教えて先輩! キャリアコンサルタント 溝渕愛子さん【前編】

「離れて気づいた」都会で働いた私がUターンをすすめるわけ

2021年11月19日
(聞き手:小野口愛梨 白賀エチエンヌ 田嶋瑞貴 )

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地方への転職専門のキャリアコンサルタント溝渕愛子さん。自身もIターンとUターンを経験し、アドバイスしています。ただ、地方で働くことが注目される一方、やっぱり都会がいいという人も。地方出身の学生が率直な疑問をぶつけます。

やっぱり都会が気になっちゃう・・・

学生
小野口

私は地方出身で、いま東京の大学に通って就活中です。

いざ自分が就職しようっていう時に、地方での就職はある意味でちょっとだけ負けのような考え方を否定しきれなくて。

東京で仕事が見つからないから、地方に帰るというような・・・

分かります。

キャリアコンサルタント
溝渕さん

取材はオンラインで行いました

いざ東京に来た時に、「井の中の蛙」だったなと感じてしまったところもあって。

なるほど、そのギャップは必ずあると思っておいたほうがいいです。

私も関西の企業に入社したばかりのころ、周りのスピードの速さや自分のできなさにショックを受けました。

適応するために苦労もしましたが、その経験があるからこそ今があると思います。

キャリアコンサルタント 溝渕愛子さん

四国への転職を専門に支援する「リージェント」に勤務。大手人材紹介会社が主催する「ヘッドハンター大賞」で、地方創生部門に選ばれる。

なので、卒業してすぐに地方に行かなくちゃいけないとは私は思いません

やりたい事があるのなら、それを求めて東京などで経験を積んだうえで地方に行くのもいいのかもしれません。

なるほど。

ついつい都会に目が行ってしまう人は、どうやって視野を広げればいいでしょうか?

例えば、大学生活やアルバイトの経験、自分が高校生の時などを思い返して、いつどんな時に自分が輝いていたか、楽しかったのかを考えるんです。

その中で「自分はこれがしたいんだ」となった時、それは東京じゃなきゃいけないのか、地方でもできるのかを考える

やりたい事があった先に、その場所を考えるっていう流れですか。

そうです。東京はすごいキラキラしていて憧れるというだけじゃなくて、やりたいことをやるためには東京のほうがいいのか。

もしかしたら、地方のほうが自分がやりたいと思っていることができるんじゃないかと考える。

はい。

考えた先にこういう人生歩みたいなと思った場所がやっぱり地方じゃないなら、東京でチャレンジするのもいいと思うんですよね。

ただ、最初から「それは地方にはないだろうな」と決めつけて、選ばないのはもったいないかなとは思いますね。

Uターンに「失敗」

学生
白賀

溝渕さんご自身、今の会社に入られるまで、UターンとIターンを経験されているとお聞きしました。

関西の大学の工学部で研究をしていて、結果が出るまで1人で待ち続けたり、測定データをもとに1人で試行錯誤するという作業に孤独感を感じていて。

就職を意識した時に、1つの結果に向き合うよりも人と接したいと思って営業の仕事がしたいと考えました。

あとは地元の高知に帰る、この2つの条件で就職活動をしました。

どうして高知に帰りたいと思ったんですか。

私一人娘ですし、高知がもともと好きでした。

大学を卒業したら就職するのは地元だろうと疑問も持たず、友達も大学を卒業したら高知に帰ってくるだろうと、そういうふうに思っていたんです。

溝渕さんは高知県出身で京都の大学に入学。卒業後、高知県にUターン就職するも、1年で大阪の企業に転職し10年超勤務。2012年、香川県の企業にIターンで転職し、現在は四国への転職専門のキャリアコンサルタントに。

