2020年03月06日
(聞き手:伊藤七海 井山大我)
農業機械で国内最大手のクボタ。日本では農業に携わる人の高齢化が進むなか、製品を通して課題を解決したいといいます。就活生が知っておくべきマストなニュースを聞きました。
最初に、どんなお仕事をされているのか、事業内容を教えてください。
「食料・水・環境の分野で世界に貢献してます」と言っていまして。
水道用の管とか、浄水場の機械設備とか、トラクターとか、建設機械とか。
こういう分野でお客さんの課題に対しての製品・サービスを提供しています。
スマート農業を選んでいただきましたが、理由を教えてください。
そもそも農業って、なじみはありますか?
おじいちゃんやおばあちゃんが趣味でやってるくらいしか、自分の身の回りではないですね。
ちょっと縁遠いです。
そうかなと思います。私も同様でした、この会社に入るまで。
そうなんですね。
スマート農業を取り上げたのは、主力事業が農業分野、食に関わる会社だからです。現在、日本の農業って多くの課題を抱えていますが、それは私たちの課題でもあるんです。
課題というのは?
今、日本はどんどん人口が減っています。
農業分野も同じで、現在は65歳以上の就農者、農業をしている人が全体の70%を占めている状況になっています。
日本の農業の一番の課題は、高齢化なんです。
年齢を考えると、この人たちはあと10年ほどで農業を卒業してしまいます。
そうなると残りの30%の人たちが、面積を大きくして農業をしていかないと、どんどん農業は衰退していってしまいます。
そうなんですか。
だから、日本の農業をどうにかしなきゃいけない。
はい。
じゃあ、スマート農業って何なのかっていうところなんですが。
簡単に言うとロボット技術とかICTを活用して、超省力化そして高品質な生産を実現する新しい農業です。
昔ながらの農業のイメージが強くて、あんまり想像つかないんですけど。
ICTを活用するというところでいくと、「データの活用による農業の見える化」。
どういうことですか?
今まで農業は経験や勘に頼ってる部分が多くありました。
この田んぼでこのぐらい肥料をまけば、きっと育つだろうとか。そういったデータを全部見える化していこうと。
へー!
スマート農業では、データをクラウドシステムにためていこうとしています。たとえば、お米を収穫する機械をコンバインっていうんですね。
収穫しながら、タンパク値とか水分量が数値で見えたりします。
あとは収量、どれくらいお米がとれたかというのがモニターで分かるようになってます。
収穫しながらですか?
収穫しながらです。
例えば収量が少なくて、来年はもうちょっと多くしたい場合。もっと肥料を増やした方がいいというのが分かるんです。
省力化できるし成分とかもわかるから、それを活用することで高品質にもつながるっていうことですか?
そう、データが見えることで高品質な農業が可能になる。
あと、今は運転とか刈り取る作業を機械に指令しているのは人です。
それをすべて自動でやってしまおうと。農業機械の自動運転で行うことで、超省力化も可能になる。
すごいですね。
そもそもなのですが、農業の魅力とは何ですか。
やっぱり古き良き日本の姿だと私は思っています。
水田がばーっと広がって、季節によって草の色も変わりますし、その景色をずっと守り続けていきたいという想いが非常に強い。
たぶん会社としてもそうで、そのために農家が高齢化して困ってるのであれば助けたいんです。
やっぱり農業って、昔からきついっていうイメージもあると思うんですが。いかにそういうイメージを変えていくかっていうのも重要なことかと思います。
より魅力的な農業というのはどうやったらできるのか。取り組むべき課題です。
阪神・淡路大震災とクボタって、つながりがあまりわからなかったんですけど、なぜ選ばれたんですか。
大阪に本社のある関西の会社なのですが。もともと、鋳物から始まりました。
鋳物・・・。
鉄を溶かして型にはめて、はかりを作るっていうところから始まったんですけど。
会社は明治の創業で、当時は水を介した伝染病、コレラというものがあって。そこに対して水道用の管を整備しなくてはいけなくなったんです。
けど、国産で作ってる会社が1つもなくて、当時の創業者がなんとか作ろうということでやった。
鋳物を使った水道管、そこから始まっているんです。
水道管からなんですね。
阪神・淡路大震災の時にも、断水とかいろいろありました。
私たち、阪神・淡路大震災より後に生まれたので、テレビとかで被害の映像は見てるんですけど、水道管に影響はあったんですか。
日本は地震大国なんで、阪神・淡路大震災の以前から地震に強い管をどんどん磨き上げてきていました。
「耐震管」っていうんですけど、それはひとつも被害にあわなかったんです。
管をつないでもしなって、地盤の動きに対して柔軟に対応できるようになっていて。
当然、抜けないようにロックするような形なので、地震があっても水道管自体がだめになるってことがないようになってます。
海外に行くと一番困るのは水が飲めないことなんですけど、日本で水が安全に飲めるのは、こういう水道管があるからなんですね。
そうですね。でも実は管だけじゃないんです。
川から水を汲み上げて浄水場で処理して家庭に配って、下水で処理して最後もう一回流すっていう一連のサイクルがありますけど。
実はクボタって、水の最初から最後まで、製品・技術を持っている会社なんです。
全部やっているんですね。
全部持ってるのは、世界でクボタだけっていわれているくらい。
水インフラの技術を海外に輸出するのも力を入れているんですか。
世界70か国以上に届けています。
アメリカの西海岸のほうでは地震が多いので、耐震管を評価いただいて試験導入していて。
それをもっと広げていこうと取り組んでいるところです。
去年、ラグビーは盛り上がりましたよね。こちらのニュースをなぜ選ばれたのか教えてください。
去年盛り上がったっていうのもあるんですが、実は、「クボタスピアーズ」というトップリーグのチームを持っています。
ちょっと仕事と重なるなという部分があったので、今回これを挙げさせていただきました。
仕事と重なる部分というと。
「ワンチーム」っていう言葉が頻繁に出てると思うのですが、本当にそのとおりで。
ラグビーって体が大きければいいとか、足が速ければいいとかそういうわけではなくて、いろんな選手が必要。
個性を持った選手がお互い信頼し合って1つのチームをつくり上げる。
なるほど。
当社でも、いろんな人と一緒に信頼しあいながらひとつの製品、ユーザーさんに寄り添った製品を作っていく。そこがラグビーと似てるなって思いますね。
製造業だと技術職とかが強いのかなっていうイメージがあるんですけど。
そんなことないんですよ。
実際ものを作る、コンセプトを形にするのは技術職なんですが。
新しい製品をいつ、どうやって作るのか決めるのは、生産管理とか、われわれのような文系の仕事になります。
ちなみに、企業がスポーツチームを持つメリットはどのようなものなのですか?
ひとつは会社対会社の対抗なので、やっぱり所属している会社のチームが勝ってほしいという気持ちになると思います。それによる社員の一体感。
あと、選手は50人いるんですけど、クボタの場合30人は社員なんですよ。
だから午前中働いて午後は練習みたいに、ふだんから身近にいるので、そういう人が活躍するとうれしいんです。
最後に、どんな学生に来てほしいか。求める人材を教えてください。
さっきワンチームと言いましたが、多様性、いろんな考えを取り入れられる人もそうですし。
あと、当社のブランドスローガンは「壁がある。だから行く」で、日本も多くの課題があるように、世界にも多くの課題があります。
チャレンジし続けるとか、誠実に粘り強く取り組むとか、一緒に高い壁を乗り越えようと思ってくださる方に来てほしいですね。
編集:加藤陽平