2022年03月02日
来年春に卒業する大学生などの就職活動が1日から本格的にスタートしました。
新型コロナの採用活動への影響を心配する声も聞かれますが、企業の間では、経済活動の正常化などを見据えて採用人数を増やす動きが広がっています。
来年春に卒業する大学生などへの企業による説明会は政府が定めたルールに沿って、1日から始まりました。
横浜市内で開かれた就職情報サイトが主催する合同企業説明会にはおよそ150社が集まり、事前に予約をしていた学生1800人余りが会場を訪れました。
大手牛丼チェーンの運営会社のブースでは、担当者がコロナ禍の厳しい経営環境の中でも、宅配などの新たな事業に乗り出していることを説明し、集まった学生たちが真剣な表情で話を聞いたり担当者に質問したりしていました。
松屋フーズホールディングスの広報担当の青木葉子さんは「外食業界は勤務などの待遇がよくないというイメージを持たれがちだが、それ以上にやりがいを持って働ける環境だということを伝えたい。今後の出店計画もあるので、一緒に働ける仲間を積極的に採用したい」と話していました。
説明会に参加した大学3年の男子学生は「積極的に就職活動に取り組む学生がたくさんいると感じた。自分に合った会社を見つけたい」と話していました。
【採用を再開する企業も】
日本航空は、客室乗務員や地上で勤務する総合職など合わせて270人程度を来年春に採用する計画で、東京・江東区で開かれた合同企業説明会に参加しました。
新型コロナの感染拡大後、パイロットなど一部を除いて採用を見送ってきたため、すべての職種での採用再開は3年ぶりとなります。
日本航空人事部採用グループの國友俊輔さんは「オミクロン株など感染拡大の影響は残っているが、今後の会社の成長のため採用の再開が必要と判断した」と話していました。
航空大手では全日空も3年ぶりに地上で勤務する総合職などの採用を再開していて、感染収束後の航空需要の回復を見据えた動きが採用面でも出ています。
【先を見据え、採用増やす動き】
企業の間では、経済活動の正常化などを見据えて、採用人数を増やす動きが広がっています。
就職情報サイトの「マイナビ」が全国の企業を対象に先月行った調査によりますと、来年春に卒業する大学生の採用人数は、「前年並み」と答えた企業が全体の6割近くとなった一方、「増やす」と答えた企業が文系はおよそ19%、理系はおよそ23%に上り、いずれも前の年を5ポイント余り上回っています。
業種別でも、採用を「増やす」と答えた企業の割合は幅広い業種で増加し、このうち、新型コロナで打撃を受けた外食や交通などの「サービス・インフラ」では、文系でおよそ22%と前の年より6ポイント余り増加しました。
マイナビの高橋誠人編集長は「いわゆる就活サイトへの企業の掲載社数は、新型コロナの感染拡大前の水準に近づいている。これまで採用を控えていたサービス業を中心とする非製造業を含め、企業の新卒採用への意欲は強いと感じている」と述べました。
そのうえで「コロナ後を見据えた積極的な採用活動を行う企業が増えるのではないか」という見方を示しました。
【「説明会や面接、積極的にオンラインで」政府が要請】
新型コロナの感染拡大が依然として続く中、政府は、学生らが安心して就職活動に臨めるよう、経団連などの経済3団体や業界団体に対し、採用活動中の感染対策を徹底するよう要請しました。
若宮共生社会担当大臣は記者会見で「コロナ禍であっても学生が安心して就活活動ができることが重要だ。発熱などのやむをえない理由で説明会、面接、試験に出席できないことで採用選考で不利な扱いを受けることのないようにしてほしい」と述べました。
インターンも対面のように実践的に
コロナ禍をきっかけに定着したオンライン形式の採用活動。大手企業の間では、コロナ禍で対面での活動に制約がある中、オンラインでのインターンシップを通じて、優秀な学生を集めようという動きが活発になっています。
大手ビールメーカーの「サッポロビール」は、来年春に卒業する学生向けのインターンシップを去年12月からオンライン形式で開催し、全国からおよそ40人の学生が参加しました。
学生たちは会社の事業について学ぶだけでなく、みずから市場を分析してビールや発泡酒などの新商品の提案も行って、実際に現場の最前線で商品開発を担う社員から提案の実現可能性や商品化への課題など具体的なアドバイスを受けていました。
新型コロナの感染拡大後、インターンシップはオンラインが中心となりましたが、回数を重ねる中で、対面のように実践的な内容も盛り込めるようになり、学生の志望動機を高め、企業側も学生の人となりを知る機会につながっているとしています。
サッポロビール人事部の傳田法子さんは「学生はインターンシップに参加した企業の中から就職先を絞る傾向にあるので、企業としても強化する必要があると考えている。自分自身で目標を決めて挑戦できる人材を獲得したい」と話していました。
就職情報サイトの「マイナビ」が全国の企業を対象に先月行った調査では、回答した企業の半数以上がインターンシップを実施し、このうちオンラインを取り入れていると回答した割合は、上場企業でおよそ9割、非上場企業でも7割近くに上り、前の年よりいずれも増えていて、企業の間で取り組みが広がっています。
【学生が感じる“メリット”と“不安”】
これから就職活動に臨む学生からは、場所に縛られずに参加できる一方で、企業側とうまくコミュニケーションが取れないという不安の声も聞かれます。
埼玉県の大学に通う3年生の谷勇征さんは、対面での会社訪問の中止が相次ぐ中、オンラインのインターンシップに積極的に参加してきました。
自宅や学校から全国の企業の採用活動に参加できる利便性もあり、就職を希望している映画関係のほか、電機メーカーや金融機関など短期間のものも含めると、およそ30社のインターンシップに加わったということです。
幅広い業種の企業の社員から話を聞くことができて、進路選びに役立ったとする一方で、オンラインだと社員やほかの学生などとのコミュニケーションがうまく取れないなどの難しさも感じたといいます。
谷さんは「面接もオンラインだと自分のよさを伝えられないのではと不安も感じているので、そこは対面がいいです。ただ、コロナというのはみんな条件は一緒なので、やるしかないという気持ちがいちばんです」と話していました。
【“入社後ギャップ”なくせるか】
一方、就職活動をめぐり、早期の離職を減らすため入社したあとに感じるギャップを少なくしようと取り組みを始めた企業があります。
東京・新宿区の採用コンサルティング会社。およそ100人の社員が働いていて毎年、15人前後の新卒を採用しています。
会社の設立から7年後の2015年には新入社員のほぼ半数が1年以内に辞めていました。
改善に取り組んだ結果、入社3年以内の離職率はおよそ20%に下がりましたが、早期の離職をさらに減らすため、ことしから新たな取り組みを始めました。
それは入社したあとに感じるギャップを少なくしようと、仕事のおもしろさや将来性など会社の強みだけでなく、職場の課題も学生にあえて伝えることです。
会社のホームページでは「自分のペースで働けない」「職場の雰囲気が想像と違った」など新入社員が退職した理由を公開しています。
また、1か月の残業は平均28時間で法律で付与された有給休暇のうち、取得できた割合は74%など、働き方に関するデータも紹介しています。
会社説明会では、新入社員が経験する営業では数百件電話をかけてもアポイントも取れずにほとんど断られるなど、その大変さも伝えています。
プレシャスパートナーズの高崎誠司社長は「いい所も悪いことも把握したうえで入社してもらい、20年、30年と長く勤めてもらいたい。新型コロナの影響でオンラインによる採用活動が広がり、企業も学生もお互いをしっかりと知ることが難しくなっている。企業にはより情報を公開することが求められている」と話しています。
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