2021年12月15日
(聞き手:石川将也 本間遥)
コロナ禍で苦境に立たされた飲食業。その中にあっても柔軟に対策し、店舗数や採用数の増加につなげた企業があります。少子高齢化で市場の縮小が懸念される将来に向けてもビジネスチャンスはあるととらえ、あの手この手を考えていると言います。ドリアが人気のあの企業に聞きました。
新型コロナウィルスが外食産業に打撃を与えたと思うんですけど?
コロナ禍で外食店舗の1割が閉店したというニュースなどがあり、それだけ見ても業界的には非常に厳しいです。
社長さんの発言が話題になりましたね。
「ふざけんな」ですか?
緊急事態宣言が出されていた2021年1月 西村経済再生担当大臣(当時)が「ランチもリスクが低くない」と国民に夜間のみならず日中も不要不急の外出と外食を控えるよう要請したことについて 決算会見の席上で堀埜一成社長が「ランチがどうのこうのと言われましてね。ふざけんなよと」と発言したもの。
あれはメディアの切り取り方もあり、社長もあそこがあんなに使われるなんて驚いたって話していましたが、そのあと大手の企業にも協力金が出るようになりました。
じゃあ大きな影響があったんですね!
もちろん発言だけが要因じゃないと思いますけど(笑)。
新型コロナにはどのように対応したんですか?
まず徹底的に無駄をなくしました。
具体的には営業時間を見直し、深夜の営業をやめました。
何が無駄か見つめ直して、どう排除するのかっていうことをコロナをきっかけに改めて0から見直しました。
営業時間以外には何か?
食材ロスをさらに減らせないか?という取り組みを行っています。
お客様が食事できる環境を守ることと従業員の雇用を守ることはコロナ前から取り組んできました。
その積み重ねがあったからこそコロナ禍でもお店を増やせました。
コロナを受けてサイゼリヤが導入した対策
・手書き注文・・・注文方法を紙に書く方式に切り替え
・税込み価格を50円か100円単位になるよう見直し・・・端数をゼロに統一することで小銭の受け渡しを減らすとともに会計にかかる時間を短縮するねらい
・飛まつの拡散状況を科学的に分析・・・・食事しながら飛まつを抑える方法を検討
2040年問題を挙げていただきましたけどなぜこのニュースを選ばれたんでしょうか?
働き手が社会を支える世代が、2040年になったときにすごく少なくなってしまうことが問題になっています。
どれくらい少なくなるんですか?
2040年に日本の人口が1億1000万人、今より1600万人くらい減って1人の高齢者を1.5人の現役世代で支えることになります。
ですので女性の社会進出がいまより進んでくると思います。
その中で料理とか商品で社会問題に貢献できると思っています。
どういうことですか?
価格もそうですし野菜をたっぷり使った美味しさと栄養バランスをそろえた商品の提供です。
日々の多くの方の食事を「サイゼリヤで食べればいいよね」と思って頂けることで働き手の問題に対してアプローチできるんじゃないかなと考えています。
女性の社会進出はなぜ重要なのでしょうか?
日本のジェンダーギャップ指数ってご存じですか?
低い?
そう、低いんですよ。
世界で120位。G7の中でも断トツ最下位です。
女性がもっと働ける社会になっていかなければならないし、かなりなりつつあると思うんですけど、仕事と家事を全部女性がやるのは大変ですよね。
気軽に食事ができてお財布にもやさしいし子どもから年配の方まで安心して食べられる。
栄養価が高く新鮮な野菜もたっぷりとれる。そうすると生活って豊かになると考えています。
野菜は気にします。
野菜を使った商品にすごく力を入れています。
楽しい食事おいしい食事をしたいっていうことが前提にあって、結果的に野菜をいっぱいとれている、体が健康になれるという姿を描いています。
飲食業界全体としてそうしたことがこれから求められていくんですか?
そういうところじゃないとお客様から支持されなくなると思っています。
今まではおいしければいい、安ければいいっていうのが、おいしくて安くて健康で…と。
どんどん追加されてますね。
それを実現するからこそ世の中に支持されていくことになると思います。
世界で起きる異常気象というところを挙げて頂いたんですけどなぜこれを選ばれたんでしょうか?
