2021年10月29日
今回は、相手にしっかりと伝わる、報告のコツについてです。若い時は意外に気が付かないというこの作法。身につけると、成長の速度も速そうです。
『内定者への手紙』著者の北野唯我さんに、来年の就職を控える4年生の学生リポーターが聞きました。
(聞き手:白賀エチエンヌ 堤啓太)
学生
白賀
ここにある「空・雨・傘構文」とは一体、どんな意味なんでしょうか。
簡単に説明すると、「事実」と「解釈」を分けて話すということです。
課題解決のためのフレームワークで、コンサルティングファームなどでよく使われています。
北野さん
「積乱雲を見つけた」「雨が降りそうだ」「傘を持ってでかけるべきだ」ということばの中の「事実」は「積乱雲を見つけた」です。
そしてそのことに対する「解釈」が「雨が降りそうだ」、それに対する提案として「傘を持ってでかけるべきだ」と言っています。
つまり、so what(だから○○だ)以下のところは、分けて語った方がいいんです。
特に若い人は、ほとんどの人が(事実と解釈を)分けずに話すんですけど、「事実」と「解釈」のうち「解釈」は結構ブレてしまうので、のちのち問題になりうるんです。
振れ幅が大きいということですか。
そうです。Aという事実が起きた時、その事実に対する知見がまったくない人は「ダメだ」と思ってしまいます。
でも、その事実に対応できる知識や経験がある人が見れば「いや、こういう解釈で考えたらチャンスだ」と捉えることができることがあります。
なるほど!
であれば、若い人が少なくともやるべきことは「事実に関してはこういうが起きました。それを私なりに解釈するとこういうことです」と分けて説明することなんです。
その方がコミュニケーション上で誤解も起きないし、上司もフィードバックしやすいんですよ。
自分と上司の解釈がずれた場合は、どうやって対処すればいいんですか?
それはもう対話しかないですね。コミュニケーションで少しずつ整えていくしかないです。
そもそも上司とか他の人と解釈が違うってこと自体は悪いことではないんですか?
全然悪いことじゃないですよ。むしろ違った方が面白いんじゃないですか、最初は。
たとえ正反対でもですか?
正反対でぶつかると大変だとは思いますけど。
1つのことが起きたときにその解釈は、その人の見ている経験値とか、得てきたものによって全然違うわけですよ。
違うってことは、自分が成長の幅を広げるチャンスがあるってことだと思います。
それはビジネスの面白さでもあるし、人生の面白さでもある。
「違ったらだめ」っていうものじゃなくて、「違ったらチャンスがあるかも」っていうふうに思った方が絶対面白いと思いますよ。
入社したての時からそのマインドセットでやった方がいいですか?
僕はその方がいいと思います。解釈ってぶつかるじゃないですか。
例えば恋愛でも、僕が思う感覚と相手が思う感覚って全然違ったりすると思うんですよ。
それってぶつかるから怖いと思うんですけど、自分の解釈を持たずに、全てが相手の解釈や世の中の解釈になっちゃうと、もう単一の世界でしかないじゃないですか。
単一の世界……。
同質性の極みなんです。それってどういうことかというと、機械になりなさいってことなんです。
全員が同じ解釈をして、全員が同じものになるって要はロボットになりなさいということなんで。
そこは傷ついたとしても僕は諦めない方が良いと思います。
学生
堤
では、次のポイントです。
こちらの意味するところを聞かせてください。
経営の意思決定者と、それを実行する人とでは脳の使い方が全然違うんですね。
自分の人生を自分で決めていくためには、実行も重要なんですが、自分で意思決定することも重要なんです。
それを「1日」とか「1週間」の単位で分けてやるのがおすすめですよということです。
そうすることで、仕事上やらなければいけないこととか、大変なことに対処しつつも、自分の人生を決めていくための意思決定をしていくことができるんです。
具体的に何が必要で、どう取り組んでいけばいいですか?
夜は経営者の時間として、翌日何をやるべきか、何をできたらベストなのかを書き出します。
朝から平日の日中にかけては、それをひたすらこなしていく実行者になるというふうにやるのがおすすめです。
具体的に何をやるべきかを、前日の夜に書き出すということですか。
はい。
書き出すことの利点って何ですか?
