教えて先輩! キャリアコンサルタント 溝渕愛子さん【後編】

地方で働くって実際どう? “地方創生”ヘッドハンターに聞く

2021年11月26日
(聞き手:小野口愛梨 白賀エチエンヌ 田嶋瑞貴 )

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新型コロナで地元に帰れなくなった時、地方での就職が気になった学生もいるのではないでしょうか。地方を希望する人を専門で支援する、「地方創生」ヘッドハンターに地方の魅力を聞きました。

「地方創生」ヘッドハンター

学生
白賀

さっそくですが、どんなお仕事をされているんですか。

転職を考えている人から相談を受け、四国の企業への転職を支援するのがメインです。

キャリアコンサルタント
溝渕さん

UターンやIターンの方々を対象に支援することが多いですね。

取材はオンラインで行いました。

四国の企業と日本全国の転職を考えている人をつなぐということですか。

そうなんです。マッチングするということですね。

キャリアコンサルタント 溝渕愛子さん

高知県出身で香川県在住。四国への転職を専門に支援する「リージェント」に勤務。大手人材紹介会社が主催するヘッドハンターの表彰で、地方の活性化に貢献したとして「2020年度 ヘッドハンター大賞」の地方創生部門に選ばれる。

ヘッドハンター大賞の地方創生部門を受賞。

四国にいて、地元企業との付き合いが深いから実績が生まれるんですか。

はい、かなり深く経営者や幹部の方々とお話させていただいています。

経営者の方々は自分の夢を実現するために「こんな人がいたらいいな」と、ぼんやり考えています。

でもそれは頭の中にあって、表の求人には出ないことも多いです。

求人票を見るだけでは分からない。

だから私は経営者の方々が頭の中で考えていることを理解して、実現できる人を探し出す役目をしています。

なるほど!

四国のヘッドハンターとして印象に残っている案件ってありますか。

今まで四国に1回も来たことがないという50代の方をお手伝いしたことがありまして。

大手メーカーで最先端の技術を開発していたような方でした。

その培ってきた技術をいかして地方の企業に貢献したいというご相談を受けたんです。

学生
田嶋

すごい。

そんなスペシャリストを、香川県で世界初の技術を一生懸命開発している会社にご紹介しました。

その方が培ってきた経験がぴたりと合って、ものすごくプロジェクトが進んでいるんですよ。

コロナで地方志望が増加?

ちなみに、地方で働きたいって思う人は今、増えているんですか?

去年1年では増えたなと感じています。

22年卒で地元就職を希望する学生は57.8%、5年ぶりに増加

人口が多い場所でコロナの感染者が増えているので、地方でもう少し安心して働きたい、暮らしたいという方もいました。

分かる気がします。

あと、今までは東京に住んでいてもいつでも実家に帰れる状態だったのに、帰れなくなりましたよね。

なので、距離は変わらないんですけれども心理的な距離がすごく遠くなっているんです。

学生
小野口

心理的な距離、ですね。

もう2年間地元に帰ってませんという人もいて。

そういう不安を感じて、今帰っておきたいというご相談を受けることがすごく多かったです。

コロナ以降、地方でできることって増えているんですか。

そうですね、地方でできる事は増えてきています

物理的に会いに行かなければ進まなかった商談が、オンラインでいつでもできるようになっていますよね。

地方から東京に行く時間のロスもなくなりましたし、海外でもどこでも、同じクオリティーで仕事ができるようになっています。

都会とか地方とか場所が関係なくなってきているんですね。

地方でのキャリアを求める動きって今後も続くと思いますか。

今後も続いていくと思います。

たとえば、東京の企業に1時間かけて通勤していたのがリモートで家で働けるようになって。

急に通勤にかけていた時間がもったいないと感じたことがあったと思います。

たしかに。

家だったらすぐ仕事に取りかかれるし、終わったらすぐ家族と過ごせる。

そういうことを経験してしまったんですよね、皆さんが。

そうなった時、ここで住むこと、働くことってどうなんだろうと考えるきっかけになったと思いますね。

地方で働く魅力って?

そういう中で、学生に対して地方で働く魅力を伝えるとしたらどういうところですか?

地方の魅力を一言で言ってしまえば、「可能性がきりがないほどある」ということです。

具体的に聞いてもいいですか?

地方というといろんな事が遅れているとか、高齢化や過疎化が進むとか、ネガティブな要素がすごくあるように思うんですが。

例えば、四国で言うと高齢化が他の首都圏に比べて10年早く進んでいるんです。

10年も!?

まだ東京では求められると思ってもいないことが、地方では10年早く課題になっていることもあり、重要な新しい発想が生まれる可能性があります。

どこよりも早く社会課題に向き合って、解決するっていうベンチャー企業もたくさん出てきているんですよ。

へー!

そういう課題解決ができるモデルが成功したら、それは日本に限らず過疎化という社会問題がある海外でもモデルになる。

東京じゃなくても、世界を目指せるんです。

なるほど。社会問題の解決モデルになるというのは新たな視点ですね。

そうですね、社会課題を解決するために最先端で頑張るっていう企業が多いのは特徴かもしれないですね。

知りませんでした。

地方のほうが個人の影響力が大きい?

あと自分自身、地方に来てからのほうが「貢献している」という感覚が大きいように思いますね。

都会だと会社や仕事の規模感が大きいかもしれないですけど、その大きな規模感の中でぽつんと1人でいる。

逆に地方だったら、小規模の中で自分が与える影響が大きいように感じます。

影響力ですか。

地方だと企業が小規模な分、一人あたりがやらないといけない仕事が多いわけですよ。

大手の企業だと人数もたくさんいるので、あなたはこの部分だけ特化してくださいって分業化されてる場合が多いんですね。

なるほど。

ものづくりで考えると、地方は全部一人で一連の業務をやりますよという人がいっぱいいる。

でも都会だと、部品を「削る」役だけを10年やってきましたという人もいる。

その方が地方に行くとなったら、地方では「削る」だけではなくて丸ごとやってもらわないと困るんですよね。

総合力が大事ということですか?

そうです。

ただし、地方で働くうえで大事なのはスキルではないです。

「どうして地方に行きたいのか」が一番重要なんですよね。

どうしてその場所で働きたいのか、それを実現するために何が必要なのかというのを考えれば実現できると思います。

つながりをもっと強く

ちなみに、地方に特化したキャリアコンサルタントとして、四国をどんなふうにしたいと思っていますか。

企業と企業のつながりをもっと強くしていきたいと思います。

人と人とのつながりが地方ってすごく濃いですし、重要になってきます。

ベンチャーや大手、それぞれが地方への想いを持っている企業たちです。

そういう企業どうしの横のつながり、結束力が高まると、エリアとしてより強くなっていくと思います。

はい。

なので、私たちが支援させていただいて、転職された方々の交流会を開くこともありました。

転職をしてきた人たちが仲良くなって、新しいビジネスが生まれることもあるんです。

そうなんですね。

それから、四国にUターン、Iターンした方々が「戻ってきてよかった」とか、「やりがいをもって働いている」と発信してもらえるようにしたいなと思います。

四国でのつながりをもっとよくしたいっていうことですね。

はい、もっと結束力があると、もっともっと強くなると思います。

ありがとうございました!

編集:谷口碧 撮影:徳山夏音

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