2019年08月19日
(聞き手:田嶋 あいか 勝島 杏奈)
新たな技術で、めまぐるしく変わる社会。IT企業の富士通は、どんな世界を目指しているの?新しい時代に合ったビジネスのヒントは?求められる人材は?人事担当者に、学生リポーターが聞いてきました。
富士通と言えば、最初にパソコンのイメージが浮かびましたが、実際の事業内容について聞かせていただけますか。
一番のメインビジネスは、「テクノロジーソリューション」というものです。その前に、「ICT」って分かりますか?
聞いたことはありますけど・・・
「インフォメーション・アンド・コミュニケーションテクノロジー」というのがICTです。「ICT」は「IT」とほぼ同じだとイメージしてください。
このICTという技術を使って、ほかの企業や国のビジネスなどをサポートする、それが富士通のメインのビジネスになっています。
IT(Information Technology)=情報技術
ICT(Information and Communication Technology)=情報通信技術
ITとほぼ同じ意味合いで使われているが、情報技術だけではなく、人と人、人と物を結ぶコミュニケーションを加えた産業やサービスの総称として使われている。
例えば、銀行のATMって、コンビニとかで簡単に使えますよね。ATMというボックスの裏側には、膨大なシステムがあって、それぞれの銀行のシステムにつながっているんですね。
コンビニという身近なインフラを使って、金融サービスの利便性を高めるという、ICTソリューションの実例みたいなかたちです。そういうイメージをもってもらえれば。
分かりやすいです。
マストなニュースに「スポーツ×ICT」を選んだ理由を教えてください。
僕はずっとサッカーをやってきたんですけど、この前のワールドカップから、VAR=ビデオ・アシスタント・レフェリーっていう取り組みが始まりました。
審判だけの判断では難しい場合に、テクノロジーの力を使いましょう、というものです。
フィールド全体を画像処理して、ボールがゴールラインを割ったのかどうかを判断してるんです。ボールの中に、チップが入っているんだけどね。
そうなんですね。
学生の皆さんには、日々過ごしている、もしくは興味関心を持っているところに、いろんな形でテクノロジーを使えることを知って欲しいです。
富士通の技術では、どんなのがあるんですか?
よく聞いてくれました(笑)
富士通では、体操競技の採点を支援するシステムを開発しています。
体操競技は採点が難しいんですが、選手の身体やその周辺に、200万個以上のセンサーを当てて、そのフォームを検知します。
それをAIで解析する技術で、正確な採点のほか、選手自身が正しいフォームで練習することも支援することができます。
スポーツとICTが掛け合わさるって意外です。
今後、ICTが入らない世界はなくなってくると思いますし、今でもほとんどの業界に入っていると思います。
学生のみなさんには4年間、「社会ってこういうことが起こっているんだ」「こういう視点も学ばないといけないんだ」という意識をもって、いろんなことを学んでほしいと思います。
がんばります!
次のニュースには、「働き方改革」。こちらを選んだ理由を教えてください。
働き方改革って普段からよく目や耳にする事が多いと思うし、取り組んでいない会社はないんじゃないかというくらいホットな話題だと思います。
富士通は「働き方改革」とネーミングをされる前から、働きやすい環境を整える活動をずっと続けてきたんですね。
いつごろからですか?
思い出せないくらい。私は入社して15年目ですけど、すでにそういう活動自体はやっていましたね。
働き方改革の話題では、労働時間の削減やテレワークなど、環境整備の話がフォーカスされやすいと思うんですね。
テレワーク・・・情報通信技術(ICT)を活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方をすること。週の1~2回、自宅やカフェでのテレワークを推奨するなど、企業によって様々な形がある。
富士通では、その環境整備はほぼ完了しています。でも、大事なのはその先の話です。
それぞれの社員が自分の仕事にやりがいを見つけられるか、仕事を好きになれるかどうか、を今後は高めていかなきゃいけないと思っています。
例えば人事では、時間外労働の管理でいろんな情報を整理したり、分析する仕事があるんですね。
そういうデータを処理する仕事は、人が手と頭を動かしてやる仕事かっていうと、そうでもないんです。
コンピューターができることはコンピューターに任せると。
そう。データの処理よりも、その分析された情報を使って何をするかとか、その次の話を考える、それが仕事の質を変えるってことになりますね。
人間は人間にしかできないことをやるということですか?
