就活ニュース

大学に行けない新入生 助けたのは・・・

2021年04月28日

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4月、新入学の季節。

しかし、新型コロナの拡大で、学生生活は一変しました。
特に大きな影響を受けたのが新入生でした。

「どうしたらいいか、分からない・・・」
新入生たちは、取り残されました。

「同じ4月を繰り返さない」
動きだしたのは在学生たちでした。

 

【不安な4月】

去年、九州大学に晴れて入学した渡部紀子さん。
地元を離れ、初めての1人暮らしに胸を躍らせていました。

しかし4月、彼女がいたのは大学がある福岡ではなく、広島の実家でした。

新型コロナで授業の開始が延期。
福岡県内に緊急事態宣言が出され、福岡行きを見合わせました。

入学式がなくなり 自宅で撮った記念写真

同級生や先輩、教授に会うことなく、不安を抱えながら自宅で学生生活をスタートすることになりました。

 

【最初の壁】

“リモート入学”することになった渡部さん。

最初の壁は、パソコンのセットアップでした。

高校生までは自分専用のパソコンを持っておらず、インターネットに触れるのはもっぱらスマホから。
そんな中で大学から届いた新入生用のパソコン。

大学から送られたパソコン(シールは渡部さんが貼りました)

中には設定の手順を説明する紙が同封されていました。

例年なら対面でパソコンの設定から教える、新入生向けのガイダンスが開かれていましたが、去年は自力でなんとかするしかありませんでした。

 

渡部紀子さん
「当時、パソコンのことが全然分からず、たまたま同じ高校から進学する知り合いがいたので情報交換して、なんとか授業に間に合わせました」

 

【さらに、高い壁】

さらに苦戦したのが、履修登録。

九州大学が管理するウェブサイトから登録するのですが、授業をスムーズに受けるために実は2つのサイトに別々に登録する必要がありました。

まずは、授業への履修登録を行うサイト。
渡部さんはこちらのサイトは見つけることができ、希望する授業を申し込むことができました。

そして、もうひとつ、授業の出席や課題提出で利用するサイト。
ここにも登録をする必要がありましたが、その存在に気づいていませんでした。

気づいたのは授業開始のわずか3日前、ギリギリでした。

この時頼ったのは、ツイッター。

自分と同じ状況に陥っているアカウントを見つけ、そこについたアドバイスを参考に自分の登録も行いました。

学校には頼らず、自力で見つけました。

渡部紀子さん
「結局、学校の制度にうまく頼ることはできませんでした。私はたまたま気づけたけれど、1年生のうちに取ったほうがいい単位を登録しきれていない同級生もいました」

大学に行くことができたらなら同級生たちの動きを横目に見て、履修登録の雰囲気を探ることができたかもしれません。

実際どんな内容の授業なのか、単位を取るのが「難しい」のか「簡単」なのか、いつもの年なら自然に耳に入ってきたかもしれない先輩たちのうわさ話も、聞くことができませんでした。

それもかなわなかった新入生たちは、不安な春を自力で乗り越えなければいけませんでした。

 

【新たな春に、新たな支援】

そして迎えたことしの春、九州大学は新入生向けに新たな支援を始めました。

「新入生のみなさん、合格おめでとうございます!」

歓迎のコメントから始まる動画。

ことしの新入生向けに用意された特設サイトに掲載されました。

パソコンをインターネットにつなぐ方法から始まり、決められたセキュリティーソフトのダウンロード、メールソフトなどの使い方といった基本をイラストや動画で伝えます。

九州大学が用意した動画 パソコンの設定の基礎から説明

さらに、去年の新入生、渡部さんがつまずいた履修登録や課題提出に使う2つのサイトの登録方法も丁寧に説明。

この動画、作ったのは九州大学の在学生です。

 

【学生みずから】

中心メンバーの1人、九州大学4年の野口岳さん。

大学の産学連携プロジェクトを推進する組織「iQ Lab」で、デザイナーとしても活動しています。

九州大学 野口岳さん

実は去年の新入生のためにも、このiQ Labのメンバーが中心になって大学と一緒に支援を行いました。

この時は、新入生からの問い合わせへの対応がメイン。

緊急事態宣言の中で新入生を迎えるという初めての事態で、教職員たちのメール対応がパンク寸前だったため、1次窓口として学生が対応することにしました。

問い合わせのシステムも作りましたが、協力してくれた約40人の在校生の“人海戦術”で乗り切った側面が大きいといいます。

 

【“失敗”を経験】

しかし、野口さんには新入生を救いきれなかったという反省がありました。

例えば希望者が多い場合は抽せんになるような授業。

それを知っている新入生は申し込めましたが、知らなかった学生は結果的にその授業を受けられませんでした。

自分以外の学生の動きを察知することが難しい、オンライン化の弊害でした。

実際、冒頭で紹介した渡部さんは、学校側の支援に気づけず自力で履修登録までたどりついていました。

問い合わせすらできない新入生もいたのではないのか。

野口さんは支援は必ずしも行き届いていないと感じました。

野口岳さん
「平時ならそれも『自己責任』と言えるかもしれませんが、学校に来ることもできない中では支援する側の“失敗”ではないかと感じました。実際、『自分が何に悩んでいるのかも分からない』という人たちがいました。“受け身”の支援になってしまったという反省があります」

 

【“学生目線”の支援】

「去年と同じ4月を繰り返さない」

その反省から、学生にヒアリングを重ねました。

気づいたのは、そもそも学校からの情報提供が「学生目線」ではなかったのではないかということです。

そこで生まれたことしの動画。

パソコンの立ち上げ方、一つ一つのソフトの使い方、とにかく初歩の初歩から、「誰も置いていかない」をコンセプトに手取り足取り説明することを心がけて作りました。

再生回数は4月半ばの時点で2万回以上。

新入生は2600人余りなので、同じ人が繰り返し見ていると見られます。

さらに学生目線で生まれたのが、専用のLINEアカウントです。

動画から友だち登録を促していて、アカウントとのやりとりでは質問に対して機械が自動で回答します。

電話やメールよりも、チャット形式のほうがなれている学生たち。
気軽にメッセージでやりとりできるのが好評で、2000人ほどが友だち登録しました。

大学によると、新入生の履修登録の完了率は例年どおりで、「誰も置いていかれて」なさそうです。

 

【学校側の助けにも】

新入生たちを救おうとした結果、大学側を助けるという別の成果も生まれました。

例年は入学シーズンには担当の職員2人に加えて、ほかの教員や派遣社員などの応援を呼んで、延べ10人程度で対応にあたっていました。

そんな中で今回、LINEを使い機械が自動で回答する仕組みをつくったことで学校側の負担も減少。
応援は呼ばず、もともとの担当2人だけで対応することができました。

学校側の窓口を担った、九州大学大学院 システム情報科学研究院の島田敬士教授も手応えを感じています。

島田敬士 教授
「自動化したことで職員の負担を減らせたことはもちろん、早朝や夜中など学校が閉まっている時間でも学生たちを助けられるようになったのは大きな成果です。新型コロナをきっかけに、学生たちはパートナーとも言えるような、同じ方向を見て一緒に仕事をする相手になりました」

支援した野口さんにとって、ことしはどんな4月になったのか。

野口岳さん
「新型コロナがきっかけで、そもそも大学からの情報提供が学生目線になっているのか、振り返る機会になりました。ことしの支援には手応えを感じています。同じ4月は繰り返させなかったと思います」

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