のサイトに現地で人気の缶チューハイを投入して、短期的にシェアを拡大していくという戦略をとってます。現地では、烏龍茶といった商品や(サントリーの)「三得利」という漢字の当て字は知られていますが、中国で売れている商品をきっかけに、さらに他のお酒やサントリーという企業ブランドも含めて広めていくという戦略です。

そういった意味でも中国の景気が悪化するというのはインパクトがあります。

米中両国の影響は少なからず受けるということなんですね。

でも、景気が悪くなったから手を緩めるわけではなく、アメリカはマーケットも広いですし、中国も人口が多いですし、日本製品に対する信頼も高いです。停滞するから手を緩めるのではなくて、あえて力を入れてやっていく、さらに加速させていく、というのが会社の方針ですね。

消費税率の引き上げ

ことし10月から10%に引き上げられる消費税率。大手広告代理店が実施した意識調査では、増税前に商品を買い置きするなど何らかの対策を検討している人の割合が67%に上っている。

10%に上がることで、かなりマイナスに捉えられている方も多いと思いますので、対策を打たないといけないと考えています。ただ、捉えようによってはチャンスだとも言えます。

増税がチャンスになるのですか?

値段が上がる訳ですので、お客様は「本物志向」になっていくといった価値の変化もあると思っています。ですので当社のプレミアム・モルツには追い風が吹くのかなと思っていまして、本物志向の方々にしっかりとマーケティングを強化していきたいなと思っています。

増税となると、直前の買いだめとかありますよね。

やっぱり、直前に買われるというのはあるんですよね。僕も前回の増税の時は営業にいたのでわかるのですが、増税の1週間前に仕掛けるようでは、ものすごく遅くて、実は今からスーパーマーケットは対策を始めていて、増税に向けてどういう時にどういうものを買ってもらうかとか、営業現場ではしています。

人事部の杉田幸平さん

具体的には、スーパーマーケットとはどのような対策を行っていくのですか?

増税前にドーンと跳ねて、増税後にドーンと落ちます。ただ、長い目で見てみると大きな影響が出ないように、スーパー側と売り上げや月々の出荷の計画を組んで、毎週のように販促を行うなど、細かい対策が非常に重要になってくるのかなと思います。

ダイバーシティーの広がり

多様性を意味するダイバーシティー。女性だけでなく、男性や高齢者、外国人など幅広い人たちが、多様な働き方ができる環境を作っていくべきだという考え方のことで、重要な方針と位置づける企業も多い。

ダイバーシティーと聞くと女性の活躍に寄りがちなんですが、もっと大きな意味で捉えないといけないと考えています。海外にも何百社というグループ会社がありますので、サントリーの経営理念である「やってみなはれ」(※創業者の言葉が元になった精神)などを共通の価値観にしていくというのはとても大きなテーマです。

また、異なる価値観や国籍の方々を我々が理解をする、共感をするというのも大切だと思っています。例えば経営面では、海外の経営陣と日本の経営陣の合同の研修プログラムをやっていて、世界中の課長層、部長層、役員向けなど、全世界から集まってきて、色々な価値観を受け入れてグローバル化を進めていくということもやっています。

あとは、人事でもジョブローテーションが活発で、そこも一つのダイバーシティーかなと。9年間営業やって、いきなり2週間後から人事の採用に異動とかもかなりあります。色々仕事が変わる中で、色々な価値観とかモノにふれて成長していく、これも一つダイバーシティーなのかなと思っています。

まだ話して大丈夫ですか?

はい、お願いします。

採用という面でもダイバーシティーという観点は、かなり大切にしています。よく学生の皆さんに「求める人物像ってどういうものですか?」って聞かれるんですけども、あえて設定していないと答えています。

あえて言うとしたら、この「やってみなはれ」という挑戦の志に共感をできること、環境変化がすごく激しい会社だと思っていますので、環境変化を前向きに楽しめるワクワク感を持ってもらう精神的な強さとか、そういう要素がベースとしてあれば、十分素質はあるなと思っています。そこから先はものすごく色々な人に来てもらったらいいなと思っています。

「実は、このデジタルな世の中で、我々のエントリーシートは20年くらい変わっていないんです」という杉田さん。2枚あるうち、1枚は白紙で、“これまでの人生における挑戦や創造”がテーマだそうです。その意図は・・・。

【2020年卒のエントリーシート】本当に真っ白です!

決まった質問内容だけでは分からないその人の個性が、紙の中でも立体的に浮かんでくるので、僕らは限られた情報ですけれども、人物を想像しながら、一緒に仕事をしたいなと思う方を選考するスタイルをとっています。

これだけ採用活動の効率化と言われている中で、あえて手作りのエントリーシートにこだわってやっていて、自由な発想力を受け入れるという我々の価値観を反映しています。

色々な面での自分を自由に表現してもらいたいと思っているので、エントリーシートは複数の社員が必ず目を通します。1人で絶対決めない、必ずふたりで全数のエントリーシートを見ています。

その表現の仕方で本当にわかるものなのですか?

非常に難しいですよ、書類選考は。でも、その思いがこもってるとか、丁寧に書いてくれるなという気持ちは結構分かったりするんですよね。言葉の選び方の表現1つでもそうですし、字は決して上手じゃなくても丁寧に書いてくれる、気持ちがこもってるなって、すごく分かるんです。

そうなんですね。

結構サントリーってその人間くさい会社というかですね、そういうところがあるので、僕らは最初の書類でもそういうところを見ることを非常に大切にしています。

「人間くさい」の部分はどういった部分なのですか。

人間くさいというのはずっと経営者も言っているんですけど、テクノロジーがどれだけ進んでも最後は人間らしくやりたいよね、それがサントリーに集う人なんですみたいな事をすごく言うんです。だから、AIとかにヒントをもらうけど、やっぱり最後に決定するのは人間だし、仕事をやっていくのが人間だと思っているので、そういうところがすごくサントリーらしいなと思います。

(取材に伺って)
日常生活でサントリーの商品に出会ってきましたが、それらには「やってみなはれ」の精神が吹き込まれているのだと感じました。ニュースは国内・国際、幅広く捉えることが重要で、特に増税はネガティブな面ではなく、いかにプラスに変えていくかを考えているというところに、戦略的な方針が垣間見えました。

人事担当者がこっそり教えるマストなニュースこの3本