2021年11月17日
(聞き手:梶原龍 堤啓太 本間遥)
変化が早く追いついていくのさえ大変な今、企業が頼りにするのがコンサルティング会社です。いったいどんな仕事をしているのでしょうか。学生に人気のアクセンチュアに聞きました。
コンサルってどんなことをするんですか?
大手の企業や官公庁などの公的機関がお客様です。
新しいビジネスを始めようとしてもどのような方向に進めばいいのかわからない、リソースも時間も足りない。
学生さんでいえばすでに大学の勉強とアルバイトで忙しいのに就活で人生の方向性も決めなければならない、という感じでしょうか。
そこにコンサルティング会社が入って、変革をお手伝いするのが主な仕事です。
多種多様な業種の人を採用されているようですが?
戦略を決めるところから新しいビジネスやサービスを作り出すところまで、end to endでご支援しています。
それにはさまざまなバックグラウンドを持った専門家が協業することが不可欠です。
コンサルタントもいればエンジニアもいて、デザイナーとかクリエーティブとかいろんな人が一緒になってお客様の変革を実現しています。
企業にアドバイスするのは難しそうですけど、志せば誰でもなれるものなんですか?
お客様と関係を構築していくなかで企業の課題を見つけることができるようになります。
はじめの戦略立案からそれを実現していく過程も全部お客様と一緒に仕事をしていくので、改善点がどんどん見つかっていくんですよ。
若手から大企業を相手にできるのかなって不安になりそうなんですけど・・・
OJTという形で1年目からしっかりプロジェクトに入って働いていただきます。
大企業であっても社内で解決できないような課題についてご相談いただくケースが多いので、すごく難易度が高い仕事にチャレンジしないといけない。
逆に、若いうちから経験を積むことができるので、早く成長できるんじゃないかと思います。
コンサル業界は需要が高まり採用人数が多くなっていると聞きます。社内で解決できない課題を抱える企業が多くなっているんですか?
新しいテクノロジーの導入などでビジネスの変化のスピードが早まっているほか、昨今だと新型コロナの影響もあって企業が変革を急に求められるんですよ。
長年同じ手法でやってきた企業は変革のやり方が分からなかったり、新しいアイデアに反対する方がいたり、そういうことって多々あるんですよね。
どうしても自分の会社だけですべてを実現させることは難しいよね、専門家がいないよねってことでご相談をいただくことが増えています。
我々は商品を持っている会社ではありません。
一人一人が専門家としてお客様のパートナーとなることで成立するビジネスモデルなので、優秀な人材を確保して育てていくことがすごく重要になってきています。
DXというニュースを選ばれた理由を伺ってもよろしいですか?
今よく学生のみなさんもちらほらニュースとかで聞かれているかなと思います。
多くの方がDXって自動化とかAI=人工知能を使うとか、これまでアナログだった部分をデジタルに変えていくっていうイメージを持ってらっしゃると思うんですね。
ですが、デジタルテクノロジーを使ってかつてなかった製品とかサービスを生み出していくことが仕事であって、単純に自動化するだけがDXじゃないと考えています。
具体的にDXってどういうものなんでしょうか
DXっていうのは0から1を生み出すものなんですよ。
今までなかった価値をデジタルによって出していくことがDXの本質だと我々は考えています。
それからDXはあくまで手段です。
在庫の回転率を2倍にしたいといった目的がある場合、既存のプロセスを踏襲していては実現がおぼつかないこともあります。
それを、デジタルを前提にゼロからプロセスを考え直して新しい仕組みを導入することで、達成に近づけるわけです。
相談にきた企業にどう関わっていくのですか?
最初に戦略コンサルタントと呼ばれる人たちが根本的な戦略、どうしていくのかという指針を考えます。
次にそれを実現するためにどんな方法やテクノロジーを使ったら適切なのかというのをテクノロジーのコンサルタントの人たちが検討します。
それをもとに、例えば何かアプリを作りましょうとなるとそのためのエンジニアがいます。
なるほど。
そのアプリをよりたくさんの人に使ってもらうためデザインを考える人たち、キャッチコピーを考えるクリエーティビティーの人たち、アプリを広めるためにマーケティングの戦略を考える人たちなどさまざまな専門家がいます。
全体のプロセスに色んな職種の人が関わって目的を達成していくという流れで仕事をしています。
補足すると同じ部署の人だけで働くのではなく、お客様の課題に合わせてプロジェクトチームが結成されます。
調査からはじめ、全体の戦略を立てていき、ロードマップを敷く。
すると色々やらないといけないことが枝分かれになって、お客様の課題に合った専門家がいろいろな部署から集められてプロジェクトが成立するという仕組みです。
続いて日本の低い生産性をニュースにあげてもらいましたがこれはなぜですか?
みなさんOECDってご存じですか?各国のいろいろなデータを集めて公表しています。
OECDが2019年に出したデータで先進国と呼ばれている国が37か国あるんですけど、日本の労働生産性は21位です。
なおかつ日本の1時間当たりの労働生産性ってOECDの平均値より低いんです。
年功序列やいわゆる日本型の働き方っていうのが関係しているんですか?
