就活ニュース

採用選考基準オープンにします!

2019年11月28日

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お祈りメールを見ながら、思い返す面接・・・。「うまく話せた、反応も悪くなかった、でも、なぜ??」。就活中のフラストレーションのひとつが、なぜ、落とされたのかわからないこと。そんな中、少数派ですが、採用選考基準をオープンにしようという企業がではじめています。どんなことをしているの?

合格基準点も明かす「選考解説スペシャルセミナー」

採用選考基準をオープンにしている企業のひとつ「セイコーウオッチ」が毎年冬に行う「選考解説スペシャルセミナー」。
学生が知りたい採用の本音が聞けるとあって、毎年延べ200~300人ほどの就活生が参加する。
100ページほどのパワーポイントの資料を使い、1時間半、自社のリアルな採用の内情と、自社に限らず就活する上で学生に知っておいてもらいたい就活のポイントもレクチャーする。

 

パワーポイント約100ページ分にわたる「選考解説スペシャルセミナー」(セイコーウオッチ提供)

 

そこで開示される内容は・・・
・応募者の大学別人数
・各選考ステップで選考を通った人数
・適性検査の合格基準点
・実際応募されたエントリーシート
・面接でどんな質問がされたのか
・内定辞退が何人いたのか
・説明会でどこの大学に足を運んだのか、など

 

セミナーでは前年度の採用を細かく振り返る内容も(セイコーウオッチ提供)

 

採用のプランニングから入社までの詳細を失敗談も含めてさらけ出す。

少しずつ口コミで広がり、セミナーの効果もあって毎年1割ずつエントリーが増えているという。

セイコーウオッチは、グループ創業138年。普通の老舗企業なら、踏みとどまったかもしれない選考過程の透明化をなぜ始めたのか。

選考基準=言ってはいけないの常識を破る

2016年晩夏。入社7年目でセイコーウオッチの総務人事部に所属していた花村翔太郎さんは、秋冬にむけた採用イベントのアイデア出しを迫られていた。

新卒採用はリーマンショック後の落ち込みから復活し、急激に売り手市場化。

さらに先進的な企業は、“インターンシップ制度”を採り入れ始めていた。

だが、自社の営業は地道な仕事だし、時計の商品企画は機密事項が多く、気軽にインターンに参加してもらえる業務がない。

 

みらい就職研究所『就職白書2016』

 

どうしたらいいのか・・・。

ヒントを得るため、就職関係の調査データを読み漁り、目に留まったのが「就職みらい研究所」が毎年公開している「就職白書」。

説明会で学生が“知りたい情報”と、“知ることが出来た情報”の比較のグラフがあり、最も乖離が大きかった項目が「採用選考の基準」だった。

「そりゃそうだろうな。説明会でも会社側は普通は言わない・・」と次の項目に目を落としかけて、ふと疑問が頭をよぎった。「なぜ、選考基準を言ってはいけないんだろう?」。

採用にまつわるデータを表に出すことで、会社の規模感などは外部に分かってしまう。だが、選考の公平性には自信があった。「ESはすべて読んでいましたし、学歴フィルターもなかった。胸を張って学生に説明できるレベルだったんです」。

当時、総務人事課長として採用を取り仕切っていた阿部太さんは、提案を受けて「なるほど」と思った。従業員400名ほどの大手とは言えない企業が、人手も予算もない中、学生の注目を集めるにはインパクトのあることをやらなければだめだ。炎上したらやめればいい。

 

当時は課長として、新しい採用イベント立ち上げに試行錯誤した阿部太人事総務部長

 

阿部さんが当時の部長に伺いを立てると一瞬、「そこまでやっていいのかな?」とつぶやいたが、「逆にそれをやってまずいことって何だろう?」と聞かれた。阿部さんは「ありません」と答えた。

2016年冬、最初は約20人が参加する小さなセミナーとしてスタートした。

採用側も人間なんだと分かってほしい

セミナーでは、リアルさにこだわった。実際に応募のあったエントリーシートを個人情報を伏せた状態に加工してパワーポイントで表示。

アンダーラインを付けて、どこが評価され、どこが評価されないのかを現代文の授業のように解説した。
普通は存在すら秘密にされている早期選考についても包み隠さず語った。

最近は、人事担当者のリアルを語る部分がどんどん充実しているという。
例えば、内定辞退について。
内定を出した際に、「第1志望のA社は継続したい」と言われていた学生から「A社に受かりました」と報告があった場合は、人事担当者も納得して受けとめられるのが、寝耳に水の「B社に受かりました」と報告されると、さすがにしんどい気持ちになるといった、赤裸々な告白もある。

 

「選考解説スペシャルセミナー」を受ける就活生たち(セイコーウオッチ提供)

 

「選考側も迷いながら、ビビりながら、軌道修正しながらやっています。我々も人間なんです、ということを伝えたいんです」と阿部さんは話す。「我々がさらけ出すことで、学生と採用側はイーブンな立場だとわかってもらいたい」。

採用過程の透明化は、企業のためでもある

時代は変わり、景気も、就職のツールも変わっているのに、就活にまつわる意識はなかなか変化しないと思うことはないだろうか。

企業側からすると、最前線にいる人事担当者と経営トップとの間の問題意識に差があり、変革がなかなか進まないこともあるらしい。

だがセイコーウオッチでは「選考解説スペシャルセミナー」について、役員が知ったのは割と最近のことだったという。

「役員面接で受けに来た学生さんが、“選考解説セミナーが面白かったです”と話していて、あとで役員に『セミナーって何かね?』と聞かれました。

説明しましたが、いい人材が来ているからか特に反対されることもなく…。

わが社は世界初の製品にチャレンジすることが多いので、先取の気質がある社風なのかもしれません」と阿部さん。

ないもの尽くしの中で始めた「選考解説スペシャルセミナー」だったが、今年「Forbes JAPAN」が選ぶ「採用がすごい会社TOP10」に選出された。

グループ会社の人事担当が見学に訪れることもあり、3人でひっそりと始めたセミナーが少しずつ広がりを見せている。

仕掛け人の花村さんは「セミナーをやって一番良かったのは、実は学生へのプレゼンス増加ではなく、選考基準について言語化された形で社内で共有できたことです。人事は『なぜ合格か、不合格か』を言語化する習慣を持つべきだと思います。それは自分たちのレベルアップのためでもあるのです」と話した。

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