2023年01月30日
(聞き手:本間遥、藤原こと子)
ラグジュアリーな空間とおもてなしで、旅行や食事に特別なひとときを提供する高級ホテル。新型コロナウイルスの影響で、業界は大きな打撃を受けましたが、今ピンチをチャンスに変える戦略で業績を回復させつつあります。日本のホテル業界の御三家の1つと言われるホテルニューオータニの人事担当者に聞きました。
学生
本間
実際に伺ってみて、規模がすごく大きくて、お客さんもすごい人数だなと驚いたんですが、敷地面積ってどれくらいあるんですか?
全体でおよそ2万坪で、そのうち約半分が日本庭園です。
ホテルニューオータニ
高杉さん
2万坪というとイメージしづらいと思いますが、東京ドーム2個分ぐらいの土地になりますね。
すごいですね。
1日にどのくらいのお客さんが来られるんですか?
日にもよりますが、新型コロナウイルスの感染拡大前だと大体2万人くらいです。
今、海外からの入国規制が緩和されたり、全国旅行支援があったりして人の流れが活発になってきたなという印象がありますが、実際はいかがですか。
やはり海外からのお客さまをロビーでお見かけする機会も増えて、徐々に戻ってきている様子です。
また以前のように、より多くのお客さまとお会いできる日が必ず来ると思うので、楽しみにしています。
学生
藤原
新型コロナの流行時には、どんな影響を一番大きく受けられましたか。
それまで半分が海外からのお客さまでしたが、入国が規制された時期はほとんどお迎えすることができませんでした。
そこで、新たに国内のお客さまにいかにご利用いただくかということを、スタッフ全員で考えて創意工夫してきました。
どんな対策をされたんですか。
緊急事態宣言でレストランでお酒の提供が制限された時期があったので、ホテルの強みである客室に宿泊していただき、お部屋でお食事とお酒を楽しんでいただこうと考え、「スーパールームサービス」というプランを作りました。
日々状況が変わっていく中で政府の要請に即座に対応して、プランを作り上げました。
客室で、なるほど!
ほかにもありますか?
おうち時間が増えた中で、自分の好きなものを突き詰めていく「推し活」が流行しました。
そこで、皆さまが好きなキャラクターやブランドとホテルを組み合わせて、アニメ「鬼滅の刃」の世界観をお部屋やフロア全体の装飾にいかしたプランを販売したり、レストランとのコラボレーションを行ったりして多くの方に楽しんでいただきました。
お客さんからの反響や、新しい効果も生まれたりしたんですか?
ホテルは敷居が高いとか、特別な時に利用するというイメージがあったかと思うのですが、旅行などが制限されていく中で、日常の楽しみにもご利用いただけるようになりました。
一方で、コロナ禍になってから人と人との出会いが限られたり、そもそも出会いの場がないという声がホテルの会員様を中心に多く寄せられました。
それに対して、これまで5万組以上の結婚式を受け持って来た強みと、今まで培ったきたノウハウを生かして、夫婦の出会いからお手伝いができないかということで、結婚相談所「ホテルニューオータニ マリッジ コンシェルジュ」を始めました。
ホテルならではのサービスなのでしょうか。
出会いからご成婚までをサポートするサービスですが、いずれはその先の結婚式や毎年の記念日、お子様が生まれてからのお食い初めや七五三など、ご家族の節目ごとに生涯にわたってご利用いただけるよう目指しています。
今はマッチングアプリを利用して出会いを探す人もいますが、利用される方はどういった点に魅力を感じていると思いますか。
流行のアプリになかなか抵抗のある方もいらっしゃるので、経験豊富なスタッフを介したサービスなら信頼してご子息やご令嬢を任せられるとおっしゃっていただける方が、ホテルの会員さまを中心に多いですね。
コロナ禍で色々と新しい取り組みをされたんですね。
もともと弊社は1964年の東京オリンピック開催時に、海外からのお客さまに宿泊していただく施設が不足しているという国からの要請を受け、創業者が自宅のあった場所を提供して出来上がった歴史があるんです。
社会のお役に立ちたい、お客さまに喜んでいただきたい、常に新しいものを提供していきたいという思いが、社名の「ニュー」に引き継がれているのです。
例えば1999年に日本初のナイトプールを始めるなど、今までなかなかご利用いただけなかった新しいターゲット層へのホテルでの過ごし方の提案を行い、伝統は守りながらも「ニュー」の部分を常に求めてきました。
伝統のあるホテルで変わるべきところと変えてはいけないところが共存している業界かなと思ったのですが、どういう風に線引きしているのですか。
世の中が変わってくる中で、お客さまに求められる物も日々変わっていきますので、それに合わせて伝統に固執するのではなく、変わっていかなければならないと思います。
逆に信頼という面では、やはり弊社だから安心できる、信頼できるとお越しいただくお客さまもたくさんいらっしゃるので、確固たる信念を持って変えずに守っていきたいと思っています。
2つめは即位の礼ですね。
即位の礼の翌日にあった晩さん会の会場にお選びいただきました。
ニュースで見ました!会場だったんですか?