まさに関係しています。
キーワードは標準化、共通化、プラットフォーム化なんです。
皆さん日本の中小企業の割合ってどのくらいかご存じですか?
98%でしたっけ。
80%くらい?
9割くらいかなと思います。
これはね99.7%です。ほぼすべてが中小企業なんですよ。
従業員数で算出してみると68.8%。
日本で働いている人の7割弱が中小企業で働いているんですよ。
なので日本の競争力を上げていくためには、中小企業の生産性を高める視点を私たちが持っておかないといけないんです。
なるほど。
例えば中小企業の従業員の方がたくみの技で凄い製品を作ったとします。
このプロセス自体は付加価値がすごく高いものです。
でもそれを梱包して箱詰めして宅配業者の方にお願いして発送する作業はあまり付加価値を生んでないんです。
標準化、共通化というのは競争力を生まない発送や給与勘定を企業を横断して一つのプラットフォームにしたらどうです?っていうものです。
そういうことなんですね。
これと同じようなことが地方自治体でも言えるんですよ。
地方自治体って日本の世の中に1700あるんですが、バラバラのシステムを使っています。
へー。
共通のプラットフォームを使うシステムにすれば自治体の人たちは自分でメンテナンスをする必要がなくなる。
節約した時間や予算で、もっと市民一人一人に寄り添ったサービスが提供されたらどうですか?
例えば皆さんが5年後結婚して子供が生まれたとした場合、自分の情報を自治体に出せば使える助成制度がぽんと分かったらすごく嬉しいですよね。
確かに。
それってデジタルで民間企業だったら当たり前に実現出来ているんですよ。
大手のネットショッピングサイトとかは自分の興味あるものをぽんぽんとリコメンドしてくれるじゃないですか。
まだまだ行政ではできていない、なぜならそれ以外のところで労力と予算が割かれてしまっているからなんです。
新しい変革を浸透させるのは難しいと思うんですけど、どう広めるんでしょうか?
今素晴らしい視点をついていただいたんですけど、これ一朝一夕にいかないんですね。
いま福島県会津若松市でスマートシティーの取り組みが進んでいます。
震災前はデジタルにそこまで積極的ではなかった地域です。
震災を契機に日本のために何かしたいと思い会津若松市に拠点を構えて復興支援を始めたんですよ。
コンサルが自治体に入っていったんですね。
徐々に成果が出始めて、先ほどのプラットフォーム化って実はここから生まれたんです。
これが使えるという話になって奈良県の橿原市とか宮崎県の都農町とかが相乗りしてくれて自治体の運営も効率化を図っているんです。
全国で使えるプラットフォームをきちんとつくり、それを展開して認めてもらって標準化、共通化っていう波を作り上げていく流れですね。
なるほど。モデル都市を作ってそれを発信していく感じですね。
3つ目にパーパス経営を選ばれた理由を教えてください。
難しいテーマが続いちゃって…笑 パーパス経営って聞いたことありますか?
なかったです。
今回初めて聞きました。
意味は「存在意義」や「志」といったものが近いです。
みなさんも就職活動するなかで会社がどういう理念や、夢とか希望をもって事業をしているかを見ますよね?
はい。
パーパス経営って企業の志に改めて立ち返って大事にしていこうということだと思ってます。
最近だとSDGsって言葉は知っていますか?
はい。
例えば環境だと未来の私たちの子供とか孫の世代まで生きやすい世の中にしていきたいということを実現するために企業の事業ってあるべきだと。
今の生活や経済をよりよくすることはもちろん、将来を見据えて社会に貢献することを目的としてしっかり考えていきましょうというのがこのパーパス経営です。
目の前の目標を達成することだけがベストではないということですね
おっしゃる通りですね。
例えば、DXとかAIの導入で売上も上がるしニーズも高くて便利なんだけど、仮にCO2をめちゃくちゃ排出するとしたらやるべきじゃないんですよね。
多角的視点で、その先にいる消費者や社会のためになるのかというところを見て、サービスを提供をしていかなくてはいけないと思います。
広い視点で考える姿勢は就活生の時から必要だと思われますか?
持っておいた方がいいと思います。学生と社会人の時とで違うことは、社会への責任だと思っているので。
就職活動も内定を取るところがゴールになってしまいがちなんですけどそうじゃなくて、将来的に何に関わるかという第一歩を踏めるタイミングになると思います。
基本的なことではあるのですが、自己分析をして自分が内在的に何を求めているのか、どこに共感できるのかを理解したうえで取り組んだ方がいいと思います。
最後に、就活生に向けてメッセージをいただければと思います。
新卒の時の就活ってやっぱり結構特別だと思うんですよね。
1つアドバイスをすると、こうあるべきみたいなものよりも、皆さんの心に正直になっていただくのがすごく大事かなと思っています。
正直に?
人間だから誰しも好きなもの嫌いなものとか、得意なこととか苦手なことも当然あるんですよ。
自分のいいところも悪いところも理解したうえで、本音で自分のファーストキャリアとして何を選ぶのかっていう観点で考えるのが大事だなと思ってます。
ありがとうございました。
撮影:石川将也 編集:鈴木有
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