2020年09月28日
(聞き手:石川将也 伊藤七海 高橋薫)
新型コロナウイルスの感染拡大で身近になったテレワークやオンライン授業。通信技術は生活に欠かすことのできないものになり、次世代の通信「5G」への関心も高まっています。KDDIの人事担当者に激しい変化の時代に就活生が知っておくべきニュースを聞きました。
まず、通信会社がどういったお仕事をしているのか教えてください。
色々なネットワーク設備を導入して、通信をみなさんに提供する、それが第1です。
さらに通信を核として、色々なサービスを皆さんに提供するということもやっています。
例えば「au PAY」など、金融と融合させたサービスもあります。
なぜ、金融サービスを提供しているのですか?
私たちが提供しているスマートフォンは、生活の中ですごく身近なものだと思うんですね。
また、お金を使う「決済」も頻繁にすることです。
こういったものを掛け合わせて、ワンストップにサービスを提供できるというのは通信会社の強みだと思っています。
他の通信会社とはどういう面で競争しているのですか?
基本的には同質化しているというのは事実ですが、それぞれ先を行く施策を出しています。
当社でいえば、通信とエンタメを組み合わせたようなサービスを先駆けて提供してきた強みがあります。
また、サービスだけではなく、通信自体の品質でも戦っています。
意外と皆さんの見えないところで色々な競争がある業界ですよ。
5Gはどうしてニュースとして選ばれたのですか?
2020年を5G元年と言いますが、これから5Gが広がると世の中のビジネスモデルが大きく変わってくると思います。
5Gとは?
日本では3月下旬から一部のエリアで提供が始まった新しい通信規格。
通信速度は4Gに比べて10倍速いとされ、2時間の映画のダウンロードは4Gでは5分かかるのに対して5Gは最速で3秒で終わるとされる。
例えば、消費者向けではARやVRなどで新しいエンタメの楽しみ方がある。
法人向けでは、遠隔医療であったり、自動運転であったり、今まで実現できなかったことが5Gをかけあわせることでできるようになる。
はい。
そうなったときには、「想像力」と「創造力」が必要になります。
若い皆さんの新しいアイデアや概念を生かしていけるチャンスなんだということをお伝えしたくて選びました。
具体的に5Gを導入することで可能になることってどんなことがありますか?
5Gの特徴は大きく3つあると言われています。
学生にとってはどんなメリットがありますか?
ひとつは学校生活への影響。例えば、社会科見学がVRで家にいながらできたりとか。
歴史を覚えるのってなかなか難しいけど、歴史のストーリーをVRで見たら絶対忘れないかもしれない。
そういうのってワクワクしませんか?
はい!
2つめは、エンタメ分野です。
4Gは情報の共有であり、5Gは体験の共有と呼ばれています。
例えば、ライブとかイベントが家にいながらでもリアルに参加できるようになります。
学生さんでお金や時間が限られている場合にはメリットになりますよね。
また、会場ではホログラムなどを使った新しい演出もできるようになります。
エンタメの楽しみ方が変わるということですね。
まだ5Gが始まったばかりですが、どんどん通信が高速化していく中で、業界全体はどういうところを目指していくのでしょうか。
通信の世代って10年おきに変わっていっているので、すぐに6Gの話は出てきます。
5Gではバーチャルとリアルの融合が進んでいって、それが6Gになるとさらに進化していくはずです。
なので、今新しくできるサービスをさらに進化させる方向に走ると思っています。
そこで柔軟に、最速で対応していくのがわれわれに求められていることだと思っています。
バーチャル渋谷
渋谷区などと共同で5月から始まった試み。バーチャル空間上に渋谷を再現し、実際に街にいるように歩きまわったり他の参加者と交流したりできる。今後実際の渋谷と連動したライブやイベントも開催される予定。
このニュースを選んだ理由を教えてください。
新型コロナのこともあって、テレワークとか新しい働き方がどんどん出てきて、働くことの前提が変わるというのが世の中の流れとしてあると思います。
例えば、今までは労働時間に対して対価をもらうのが一般的でした。
でも、これからはより成果に対して評価されるように変わっていく。
学生の皆さんにも「働く」ということを改めて考えてもらいたいと思い選びました。
どんな働き方に変化しましたか。
ショップの場合は、一時は時短営業をしましたし、オンラインでできる手続きに誘導もしています。
「ウィズコロナ」の新規事業の創出を活性化する支援もKDDIとしてやっています。
社内でも、緊急宣言下では9割もの社員がテレワークをしました。
オンラインツールを使って会議をするなど、非対面での働き方が一気に広がりましたね。
実際に働いてみていかがですか。
(社員同士の)コミュニケーションの減少などといった課題はあるので
雑談ミーティングのようなものをセッティングするなどの工夫もしています。
私はもっとオンラインをやっていいと個人的に思っています。
不便なこともありましたが、こういうことを後押しして、選択肢を増やしたいです。
学生は「ニューノーマル」の時代に、どんな心構えで臨んでいけばいいのでしょうか。
多分大変なこともたくさんあるんですけど、その分チャンスでもあります。
様々な課題に直面していかされるスキルとか、ポイントを見つけていくことが重要かなと思います。
「自分が変えてやるぞ」くらいの気持ちで進んでもらえたらと思います。
自然災害の増加を選んでいただきましたが、どう対応しているのか教えてください。
まず、災害時でも皆さんに通信を提供するというのが間違いなく使命です。
災害が起こると、基地局の設備が壊れたりして、通信できなくなってしまうことがあります。
2020年7月に発生した豪雨災害では、土砂崩れで電柱が倒壊したり、浸水で設備が壊れたりして携帯電話がつながりにくい地域が発生。車載基地局を設置したほか、通行止めの場所へは自衛隊のヘリコプターで通信機材と社員を運んでもらい、復旧作業にあたった。
それを迅速に復旧させるのはもちろん、周りの基地局でカバーしたりします。
そうなんですね。
避難所にWi-Fiがない場合は、どの通信キャリアでも使えるWi-Fiを手配する支援もしています。
復旧するのにどのくらいの時間がかかるんですか?
場所にもよりますが、なるべく1日でできるように、せめて1週間以内にはと動いています。
実際にそんな短期間でできるんですか。
それを予想してどう復旧させるのか考えるのがわれわれの仕事。
絶対消失させてはいけないエリアには車載基地局を優先して出動させて復旧させるということもしています。
また、「冗長性」を運用で一番大切にしています。
1つ潰れても他でカバーするなど、ちゃんと通信を提供できるように工夫することです。
災害などに備えて、事前の対策も何かやっているんですか?
皆が技術を持っているようにして、「誰かがいないとできない」ということがないようにしています。
設備をしっかり把握することや、日々の点検も重要です。
そういうことを常日頃から確実に実行していくことが1つの備えだと思います。
救助の方と同じくらい災害の最前線に立たれているという印象を受けました。
そうですね、全社員が”ジブンゴト”として考えています。
通信は普及しているからこそ、なくなるとインパクトが大きいので、社会的責任は大きい仕事です。
新しいことも魅力的で素晴らしいです。でも、個人的には仕事の根幹はインフラを提供して守っているということで、この会社にいる一番の意味だと思っています。
編集:川瀬直子