2020年05月08日
「IR」って、いつからどのくらいの企業が取り組んでいるの? 最初の一歩を踏み出す時、どこから始めたらよいの? 今まで挫折した人も、もう安心。学生リポーターが”役立つIRの見方”を1から聞いてきました。
(聞き手:伊藤七海 高橋薫 田嶋あいか)
※新型コロナウイルス感染拡大前に取材しました
IRに関連する法律ってあるんですか?必ず載せなければいけないものとか。
法定開示は金融商品取引法、適時開示は証券取引のルールに基づいて開示しますが、IRだけのルールとか規則はないんです。
一切ないんですか?
ない。だから各企業が自由に、独自性を発揮してやっていいんです。ただ、皆さんが投資するとしても、良いことばかりじゃなくて、リスクとかも聞きたいですよね。
IRには規則がないって言いましたが、ベースには規則に基づいて開示する情報があるので、すごく外部環境が悪化して、業績が悪くなりそうだと思っても開示をやめるのは許されません。
アサヒグループホールディングスが開示しているIR情報(同社ウェブサイトより)
企業によって内容は異なるが、トップのメッセージ、財務情報、経営情報、株主総会関連の情報、機関/個人投資家向けの説明会情報、統合報告書などを載せていることが多い。
IRってどれくらいの企業が出しているんですか。
今、東証上場企業って3700社ぐらいですよね。私たち日本IR協議会が毎年アンケートをすると、だいたいそのうち1000社からIR活動をやっていますという答えが返ってきます。
IR活動をやっている企業とやっていない企業の差はどこから生まれてくるんですか?
おそらく、“決算短信とか、有価証券報告書を出せば十分”と考える企業があるということでしょうね。
だけど、“これからどうする”とか、“課題があったら何をやっていくのか”とかは、定型化された最低限の開示からはなかなか読み取りにくいですよね。
積極的に自分たちのことを理解してもらおう、投資してもらおうという企業がIRをやっていると考えています。
先ほど見せていただいた企業のIRページですが、たくさん項目があって……どこから見たらいいですか?
就活生にオススメなのはね、個人投資家向けのIRがあるんですよ。
へー!
株式市場でお金を投じているのは「機関投資家」って言って、かなり巨額の金額を動かしている人が多いんです。
だけど、皆さんも含めて一般の個人も気軽に株って買えるんですよ。そういう人たち向けのIRをやっている企業が結構あります。
機関投資家向けのページと内容が違うんですか?
やっぱり分かりやすくしています。まず、この会社ってどういう会社?みたいなところから、何が強みかとか、トップの人が何を考えているかとか、そういうのを簡潔にまとめてますね。
就活の採用サイトにもそういう内容は掲載されているんですが、IRとの違いはなんですか?
IRには、こういう打ち手をしたらこういう成果が出たとか、こういう打ち手にはどういうリスクがあるかとかも書いてあります。投資家によるチェックを意識しているので、採用サイトより検証性があると思います。
個人投資家向けIR情報の標準的な説明項目
▽経営トップのメッセージ
▽経営戦略、事業戦略(「中期経営計画」、ビジネスモデル…)
▽業績
▽株主還元
個人投資家向けの説明を読んで、まずは企業の大枠を掴んでみるとよいですよ。
企業のウェブサイトに個人投資家向けのページがない場合は、個人投資家向け説明会資料や、株主向けに発行する「株主通信」も参考になります。
IRが注目されたり、活発になったりしたのはいつ頃からですか?
IRが本格化したのは外国人投資家の力が大きいです。
昔は投資する人も限定的だったし、海外の投資家も日本にあまり投資していなかったんですよ。でも、バブル崩壊で株価が急落したために、1990年代に経営改革や市場のグローバル化が急務になったんです。
バブル崩壊が背景にあったんですね。
企業は工場や設備などの資産を売却し、借入金などの負債を整理しないといけない。”売上”の規模にこだわる経営から、利益重視の姿勢に転換することを迫られました。
バブルで膨らんだ部分が整理されれば、”割安”の日本株は急上昇する可能性がある。その変化に注目する外国人投資家が増えてきたんです。
企業の方も、銀行が不良債権処理と合わせて保有株式を手放したので、新しい株主を開拓する必要があった。
グラフを見ると1998年くらいで銀行と外国人投資家の持ち株率が逆転してますね。
海外の投資家が増えてくると、海外の基準で日本企業を評価しようってことになります。となると、銀行が大株主だった時代の開示では足りないわけですよ。
もっといっぱい知りたい!ということですか?
そう。銀行はどちらかというと貸したお金をちゃんと返してもらえるか、という視点で評価しますよね。
一方、外国人など機関投資家は、投じたお金をどれだけうまくまわしてくれるか、で判断します。
でも2000年代まで日本企業は、将来のリターンにつながる設備投資とか、研究開発とかについて、まだ十分な開示ではなかったんですね。
この辺りから、グローバルに認められるような会計基準とか、開示制度が整えられて、IRの基盤ができてきたんです。
次回はいよいよ、実践編。実際にIR資料を使って何がわかるのか、佐藤さんに解説していただきます。
あわせてごらんください
就活ニュース
就活でIR(インベスター・リレーションズ)を使って差をつけたい!入門編(1)IRの基礎知識
2020年05月01日
就活ニュース
IRを読んで企業に詳しくなろう!実践編(1)統合報告書を読んでみる
2020年05月12日
就活ニュース
IRを読んで企業に詳しくなろう!実践編(2)数字が苦手でもわかる!
2020年05月18日
就活ニュース
IRを読んで企業に詳しくなろう!実践編(3)直前でも間に合うIRの読み方
2020年05月22日
卒業時点の内定率は96.8% 半数以上が“就活前は知らない”企業に就職
2024年03月28日
就活生のギモンを採用担当者に聞く(3)「人事が面接で採用したい人」に共通点はあるの?
2024年03月21日
企業は“選ぶ”から“選ばれる”側に? 変化する就活面接のイマ
2024年03月18日
自己分析や企業研究はいつまで続ければいい? 3月以降は“ゼロ” を作らないで
2024年03月12日
就活生のギモンを採用担当者に聞く(2) 「ガクチカ」ってすごくないとダメなの?
2024年03月08日
感情が動いた瞬間に“個性”が表れる 面接官に自分らしさを伝えるには
2024年02月28日
就活生のギモンを採用担当者に聞く(1)インターンシップの選考に落ちたら本選考は諦めるべき?
2024年02月21日
採用選考は企業に自分を知ってもらう場!自己分析で“広く深く”自分を見つめよう
2024年02月14日
ラジオ特番 2月23日(金・祝)午後10時05分~ みなさんの声を募集しています!
2024年02月02日
OB・OG訪問のギモン(2)どういう準備をしておくといい?その後の就活にどういかす?
2024年01月30日
OB・OG訪問のギモン(1)どうしてやるの?どうやって人を探すの?
2024年01月23日
”転職は当たり前の時代”と言われるけれど…新卒で入社した会社、何年働きたい?
2024年01月17日
石川労働局 地震の影響を受けた学生の支援で特別相談窓口を開設
2024年01月15日
インターン、ES、メールの書き方… 年末年始におさらい【準備編】
2023年12月28日
働くってどういうこと? “世界最高齢プログラマー”若宮正子さんに聞く人生100年時代
2023年12月20日