「やるべきこと」と「やらなくていいこと」が明確になるということです。
「これはどっちなんだろう」ということもあると思うのですが、とりあえず書いてみることが大事だということですか。
あした、何をやればいいか、何をやらなくていいか分からないという状態は“経営者”というものが、まだ堤さんの中で育ってない状態です。
最初はやりながら、それを育てていくという感覚を持った方がいいと思いますね。
そもそも、北野さんにとって経営者とは具体的にどういうマインドを持つ人なんでしょうか?
2つあると思います。1つは自分の人生を自分で決められる立場、能力、リソースがあること。
もう1つは、物事をシステムとか原理原則として捉えられるっていうことが経営者だなと思います。
自分で物事を決められるかどうか、原理原則として捉えることができるかどうか……
それと、価値を提供するシステムを作って価値を提供する側に回れるかどうかだと思いますね。
なるほど。
例えば僕は、去年、コロナ禍でワンキャリアのYouTubeライブを立ち上げたんです。
へぇ。
多くの人って新型コロナの感染が拡大した時「学生さんかわいそうだな」とか、「売り上げが下がる、どうしよう」と考えると思うんです。
経営者の人は「どうやって、みんながウィンウィンになるシステムを作ろうか」って考える人。
何かを始めるということは、リソースとかお金にかかわる意思決定をすることです。
その意思決定をできるかどうかが、やっぱり経営者と経営者じゃない人との違いなのかなと僕は思いますけどね。
それって、年齢とか、役職とか関係なくマインドとしての経営者ということですよね。
そうですね。
ここでいう経営者は、自分をいかにマネジメントしていくかということなんですね。
そのとおりです。
では、実際に“経営者”になってみて、翌日のTo Doリストを作りました。ところが、その通りにはできなかった、上手くいかなかったという場合は何を見直せばいいんですか?
まず、人生は長い目で見た方がいいと思うので、できなかったことがあったからといって、落ち込まなくていいと思います。
「あした宿題を全部やる」と言って、やり切れる人ってあんまりいないですよ(笑)
「じゃあ、どうやったらできるようになるのか」とか「どういう下準備をやっていたらできたのかな」「あしたできるかな」っていう視点で建設的に考えるというのも重要だと思います。
そうですか。
できなくても短期的にいうとOKで、長い目で見た時にどうやったらできるようになるかを考えればいいと思いますけどね。
やりたいことって多分、書き出そうと思えば大小合わせていくらでも書き出せるじゃないですか。
できなかった時に、何かを減らすのかと考えたら、切り方もそうですし、そもそも切っちゃっていいのかという疑問がわくと思うんです。
切るということは、ある意味自分のハードルを下げるということなのかなと思ったりもするんですけど…。
いい質問ですね。それって経営者としていうと、重要度が決まっていないということなんですよ。
やりたいことを書き出そうと思えばいくらでも出せるかもしれないんですけど、その中での重要度は本来決まっているはず。
その優先順位付けをすることが重要なんです。
順位づけの基準は何かありますか?
1つは、例えばそれに何分かかるのか。何時間かかるのかで決めたらいいんじゃないでしょうか。
時間がかかるものほど優先順位が高いということですか?
僕は、実は時間が短いものの方が早めにやった方がいいと思っているんです。
5時間かかるものに関しては、平日だと無理じゃないですか。そうしたら、週末に回そうというふうに意思決定ができます。
経営者は仕事前日の夜、何をやりたいかというだけではなく、優先順位まで決めた上で翌日の実行者につなげるっていうような感覚ですか。
そうですね。
このポイントにおいて最後にうかがいたいのが、先ほど経営者の条件として北野さんが挙げられた価値を提供していくことにつなげるために意識しておくべき点って何かありますか?
シンプルに人の話を聞くということじゃないですか。
みんなが何に困っていて、何があったら楽しいのか、そういうのを聞くことがないと独りよがりになると思うんですよ。
政治家もそうだし経営者もそうで、人の話を聞くということをやらなければ、やっぱりズレます。
人の話を聞くことで、自分も変わるということですか?
少しレベルの高い話になってしまいますが、事業作りとかサービス作りっていうのは結局誰かが困っている、何かに困っていることがないと生まれないんです。
話を聞くことで、誰かのために事業やサービスを生み出す、その種を見つける可能性があるという意味合いですね。
次回は、コミュニケーションが円滑に進む秘訣を聞きます。近日公開予定。
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