人がメインでやる仕事って何だろうか?という事に注力していく時間の使い方をすることで、仕事の質が変わってきていますね。
最後のニュース、「Society5.0」を選んでいただいたのですが、あまり聞いたことのない言葉で・・・。
聞いたことないですか?
すみません。初めて聞きました。
素直でいいですねー(笑)
具体的に言うと、どういうことなのでしょうか。
5.0っていうくらいなので、1から4までもあるんですね。
Society5.0・・・インターネットやAIを活用した未来の社会の姿として日本政府が提唱している。狩猟社会、農耕社会、工業社会、そして情報社会の先にあるsociety5.0はインターネットやAIがすべての人とモノにつながることで、サービスが多様化し、経済発展と社会的課題の解決を両立させることができる社会。
人間社会って、最初は狩猟をやっていて、農耕を始めて、産業革命が来てっていろんな変化があるなかで、次は「超スマート社会」になっていくと言われています。
超スマート?
超スマートなんです。今は「情報社会」と言われていて、みなさんもパソコンやスマホとか、いろんなものを使っていますよね。
それだけじゃなくて、新しいサービスやテクノロジーの発展で、“皆さんの生活が変わっていきますよ”というのがSociety5.0という社会です。
どのように変わっていくんですか?
今までは人がトラックを運転して宅配していたことが、ドローンという新しいテクノロジーで届けられる仕組みが今後できていく。
そう言われると、技術で社会が変わるというのがよくわかります。
今あるものだと、AIスピーカーも、言葉だけで何かを操作できるのって不思議な仕組みですよね。
新たな技術で社会の仕組みそのものから変わっていくと。
そうなんです。日々、何気なく生活している当たり前のことが新しいテクノロジーによってどんどん変わっていっています。
それを当たり前と考えるのではなく、「これってどんな仕組みなんだ」とか「次は、こんなサービスあったらおもしろいよね」とか考えてもらえれば、ニュースの見方が変わってくるんじゃないかと思います。
Society5.0が実現すれば、より住みやすい社会になっていきそうですね。
皆さんが社会に出たときに、自分の狭い視野だけで何かをやるんじゃなくて、今後、「ほかはどういう風に動いているのか」「何か応用することってできないかな」とかって考えていく必要が絶対あるんですよ。
自分の視野を広げていくことが大事だと言うことですね。
皆さんが、Society5.0という新しい時代で活躍することを考えると、大学生の今だからこそ視野を広げていろんなことを勉強したり取り組んだりして欲しいなって思います。
そのように物事を広く俯瞰する力を身に付けるには、どのようなことをすればいいですか?
いろんなことに興味を持つ事だと思います。
自分たちの学生生活をいかに充実させるかっていうのもあるし、勉学もそうだし、いろんな体験をする事が必要だと思うんですね。
私たちは、よく「コンフォートゾーンを抜けろ」っていう言葉を使っているんですね。
コンフォートゾーン?
心地いいゾーン、っていう意味なんですけど、みなさんは今やりたいことをやっている勉強している、コンフォートゾーンにいるわけですね。
でもそれを抜け出したところに「ラーニングゾーン」というのがあるんですね。新しい学びを得る場所ですね。
コンフォートゾーン(安心領域)・・・不安を感じることがなく安心して過ごせる環境
ラーニングゾーン(学習領域)・・・新しい出来事に挑戦するなど少し不安を感じるが、克服することで成長や自信にもつながる環境
成長したり学んだり、新しい視点を得るときって、コンフォートゾーンを抜け出して、ラーニングゾーンに入らないといけないと思うんです。
だから、「ちょっと今、自分苦手かも」って思うことを、ぜひ一つでもいいから学んでほしいですね。
今まで避けてきたことにも挑戦した方がいいんですね。
大学生は時間があるからこそ、新しい学びにチャレンジしてもらいたいですね。
富士通には、どんな学生に来て欲しいですか?
好奇心を持って行動できて、その行動をしっかり説明できる人です。
行動が結果に結びつくプロセスを説明できれば、同じ場面に遭遇した時に、「この人はきっと、こう行動できるだろう」と私たちは思えるじゃないですか。どちらかと言えば、実績よりもプロセスの方が大事だと思います。
皆さんの過去の行動を見て、未来の活躍を想像して採用するわけです。だから、自分の過去を振り返ることって大事ですよ。
お話を伺って、「IT」や「ICT」の技術が私たちの生活を支え、欠かせない存在であることを強く実感しました。今の社会に満足せず、ICTを利活用して、新たな可能性をつくり出そうとする姿勢が印象的でした。