教えて先輩! ZOZO田端信太郎さん

情報を検証するって絶対大事!

2019年04月10日
(聞き手:小杉山聡 勝島杏奈)

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今回の先輩は、何かと話題の「ZOZO」の田端信太郎さんです。フリーマガジン「R25」の創刊に携わり、LINEでは広告担当として事業の躍進に貢献。2018年からはZOZOの広報部門の責任者としてメディア戦略などを担っています。Twitterのフォロワー約20万人、常に情報を集め発信しているという田端さんに、学生リポーターが取材しました。

歯に衣着せぬTwitterの投稿などを見て、緊張して臨んだ取材でしたが、「何でも聞いて」と真正面から私たちと向き合ってくださいました。くるくる変わる表情と大きな声が印象的でした。

「呼吸するように情報を集める」

田端さんにとって、情報とは・・・?

僕にとって情報とは「頭の栄養素」。酸素とか水みたいに、ないと必ず困るものだし、ビタミンのようにいろいろな種類を取らないといけない。

田端さん

偏食も良くなくて、匿名掲示板みたいなものも案外大事。ああいうものしか読まないのは問題だけど、全部うそだと切り捨てて、NHKとか新聞だけ読めばいいわけでもない。

両方バランスよく読んだうえで、栄養だけ取ってもだめなように、現実に触れるという運動もしなければいけない。

学生
小杉山

世の中にあふれている情報をどういう方法で手に入れてるのか教えてください。

大げさかもしれないけど、呼吸をするようにやっているみたいなところもあります。例えば信号で待っている間だって、スマホで見られるじゃないですか。

暇だから無意識に見ているというほうが近くて、「よし、今から情報収集するぞ」って思ってやっているという意識はほとんどないです。

学生
勝島

情報は基本的にデジタルデバイスで見るんですか?

紙の媒体も見ますけど、新聞はデジタルで。あとNHKのニュースは(テレビでは)見ないけど、NHK NEWS WEBはすっげえ見てます。

(一同)へえ~(意外…)。

興味がなくても、さすがに大人としてこれくらい知っとかないと恥ずかしいっていうゾーンがあるじゃないですか。

ネットメディアの場合、ニュースの提供元がいろいろあって結構ノイズやレベルの差が激しいわけですよ。

見出しを見るだけでなく、どこが出している情報なのか、通信社なのか雑誌社なのか個人なのか、そこまで見にいかなくちゃいけないのが面倒くさいんですよね。

だから、コンパクトに短時間で知りたいんで、ニュース番組を見たら30分から1時間かかるものがNHK NEWS WEBなら3分ぐらいでわかるので、そういう意味で見ています。

情報って「知っていることで人に差をつける、自分はそこで勝負する」という部分と、「最低限これぐらい知らないとばかだろう」っていう一般教養の部分があります

一般教養の部分に関しては広く浅くなるべくでも正しくコンパクトに、というのを意識してますね。ただ、NHKだけ見ていても、差はつかないと思う。

仮説を持って、情報を取りにいけ!

人と差をつけるためには、どうすればいいですか?

自分はどういう職種や業界にいって、どういうビジネスパーソンになりたいか次第だと思うんですよ。そこがなんとなくで、漫然と差をつけるというのは無理だと思う。

社長が新聞を読んで「これからはこれがトレンドらしいぞ」と新規事業部の人を呼びつけるというのは、その業界の玄人からしたら、ちゃんちゃらおかしい。

はっきり言って、遅い。ビジネスパーソンとしての情報と、メディアの情報とで、そこがだいぶ違うんですよね。

あえて大学生でも試せるものを挙げると、映画と飲食店。メディアではこれが面白いとかおいしいとかさんざん言うけれど、実際見たり食べたりしてみたら大したことないじゃん、ってことが結構あるじゃないですか。

あります。

そういう経験は山ほど積んだほうがいいですね。必ず現実からのフィードバックで情報を検証するって態度は絶対大事なんですよ。

現実を常に自分なりに体験する。そういうものがあるほうが、ビジネスをやる上で強いと思うんです。

例えばレジの脇で、客足をカウントする。これで得た情報で、会社が決算で発表するより先に会社の業績の善しあしがわかったとする。それに基づいて人に先駆けて株を売買するのって、ずるかな、どう思います?

ずるいことではないと思います。

みんながやろうと思えばできることをやっているだけだよね。でもそこまでやっている人はいないんですよ。そうしたらそこまでやることはめちゃくちゃ重要なことじゃないですか。出し抜けるんですよね。

そういうふうに仮説を持って情報を取りにいって、悪く言うと出し抜くというか、人に差をつけるというのは基本の態度かなと

「人が知らないことを知るのは気持ちがいい」

田端さんのTwitterを拝見すると、ツイートやリツイートを常にされているじゃないですか。睡眠時間を取っているのかなと。

常に情報の中で生活されていて、情報から逃げたくなったときはないんですか?

