就活ニュース

帝国データバンクに聞いた!(3)倒産の予兆って?

2020年11月13日

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考えたくはないけれど、志望している企業が倒産する心配はないか、気になってしまう。そんな不安ありますよね。今回は、企業が倒産するまでにたどる段階について、帝国データバンクの倒産取材のプロに学生リポーターが聞いてきました。

(聞き手:勝島杏奈 田嶋あいか)

「倒産」って何ですか?

学生
田嶋

下川さんが担当されている倒産取材についておうかがいしたいです。企業の倒産ってどれくらいあるんですか?

数字でいうと、ここ10年で創業または設立された事業者(法人・個人事業主)は約118万7000件あります。(以下:数字は帝国データバンク調べ)

下川さん

これに対し、ここ10年で倒産(法的整理)した事業者は約9万2000件、ピンときますか?

いや・・・ちょっと

1カ月で、だいたい平均で700件から800件くらい。

え、そんなに倒産しているんですか?

年間のデータですと、昨年(2019年)は8354件ですね。リーマン・ショックのあった年(2008年)でだいたい年間1万2000件くらいでした。

倒産取材を多く手掛けていらっしゃる帝国データバンク情報部取材課記者の下川純さん(右端)

学生
勝島

倒産取材では、倒産しそうな会社を取材するんですか?それとも倒産した会社を取材するんですか?

倒産しているのか、していないのかという事実確認のために、取材するケースが多いので、取材前は分かっていないことが大半です。

質問の仕方は工夫しますが、「倒産をしたんじゃないかという噂を聞きました」というふうに聞きに行って、事実だと認める場合もありますし、「倒産してないよ」と言われる場合もあります。そこを確認して、わかったら情報を配信します。

そもそも倒産って、どういう状態なんですか?

そうですね、では、「倒産」とは何かについてお話ししますね。ちょっと、難しい言葉もありますけど、ざっと理解してくれたらいいです。

わかりました。

倒産には、裁判所の管轄下で行う「法的整理」債権者同士が話し合って行う「私的整理」があります。

このうち、「法的整理」にはまず、清算型の「破産」と「特別清算」があります。

「破産」では、社長や役員が代理人弁護士などを通じて「破産します」と裁判所に申し立てると、破産管財人の弁護士が裁判所によって選任され、残った財産を債権者に公平に配当されるようにします。その後会社は完全になくなります。

清算型以外にもありますか?

再建型といわれる手続きがあります。再建型には「民事再生法」「会社更生法」があります。

「民事再生法」は事業を継続しながらの弁済を目指す手続きです。

なるほど。では、同じ再建型の会社更生法と民事再生法の違いは何ですか?

担保権者の取り扱いなど細かい違いはあるのですが、一般的には例えばJAL(日本航空)は2010年に会社更生法の適用を申請し、再建しましたね。

会社更生法は事業規模が大きく社会的になくなったら困るような会社に対して行われることが多い手続きです。

帝国データバンクの倒産の集計では、この4種類の法的整理を対象としています。4種類ありますが、約9割は「破産」です。

世間を騒がせた倒産あれこれ

倒産取材の中で特に印象に残っているものを教えてください。

主観でいいますと、ちょうどお2人は世代かと思うんですけど、着物レンタルの「はれのひ」の倒産とか……。

ちょうど「はれのひ」の件の次の年が成人式だったよね。

「はれのひ」の本店は横浜にあったので、(私の)直接の管轄ではなかったんですけど、破綻前に弊社には支払い遅延の話も寄せられていたんです。

ただ、よくよく見てみると、店舗数を急速に増やしていて、急拡大した会社なんですね。

へえー。

店舗を増やしていたら「あ、景気がいいんだな」、「順調なんじゃないか」と思うかもしれないですけど、店舗を増やす分、設備投資にお金がかかってるんですよ。

なるほど。

増やした店舗にお客さんが入らなければ、採算が取れないじゃないですか。お金を借りて設備投資したのに、借入金を返せなくなる。

振袖のレンタルや販売、写真撮影を業態としていたはれのひが、2018年の成人式当日に突然複数の店舗を閉鎖、予約をしてた多くの新成人が振袖を着ることができないという事態が発生した。その後社長は銀行から融資金をだまし取った詐欺の罪で実刑判決を受けた。会社は破産。負債総額は10億円以上に上った。

「はれのひ」は、粉飾決算していたことが発覚するんですけど、決算書の賃借対照表(BS)上では、売掛金や棚卸資産をかなり水増ししていました。粉飾決算ではよくある手口です。

棚卸資産とは?
企業が抱えている在庫や原材料などのこと

売掛金とは?
後払いで商品を販売した時の未収代金のこと

棚卸資産は、回転期間といって在庫がどのくらいの期間をかけて販売されたかを示す数字が財務分析によって出せるんですが、同業種で黒字が出ている企業の回転期間と比較してみて、異常に長かった場合、架空在庫を上乗せしていることが疑われます。

ちょっと難しくなってきました。

「はれのひ」の場合、同業の貸衣装レンタル業の黒字企業の平均回転期間が0.6カ月であったのに対し、「はれのひ」は約3.52カ月と異常に長かったんです。

素人ではなかなか見抜けないですね。

確かに、就活生がそこまで見るのは少しハードルが高いかもしれませんね(笑)