即位の礼に伴って日本にいらっしゃった約190の国や地域などの国賓やVIPの方々をお迎えしました。
どういう経緯で会場に選ばれたのですか?
創業からこれまでに過去3度の東京サミットや平成の即位の礼の晩さん会の会場にも選んでいただいた経験がありました。
スタッフ全員が約190の国や地域などの国賓やVIPの方々を一度におもてなしできるというサービス面や、セキュリティー面での信頼の蓄積によってお選びいただけたのではないかと思っています。
国家的な儀式の舞台裏、お聞きしたいです。
国賓の方々をお迎えするような外交の場では、プロトコールという国際的なマナーがあります。
国旗を並べる時の順番はこの順番でと世界的なルールが決まっていたり、ホテルにお越しになる時のお車も、どの国が先頭でと順番が決まっています。
そのため、お車からエレベーターまでのご案内の順番など、秒単位で国ごとに細かいスケジュールが決まっていたので、国ごとに「接伴員」と呼ばれる専属のコンシェルジュのような役目をするスタッフがついてご案内をしていました。
かなり事前から準備されていたんでしょうか。
そうですね。
晩さん会でご提供するメニューに関しても本当にたくさんの国の方々がいらっしゃるので、宗教やアレルギー、ビーガンなど食事のスタイルに合わせて調理するなどの対応が必要でした。
190か国もあると本当にさまざま過ぎて大変そうです…
ギリギリまで詳細な情報がわからないということも多かったのですが、これまで数々の国際的行事の会場となってきた経験や、日頃からスタッフが接客のプロとしてお客さまと接してきたことを生かして、一丸となってイレギュラーなことにも臨機応変に対応していくことができたと思います。
国賓の方々を接客するうえで心がけていたことは何ですか。
それぞれのご事情に配慮したうえですが、実際にお客さまをおもてなしするにあたっては、日本のお客さまでも海外のお客さまでも、ご家族連れでも国賓の方でも、基本の「お客さまのために」というところは変わりがないと思っています。
最後は環境についての話題ですね。
ホテル全体で環境に配慮されているそうですが、どういう取り組みを行っているのですか?
2万坪の広大な敷地の中に、1477の客室、37のレストラン、33の宴会場がある巨大なホテルなので、当然毎日たくさんの生ゴミが出ます。
どのぐらいの量が出るんですか?
1日およそ5トンです。
1日で!!想像がつかないです。
ただ、その生ゴミを館内のコンポストプラントを使ってほぼ100%たい肥に変える取り組みを1999年からいち早く行っています。
さらにそのたい肥を契約農家の方に買い取っていただき、野菜やお米を育てるたい肥にする取り組みをしているんです。
ほぼ100%たい肥にされているんですね。
たい肥を使ってできた野菜やお米は弊社で購入し、従業員食堂で提供したり、収穫した果物でカクテルを作ってホテルのバーでお客さまに提供したりしています。
同じように、お水についても、厨房でたくさんのお水を使うのでそのまま排水するのではなく、館内にある「中水造水プラント」という施設を使って、再利用しているんですよ。
中水造水プラント
排水の中の異物の除去や、油・有機物の分解洗浄、それに殺菌などの処理を施して再利用できるよう浄水する施設。
お水は1日どのくらい出るんですか?
1日1000トンです、想像がつかないですよね。
きれいにしたお水は、館内にあるローズガーデンの水まきやお手洗いの水に再利用しているんですよ。
ホテルニューオータニではこの循環の仕組みを、1991年から導入しています。
最後に、どんな人と一緒に働きたいか教えていただきたいです。
ポジティブなマインドがある方という点をお伝えしています。
日々仕事をしていく中で、大変だなと思うことがあったとしても、何か1つでも自分の中で喜びを感じたり、良いことがあった時に頑張ろうと思えるポジティブな方、大歓迎です。
また、サービスだけではない企業経営の面からもホテルのことを考えられる方と、ぜひ一緒に働きたいと考えています。
ありがとうございました。
撮影:梶原龍 編集:秋元宏美
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