結構寝てますよ。それに、発信していると、情報って集まってくる。
僕、情報中毒だから、むしろスマホを取り上げられたら、3日くらいで「ウォー!」て(笑)

(田端さんが)小学生のころから日経新聞を読んでたっていう記事を見たんですが、読もうっていう発想が私にはなかったんですけど・・・

やさしい経済学っていまでもあるかな?それすごい好きなコーナーで、中学生くらいに読んでて。僕、単純に昔から、人が知らないことを知って、どや顔したいっていうのが根っこにあるんですよ。

世の中でただ僕だけだとは言わないけれど、ほとんどの人が知らない真理を知ったみたいなのってすごい気持ちいいんですよね。しかもビジネスってそれで出し抜けて、もうかるわけじゃないですか。

自転車で片道3時間かけて本を買いに行っていたという話も・・・

(出身は石川県)そうそう金沢のね。飢餓感からのパワーってすごいですよね、今、考えるとね。今、自分が自転車に乗って30キロをこいで本屋に行くってもうありえない(笑)

「知っているだけでは何も意味がない」

朝起きたらまず、リビングで充電していたスマホを取る。「スマホを手にトイレに行って、緊急のLINEが来てないかなとか、それこそ社長から急ぎの連絡来てないかなとかを見て、それからTwitterを見ます」

Twitterは検索しなくても、自分のフォローしている人たちを見たら大体そのときの空気が分かります

あと、リツイートした記事の7,8割は読んでないですよ。

この人がこういう見出しの記事を書いたんだったら、きっとこれはこういう感じなんだろうみたいな感じ。

何をリツイートするかは無意識に。勝手に体が動くレベルで反応する感じでやっています。

無意識に選べるようになる前、最初はどうやって情報の取捨選択をしていたんですか?

ブログとかが出てくる時代の前に自分でウェブサイトを作っていたし、情報を知るだけじゃなくて発信してマウントを取りたい方だから、「知っている」という観念的なレベルだったら何も意味がないと思っちゃうんですよね。

知ったことを何らかの形で相手にシグナルしたり、もっとそれを行動に移したりしないと。

炎上にも種類がある

田端さんはTwitterで炎上しているみたいなことを言われますよね。

田端さんの本には「燃えないやつはダメだ。燃えるくらいがちょうどいい」ってことを書かれてるんですけど、なぜ炎上してしまうようなことまで発信するのかなって気になります。

炎上にもいくつかあります。店員さんがばかなことを投稿して問題になるとか、そういうのはダメだと思うんですよ。それは論外だと思うでも、賛否両論五分五分ぐらいの炎上って、それだけたくさんの人にリーチしたっていう証拠なんじゃないですかね。リーチというか情報が届いたというか。

無関心であるよりは、憎まれているぐらいの方がいい。

全然いい。憎まれてるなら、何らかの反応があると思うからね。

「どっち側の人間になりたいか」

今の学生を見て、情報を全然知らないな、無知だなと思うことはありますか?

全然そんなことないよ。自分が大学生の時だったことを考えると、もう、みんなすばらしいね。

でも、優秀かどうかで言えば超優秀だと思うんだけど、若気の至り感とか勇気みたいなものが掛け合わされば、言うことなしだなって思うんだよね。

みなさんはAIなどの技術と競争しなければならない。雇う意味となると、結局、愛嬌とか可愛げとか無鉄砲とかばかをやるとか、そういうことがすごい大事だよなと思うな。

経済的には短期的に非合理なことをやることが、長期的には合理的だったりするみたいな。ばかっていうと言葉が悪いな、「美しいこだわり」みたいな部分だよね

若いうちにこれをやっておけばよかったな、ということはありますか?

自分がやりたいことをやる、自分の人生を生きた方がいいと思いますよ。

僕が「これをやったほうがいい」って言って、それをきっかけとして使ってくれる分にはいいんだけど、(例えば)「田端さんが海外旅行に行けって言ったから」と言って行ったところで、なんだかな、と思う。

やりたいことがないとか将来なりたいものもないっていう若者も多いと思うんですけど。

それは勝手だけど、そういった人たちはやりたいことがある人たちに利用される、振り回されると思いますよ。だからみなさんはどっち側になりたいですか、っていう。

自分だからこそ、という仕事を

今はいわゆる広報の責任者をしてて、「ZOZO」として会社で出すもの、前澤個人が社長としてだす部分のメッセージなり、どういう文脈でどういうことを言ってとか。

コミュニケーションの仕事は星座だと。一個一個は碁石みたいな感じなんだけど、つなげて見てくと、サソリに見えるみたいな、一個一個の単語じゃなくて文脈で作ってくみたいなことをやる、仕事ですよね。

最後に田端さんに聞きました。「あなたにとって、仕事とは何ですか?」

仕事とは「自分が生きた爪痕を残すこと」。かつて「自分は自分がやらなかったら起こらなかったであろう事をやる、それが仕事だ」と言った人がいた。

何か仕事をやろうとする時に、これは俺がやらなくても誰かがやるなって思ったら、じゃあいいやパスって感じで。人生長くなったと言っても、せいぜい100年とかだしね。

田端信太郎という人間が1975年から生きて、いつ死ぬか分からないけど、21世紀の前半生きたぞという爪痕を残すってことが、そういうことなのかなと。置き換え不可能な、何か自分だからこそってことをやって死にたいね。

「君はどうなりたいの?」と自分の考えと向き合わされる、刺激的な取材でした。お忙しいところにお時間をいただき、どうもありがとうございました!

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