大きな倒産として印象深かったのは「てるみくらぶ」です。

記憶に残っています。

倒産は毎日発生しているので、日々取材するんですが、世間の人にとっては知らない会社の方が多いんです。

でも「てるみくらぶ」って、消費者に直接被害が及んだケースで、社会的にも注目される倒産だったのでとても意識しましたね。

海外旅行の格安パッケージツアーのオンライン販売を手がけ、航空会社からキックバックをもらう収益構造で業績を伸ばしたが、航空機の小型化、円安や業界の競争激化、広告出稿料がかさんだことなど複数の要因から資金繰りが悪化。
2017年3月27日におよそ151億円の負債を抱え、破産手続き開始決定を受けた。このうち一般旅行者への債務は約100億円に上った。写真はてるみくらぶ本社の扉に貼られた臨時休業と破産手続き開始決定の告示書。

帝国データバンクにも「航空券を交換しようと思ってもできない」とか「会社と連絡が取れない」とか問い合わせが来ていて。

そういう情報を聞いて現地に赴くんですか?

はい。現地に行くと社内に従業員がいましたが、誰も出てこなくって。

何日か張り込みをしてたんですけど、テレビ局などのマスコミ、利用者などいろんな人たちが駆けつけてきて事務所前に人だかりができました。

末期になると、こういうチラシを打って「現金一括キャンペーン」をやっていました。

てるみくらぶが現金一括キャンペーンを展開した当時の新聞広告

現金が必要だったんですね。

そうですね。多くの人が安いからと現金払いで購入し、その結果、旅行に行けなくなった人たちが出てしまいました。

結局てるみくらぶは自己破産して、社長は逮捕され、詐欺と破産法違反の罪で懲役6年の実刑判決が下りました。

倒産の段階的予兆って?

「企業が倒産するかもしれない」という予兆はどんなところに表れるんですか?

まず、「はれのひ」のようなケースでは、事業を急拡大させるなど無理が生じて業績が悪化するということが予兆ですね。

設備投資が過大で利益につながらなかったケースです。そのほか、小売店の「大安売り」のように頻繁にセールを行うようになることも予兆のひとつです。

セールって聞くと余裕があるのかなって思うんですけど、逆なんですね。

そう、むしろ逆で、在庫がだぶついていて売りさばきたいのが理由だというケースも多いですね。

その次に何をするかというと「経営改善」に取り組みます。

リストラ、つまり人員削減や不採算店舗の閉鎖、不採算事業の撤退や縮小などです。

人員削減か・・・

それでも経営改善が進まないと「赤字経営」が続くようになります。そして、資金繰りに余裕がなくなると、金融機関へリスケジュール(返済猶予)を要請します。

ここでとどまることができないと、資金繰りが一層厳しくなります。そうなると取引先へ条件変更…あ、条件変更って聞いたことありますか?

条件変更…ですか?

支払いに関する条件や、仕入れに関する条件を変更してもらうように要請するんです。

会社間の取引では、例えば、月末締めで翌月末払い、支払いサイクル1カ月などと、条件が決まっているんです。

ですが、余裕がなくなってくるとそのサイクルを延長してもらう。つまり、仕入先(支払先)の企業に対して、「1カ月後の支払いを、もう1カ月後に延ばしてもらえないか」とかですね。

そうなんですか。

それから「資産売却」ですね。現金が足りないから、自社ビルを売却して現金を手元に残すといった方法が挙げられます。そういった方法で経営を改善しようと試みます。

いろんなところに表れてくるんですね。

それでも、上手くいかないと赤字が累積して金融機関からの信用も低下して、新たな資金の借り入れが難しくなり、債務者区分が正常先から要注意先などに落ちたりします。

債務者区分とは?

金融機関が融資先を返済能力に応じて区分したもの。「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分けられる。

その後、資金繰りがひっ迫して取引先への支払いや銀行への返済が遅れるといった現象が生じてきます。そうなると給与遅配や高額な報酬をもらっている役員の人たちが退職し始めたり。

なるほど。興味深いです。

そうしたなか、スポンサーが現れて買収されたり、メインバンクが立て直しのための事業計画を見てお金を出しましょうってなると経営改善に戻って、健全な状態に戻ることもありますし、赤字経営との間で行ったり来たりするケースもあります。

スポンサーが決まらなかった場合は?

どうしようもなくなってくると、支払いの遅れがずっと続くので債権者たちが、担保がついていない物件や資産があるとそこを押さえに行くんですね。

みんながそうやって回収しようとすると取り付け騒ぎのようになります。だから裁判所の管理下の状態にするわけです。

就活生だと内定取り消しがどの段階で起こるのかが気になります。

ぎりぎりまで会社は実情を隠すと思うので、どの段階とは一概に言えないんですが、てるみくらぶの場合は2017年3月27日に裁判所から破産手続き開始の決定を受けて、その日に4月入社予定の内定者約50人を集めて内定取り消しの説明をしましたね。

学生たち

怖すぎです!

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