直近で言うとイタリアで気温48度とか北米で熱波がありました。
そこには原材料を作ってくれる生産者さんがいるところなのでトピックに挙げさせていただきました。
最近はカナダですごい熱波があってそれによって小麦が大打撃を受けたんですね。
小麦って値上がりしていますよね?
私どもはイタリアンレストランなのでパスタは核中の核の商品なので調達に関しては取引先も困っています。
大事なのはリスクを分散することです。
例えば北半球と南半球に分けて生産地を持っておくなどです。
いまオーストラリアの自社工場は東京ドーム16個分の大きさです。
大きい!
食材を余すことなく使うことも重要です。
例えばブロッコリーはみなさん食べるのは上の花蕾っていうところで芯は食べないですよね。
でも実際農家さんは芯が美味しいって言っています。
実家が農家なので分かります。おっしゃるとおりです。
芯の部分を活用できるとお客さんにとってもより美味しいものが提供できるし、フードロスに対しての取り組みにもなります。
知恵を絞っていけば世の中には本当は美味しいのに商品としてはまだ出回ってない物をもっと商品化できると思っています。
食品調達は工夫されているんですか?
サイゼリヤでは製造直販業という仕組みをつくっています。
商品開発から食材の生産、加工、物流、販売。
これを自分たちの責任でリスクを負って一貫して行うやり方なんです。
この仕組みによって商品の品質と価格をコントロールでき、お客様はもちろん従業員や生産者さんも含めてwin-win-winになるのがメリットです。
3つ目のイグ・ノーベル賞日本人15年連続受賞っていうニュースを挙げていただいたんですけどこれはなぜですか?
イグ・ノーベル賞ってノーベル賞のパロディー的な立ち位置で人をくすっと笑わせるような面白い研究がされています。
でも実は研究者は真剣にやっていってそれが世の中に役立っていたりする事がたくさんあります。
イグ・ノーベル賞では日本人が何でこんな強いんだろうなっていうところが…
なんででしょうね(笑)。
受賞例は例えば、人はシロップの中と水の中ではどちらの方が早く泳げるかとか、バナナが床に落ちていて踏んだときの皮と床の摩擦がどれくらいかとか(笑)。
へー(笑)通じるモノがあるんでしょうか?
面白い研究からから派生して世の中に役立つように展開しているものも多くあると思っています。
ここからどのようなことを企業として学ばれているんですか?
私たちも誰もやらないそんなのやったってと思われるようなことも結構真剣にやっています。
例えばミラノ風ドリアは1000回くらい改良していて、おいしさを追求し続けています。
おいしさって1人ずつ感じ方が違うから“おいしさ”を数値化するために脳波を使った取り組みもしているんです。
100人いれば100人の共通認識として数値化することはすごく大事なことだと私たちは思っています。
確かにたまに気を遣って人にちょっと合わせちゃうこともあったりとか(笑)。
そうですよね(笑)。
脳波で可視化して自分たちだけが「おいしい」「よし」ってならないようにしたいんです。
そうした科学的な分野が業界として求められていくんですか?
必要だと思っています。
理由は先ほどの属人的な部分に繋がるんですけど、数値化して伝えていくことで飲食業の発展につなげられると思っています。
欲しい人物像はいかがですか?
言われたことだけをやるのではなく、主体的に動いて自ら物事を問題視して変えていく人材が望ましいと思っています。
創業から50年経っているから安定しているだけではなくこれからもっと自分たちで変えていけるのが楽しそうと思える人。
変化することに前向きな方だったらサイゼリヤの仕事はすごく楽しいと思います。
最後に就活生へのメッセージをお願いします。
世の中の仕事はお客様をはじめとして誰かに喜んでもらえるから成り立っていると思うんです。
そうすると世の中の仕事で役に立たない仕事は絶対ないはずなんです。
ただ何によって喜んでいただきたい役に立ちたいっていうのは人の価値観だと思うので、自身の価値観に合った仕事を選ぶっていうことが大事だと思います。
そもそも就活って何のためにやるのっていうのをぜひ考えてみてください。
入社したあとがスタートなので本当に自分が何を大事にしているのかなとか譲れないものを大事にして就職活動やっていただきたいなと思います。
自分の心に正直に聞いてみようと思います。
本日はありがとうございました。
撮影:堤啓太 編集:鈴木有
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