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最近よく聞く「自己肯定感」って何ですか?

2021年05月21日

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「自己PRに書けることが一つも思いつかない」、「自己分析をすると過去の嫌な思い出ばかり思い出す」

自己肯定感が低いと感じていていると、就活に真面目に取り組むほど傷ついてしまうということが起こりがちです。でもそもそも自己肯定感っていったい何なんでしょうか? なぜ、就活をつらく感じてしまうのでしょう?

小児精神科医で研究者の青山学院大学・古荘純一先生に聞きました。

(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈)

 

自己肯定感って何?

学生
勝島

「自己肯定感」という言葉を最近、よく聞くようになった気がするんですが、そもそも「自己肯定感」って何なのでしょうか?

旧来の言葉では「自尊心」のニュアンスが最も近いと思います。

古荘先生

もともと、1965年にアメリカの学者が提唱して瞬く間に世界に広がった「Self-esteem」という概念を、日本の研究者の間では「自尊感情」という日本語に訳してきました。

古荘純一先生:小児科医、小児精神科医、医学博士。青山学院大学教育人間科学部教育学科教授。臨床現場で、小児精神科医として神経発達に問題があったり不適応状態の子供の診療を行うかたわら自尊感情を研究。

海外では自分の悪い部分も含めて、全部を自分自身ととらえて自尊感情と称していたのですが、日本人は少しでも否定的な部分があると「もうだめだ」と思い込んでしまう傾向にあるんですよね。

なので、最近では“自分を肯定的に受けとめよう”という意味で「自己肯定感」という言葉の方が社会全体で使われるようになりました。

「悪い部分も含めて、ありのままの自分を受け入れることができる」というのが自己肯定感なんですね。

悪い部分まではいかないかもしれませんが、欠点を含めて自分自身を肯定的に受け入れるという力という定義になります。

学生
伊藤

自己肯定感が低いのは、心の病気なんですか?

いえ、社会生活上問題がなければ、引っ込み思案などと同じで性質の一つだと考えてください。ただ、うつ病など別の問題がその背景にあり治療が必要な場合もあります。

うまく付き合っていく方法を見つけるっていうことですか?

そうですね。「自己肯定感が低いことも含めて自分なんだ」と受け入れられるといいですね。

「自己肯定感が低い」って、「自信がない」と同じ感じで使ってしまうんですけど、違いはなんですか?

自尊感情(自己肯定感)とは、自律、自己受容、信頼などの因子を包括した抽象的な概念で、「自信」というのもその因子の一つです。

ですから、「自信がない」というのも自己肯定感の低さを構成する一つの要素ですが、イコールではないんですよね。

人と比べて○○に関しては自信がなくても、別の部分ではできると思えれば、自尊感情は保たれるということになります。

あわせてごらんください

小さいころに決まってしまう?

自己肯定感はどうやって育まれていくんですか?

いちばん重要なのは、乳幼児期の体験だと思います。

乳幼児期ですか?

自己肯定感は、他者が評価するものではありません。

あくまで自分自身が認識するものなので、4~5歳くらいでないとその概念は出てこないんです。

ただ、その発達の基本となるのは、乳幼児期の愛着といいますか「家族や周囲の人から自分を大事にしてもらったという感覚がその礎になる」と思います。

自分が意識していない(乳幼児期の)体験で、自己肯定感が違ってきてしまうということですか?

そうですね。性格とか遺伝もあるかもしれませんが、基本は乳幼児期に大事にされたことを認識できるかが大きなポイントになると思いますね。

そうなんですね。

大事にされたことを認識するのはなかなか難しくて、大事にされているけれども、そのメッセージが本人にきちんと伝わっているかは別問題です。

といいますと?

大人から与えられた課題ができたことを褒められた場合、うれしいとは思うんです。

だけどそれが本当に、本人が考えて達成したことかっていうと、「そうではなかった」と立ち止まって疑問に思う人もいます。

確かに。

もっと否定的な人は「(与えられてばかりで)自分がやりたいことが何か分からなかった」と考えるんですね。

与えられたことと本人が考えて達成したことって、それぞれ例えばどんなことですか?

