2021年05月24日
え・・・、いまだにあるの?と思う“オワハラ問題”。いざ直面してしまった時に、どうすればよいのか、専門家のみなさんに聞きました。個人と企業の関係が刻々と変化している今だからこそ、就活を通して健全なやりとりができることを目指したいですね。
学生リポーター:石川将也(22年卒) 勝島杏奈(21年卒) 司会:石川隆広NHKアナウンサー
就活生からの質問です。
「まだ内定がありません。そんな中、第3希望くらいに思っていた企業から『就活をやめたら内々定出すよ』と言われました。内定をもらうためには就活をやめるべきでしょうか」という質問です。
本来は、「内定と内々定」とは定義が異なるところもあるのですが、今回は「内定」=「内々定」の意味として進めていきます。
石川さん、もし、面接でこう言われたらどう考えますか?
(自分は)内定がまだないなので・・・。そう言われたら「他を受けないのでお願いします」と言って、(内定をもらって)早く安心したいなっていうのが正直な気持ちです。
なるほど。それでは就活のエキスパートの皆さんに伺いましょう。
「○」か「×」かお出し下さい。どうぞ。
全員「×」。『就活をやめたら内々定出すよ』と言われても、就活をやめるべきではないと、いうことですね。
では高橋さん。
学生さんの気持ちを想像すると、こういうことを言われたら非常につらいでしょうね。
石川さんがおっしゃったように、内定がない状態でこれを言われると、承諾せざるをえない。
「企業という立場を利用したハラスメントに近いんじゃないかな」って私は感じました。
就活生の方々が、これちょっとおかしいんじゃないかと感じたり、企業から言われたことで精神的にしんどいなと感じたりしたのであれば、大学のキャリアセンターに相談をしていただくのがよろしいかと思います。
キャリアセンターに相談をしたとしてどんな改善が可能なんでしょうか?
その企業に関する情報をもらうことができると思います。
実際に先輩がそこの企業に就職しているかもしれませんし、就職して、もしかして早期離職で辞めているかもしれない。
こういう発言をする企業は、“ブラック企業”とまでは言いませんけれども、あまり学生のことを考えていない印象があります。
やはり大学から、企業に連絡していただいて、自分ひとりで解決しようとしない方がいいと思いますね。
寺口さんも「×」ですね。
そういう企業には、たぶん、行かないほうがいいですよ。
オワハラをする企業には行かない方がいい?
個人と企業の関係性って、いま、明確に変わり始めているんですよ。
でも、古い価値観のまま「個人は管理対象で、雇用している企業の方が強い」って、まだ、思っている企業がたくさんあります。
そういう企業は、「理想的な個人と企業の関係の価値観」にまだアップデートされていない可能性が非常に高い。
その質問にめちゃくちゃ違和感があるのであれば、同じような質問は入社してからも多分いっぱいされますよ。
皆さんにとってもいいネガティブチェックになるんじゃないかな。
なので言葉を選ばずにいうと「マジで行かないほうがいい!」と思います。
増本さんも「×」ですね。理由を教えて下さい。
職業選択の自由は憲法上の権利ですので、やめる必要性はないということがまず前提ですね。
その上で、違う角度から、なぜそんなことを企業の皆さんが言ってしまうのかということを少しお話ししたいなと思います。
採用には計画数があり、途中で辞退されてしまうと、募集・選考を再度行い、採用難度も高まり、企業にとっても大きな課題となります。
できる限り来てくれる人たちを明確にすることは採用計画上、大事なプロセスなんですね。
ですから、学生の皆さんに本当に来てもらえるかどうかを確認したくなるというのがまずあります。
ただ(学生側の立場として)実際問題としては(就活を)継続することが多々あると思うんですよね。
企業と学生の立場はフラットなので、例えばいつまで待っていただけますか、とか、コミュニケーションを積み重ねていくことが健全かなと思います。
中野さんはどうですか。
通常だったら「何週間後までに意思決定して下さい」という話があると思います。
それがなくて「とにかく、いま答えてくれ、答えてくれないと内定出さない」ってことになると、その段階で断る選択の方がいいかなと思いますね。
ただ、学生さんが答えづらくなるのは、選考の時に、「御社が第1志望です」って言ってるパターンですよね。何か気持ちとしては承諾しそうになるじゃないですか。
そこはやっぱりグッと押さえて、いったんキャリアセンターに相談するとか、考えた方がいいかなと思いますね。
なるほど。
中野さんがおっしゃっていたように「あなたは、第1志望って言ってたよね、(就活)やめられるでしょ?」っていうやりとりは起きえますね。
あり得ますよね。
そこまでに積み上げてきた会話って、ものすごく大事だなと思うんです。
やっぱり変に繕ったり、ウソをついたりしてコミュニケーションを積み上げるのではなく、お互いがフラットな状態で話せることが望ましいなと思います。
キャリアセンターに相談する時に「(面接などで)第1志望と言ってしまったこと自体が悪い」って思っちゃう人がいて、それを隠して相談しようとするパターンがあると思います。
でも“過去の負債”ってどこかで消さないといけないので、その時は正直に言ったらいいと思うんですよ。
もしそういうことがあった場合は企業との対話を、すべて正直に伝えていくことで、解決に向かいやすくなります。
相談する時にも「実はちょっと僕、面接で第1志望と言ってしまって・・・」みたいなことも含めて相談すると。
というのが一番大事だと思います。
石川さん、何かありますか?
仮に内定を頂けたとして、そのあと他社を受けているのがバレたら、内定は取り消されてしまうものなんでしょうか。
他社を受けているかどうかというプロセス自体、たぶん企業には分からないと思います。
就職活動をしていく中で当然、第1志望だった企業より、魅力度が高い企業も出てきますので、そのときにはきちんと説明をして、辞退をするということは可能だと思います。
他社を受けていてもいいと。
なるほど。
まとめますと、いわゆる“オワハラ発言”をする企業というのは学生からも逆の評価を受けるような部分もあるということで、第1志望と言ったからといって、ほかの企業を受けてはいけないわけでもなく、(企業には)それを止める権利もないということですかね。
ありがとうございました。
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