いざ念願の高知で就職してたのに、その後はどうして転職されたんですか。

正直、仕事の内容にどうもやりがいを感じられなかったんですよね。

私はとにかく「就職しなくちゃ」、「高知に帰らなくちゃ」という考えで、社会人としてどうしていきたいかということを何も考えずに就職をしてしまったんです。

学生
田嶋

1年目の時点で、仕事が合わないと感じたんですね。

そうなんです。さらに、友達が帰ってくると思っていたら、ほとんど帰ってきてなくて。

えーっ。

大学時代の4年間を過ごしたその土地に慣れて、そこで就職をしている友達が多かったんです。

仕事にやりがいを感じられないし、友達も帰ってこないしで、1年で辞めて再び関西に出てしまいました。

せっかく地元に帰ったのに、後悔はしませんでしたか。

やっぱり家族、両親に対しては後悔がありますよね。

ただ、仕事で落ち込んでいた時もたくさんあったので、そういう私を見て「もう1回行ってきたら」と言ってくれました。

Iターンのきっかけは東日本大震災

そのあとは、関西で働かれたんですよね。

リクルートの関西支社で働いて、仕事は忙しかったですが、楽しかったです。

関西の企業の採用のお手伝いをして、関西のエリアを元気にしていくというのがテーマだったんです。

でも、また四国に戻られたんですよね。

3、4年目ぐらいから関西を元気にするということにどこか引け目というか、申し訳なさを感じていました。

自分の地元はどうなんだろうと、どこかでずっと考えていました。

これが四国を元気にする仕事だったら、もっともっと楽しくできる気持ちになるんだろうなと。

やりがいがありながらも、引け目を感じてたっていうことですか。

関西で学んだ事を次のステップにつなげるには、どのタイミングなのかというのは自分の中でいつも考えていました。

なるほど。そのタイミングはいつだったんですか。

いくつかありましたが、1番のきっかけは東日本大震災です。

大阪もかなり揺れたんですが、被災地のニュースを見て、やっぱり家族の近くにいたほうが安心だなと感じたんです。

両親が高知県から香川県に引っ越すことになり、「じゃあ私も今がタイミングかもしれない」と思い、香川県に行こうと決めました。

リクルート退職時の溝渕さん

あの震災がきっかけだったんですね。

そうなんです。香川では今とは別の会社で3年働いたあと今の会社との出合いがありました。

なるほど、でも関西への未練とかはなかったんですか?

今の会社に入ってからはもう、全くないですね。四国を元気にする仕事ができています。

あとはやっぱり地元の四国にいるっていう安心感と、四国に貢献できているっていう満足感とやりがいがあります。

離れて気づいた地元への愛

溝渕さんは四国を元気にしようって、地元への愛が垣間見えて、それって何でなんでしょうか。

一回離れたからですかね、高知を。

大学で離れるのとはまた違って、四国以外で働いて、働く厳しさも感じて。

お金をもらうためには、どうやって社会や会社に貢献しないといけないのかというのがある程度わかってきた時、地元への気持ちが強くなりました。

そうなんですね。

あとは地元でも同級生が起業したり、離れていた友達も30代になると、そろそろ地元に帰ろうかなとざわざわするんですよ。

やっぱり地元を離れると故郷の良さみたいなところに気付くんですね。

そういうことってあるんですね。

昔は不便だなあとか、田んぼいっぱいだなとか、やっぱり田舎は遅れているなとかしかなかったと思うんですね。

特に20代のころは、やっぱり都会のほうが便利だなと感じることもありました。

ですが、帰省するたびに変わらない風景にほっとしたりとか、人の温かさだったりなじみのある言葉だったり、そういうのがいいなと思うんです。

リクルート時代の後輩と香川県でうどんツアー

年齢を重ねることで、考えや気持ちが変わってくるのかもしれないですね。

仕事とは人生そのもの

最後に、溝渕さんが考える「仕事とは」何ですか。

「人生そのもの」です。

仕事って人とのつながりや助け合いですし、自分が生きているということの意義を感じるものだと思います。

それを考えると、プライベートも全部込めた「人生」なんじゃないかなと思うんです。

なるほど、就活生に向けて何かメッセージもあればお願いできますか。

仕事は人生なので、その仕事を通じて自分がどう生きていきたいかをとことん考えてほしいです。

仕事を通じて何を実現したいのかといったことを、自分と向き合って考えておくと後悔のない就職ができると思います。

ありがとうございます。

新型コロナの影響もあり、注目が高まる「地方で働く」こと。後編では、「地方創生」ヘッドハンターの溝渕さんに、地方で働く魅力をさらに詳しく聞きます。

編集:谷口碧 撮影:徳山夏音

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