例えば、宿題で100点を取ったとか、いいおもちゃを買ってもらって楽しく遊んだっていうのは受け身の体験になるんですね。

(誰かから)与えられたことを自分がやって評価された体験です。

逆にささいなことでも、自分が率先してやったことを認められたとか、そういう積み重ねが、実は自己肯定感に一番つながりやすいんです。

セミ取りをしていて、大きなセミを捕まえたら褒めてもらったとか、道で落し物を拾って親に「どうしようか?」と聞いたら「良く拾ったね。警察に一緒に届けにいこうか」というような。

なるほど。

どんなに成績が優秀な方でも、生活環境が裕福で恵まれている方でも、意外と「自分が率先して行ったことが認められたことがなかったな」ってことがあるんですね。

ある意味で“鈍感力”を持っている人はスッと通過できるんですけれども、ナイーブな方はそこで一度引っかかってしまうとその事実をなかなか受け入れ難いかもしれません。

就職活動っていう試練の場にあたった時に「与えられたもの以外は何もやってきてないから、自分が何をすればいいのかわからない」って一気に噴き出してしまうのではないでしょうか。

あわせてごらんください

就活は究極の困難

私も正直、これまで受験で志望校に落ちたとか、そういう挫折はありました。

でも、就活を目の前にして「自分でやりたいことをしっかり決めて、それに向かって進まなきゃいけない」みたいな壁にはじめてぶち当たった感があって・・・。

受験の進路決定も大きな関門ではありますが、偏差値など比較的少ない情報でなんとか選択できます。

しかし、就職やその後の働くことは、受験とは比較にならないくらい大きな自己決定を行わなければならないですよね。

自己肯定感が低い人にとっては就活ってすごくつらいものだなって、私も感じました。

就活って、能動的な体験なんですよね。

自分を主体的に売り出したり、(自己分析などで)自分を見つめなおしたり。

自己肯定感が低いと困難に対しての防波堤が低くなってしまうので、就活はそういう人にとっては究極の困難と言えるかもしれません。

就活をしていると、人のことは関係ないと思いながらも、他人の活動が気になっちゃって・・・。

自分で、勝手に人と比較して落ち込んで自己肯定感が下がるみたいなことが割とあったんですけど。

他者との関わりで自分と比較して(自分が)低いと思うのは誰にでもあることで、落ち込むことがあってもいいと思うんですね。

ただ、落ち込んでもそれを「立て直す力(レジリエンス)があるのかないのか」が非常に重要だと思います。

研究はまだ始まったばかり

先生はそもそも、どうして自己肯定感を研究されるようになったんですか?

1990年から2000年くらいにかけて、小児科医として大学病院で発達の外来を担当していたんです。

そのとき、一見、何の問題もなさそうなお子さんでも、体の不調や不登校、親子関係のトラブルなどメンタルの問題を訴える方が増えてきたんですね。

それにどう対応したらよいのか学問的にまだ確立されていなかったんですが、手探りでいろんな文献を調べていました。

その中に、自尊感情っていう尺度が(海外に)あって、それが臨床でのサポートにつながりやすいってことがわかってきました。

こういうことを訴えてきたお子さんが、5年後、10年後どうなるのかを追うと、引きこもったり、うつ病になっていたりということがわかったんです。

なので、(自尊感情の尺度で低い値だった子どもに)例えば、学校を休むとか、場合によっては薬を投与するとか、そういった対処をした方がいいのではないかと、なってきました。

実際に悩みを抱えている人は想像以上にたくさんいるということなんですね。

ただね、日本の場合はまだ専門家がほとんどいないんですよ。

学生たち

そうなんですか。

小児精神科医自体がものすごく少ない上に、優先事項として虐待もありますし、社会的ニーズの高い発達障害もある。

今は専門家を1人でも増やし、本当に必要な人たちに還元していきたいと考えているところです。

次回は、自己肯定感低いとダメなの?という疑問を聞いていきます。近日公開予定。

編集 吉岡真衣子 撮影 白賀エチエンヌ

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