教えて先輩!TVプロデューサー 斎藤大輔さん

最後には「よかった」と言える仕事

2020年03月27日
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈 西澤沙奈)

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テレビ番組はどうやって作られるのか。どんな魅力が。「あさイチ」や「みんなで筋肉体操」などのテレビ番組の制作に携わってきた斎藤大輔プロデューサーに聞きました。「最後には必ず“成功”する」と話しますが、なぜでしょう。

まずは提案!

学生
伊藤

早速なんですが、どんな番組を担当されてきたんですか。

いろんな番組やってます(笑)

斎藤さん

最近では、「筋肉体操」をやりました。

学生
勝島

筋肉体操、ネットでも盛り上がってましたが、その反響ってどう感じたんですか。

びっくりしてあたふたしていた感じですけど。予想外でした。

学生
西澤

そうなんですね。

俳優や弁護士、庭師など、意外な出演者が「筋トレ」に励む姿が大きく話題に

武田真治さんがしゃべらないってこととか、村雨さんって外国人なのにすごくおもしろい名前だとか・・・

番組では説明していないんですけど、気づいてくれたらいいなと思って作っていました。

そもそもなんですけど、テレビ番組はどうやって作るんですか。

YouTubeみたいになんでもアップするってわけじゃなくて、テレビ番組の放送って1日24時間しかないから、枠が決まってる。

簡単に言えば枠を奪い合う感じですよね、提案で

それぞれ企画を提案するんですね。

そう、“敵”がいっぱいいるわけ。番組をやりたい!って提案はいっぱいあるから。

簡単に言えばですよ。いがみあってるわけじゃないですからね(笑)

提案は、ディレクターがするのですか。それともプロデューサーの仕事ですか。

どっちもです。

両方ともされるんですか。

記者とかアナウンサーが提案することもあるし。

全員にゼロベースで作るチャンスがあるっていうことですか。

NHKはそういうやり方です。

でも、アナウンサーひとりでは番組はできないじゃないですか。

だからディレクターを「一緒にやらない?」みたいに誘って、そのあとプロデューサーもって。

そうなんですね。

最初のころは、どこにどうやって提案出せば通るかわからないじゃないですか。

例えば、こういうネタがあるんですけどって上司のプロデューサーに相談する。

上司がおもしろくないと思ったら「おもしろくないよ」って言われるけど。

「おもしろいね」ってなると、「自分も名前を連ねて、こういう形で提案してみようか」となって、プロデューサーが頑張ってその提案を通すみたいな流れですね。

情報は追わない

斎藤さんのある日のスケジュールを教えてもらいました。

キャッチコピーが好きってどういう意味ですか。

好きというか・・・情報って大事なんだけど、個人的にはそんなに一生懸命に追わないようにしていて。

今どきスマホあれば、そこそこの情報は入ってくる。

それを追ってもみんな持ってるじゃんって。

たしかに、そうですね。

ちょっとでも差別化したいなと思ってて。

情報をどう切り取っているかとか、扱っているかを気にしています。

なるほど。

だから、よく見てるのは電車の中づり広告の週刊誌の見出しの書き方。

「ああこの話こうやってタイトル書くんだ。見たくなるな」って参考にしています。

どうやって違いをつくるか

今はどんな番組を担当していますか。

就活関連で「面接室へGO」という番組をやっています。

NHKで就活生を応援するキャンペーンをやっていてね。部局横断でやっているんだけど、そのプロジェクトから声がかかったんですよ。

『面接室へGO!シーズン2』NHK総合

就活生がもっとも緊張する場所、「面接室」。その秘密空間の実態をテレビで初公開する就活応援番組。部屋の広さは?椅子の座り心地は? “伝説の実演販売士”レジェンド松下さんをナビゲーターに第2弾を放送。

第1弾&第2弾の動画がこちらのページからご覧いただけます。

就活で若者が興味を持つものを番組で作って下さいっていうお題が与えられて。

実際にどうやって作ったんですか。

まず、できるだけ就活生に話を聞いた。

知り合いの学生だったり、自分の後輩だったり。

実際に動かれてたんですね。

というか、分かんなくて。やっぱり、本当に就活生が知りたいもの何かなっていう時に、自分は就活生じゃないし、世代違うし。

そうですよね。

調べはじめた当初は“面接で受かるテクニック”とか、そういうところかなと思っていたんだけど・・・

ある学生さんに、「NHK見てないです。NHKに就活情報を求めてないです。だっていっぱいほかのサイトがあるし」って言われちゃって・・・。

ああ・・・

ほかにあるものと同じじゃ、わざわざNHKの番組見てくれないよねって。

違う事やらなきゃいけないけど、何やればいいかわかんないって・・・どん底に落ちた(笑)

そうだったんですね。

でも学生に話を聞き続けていると、「世の中の就活情報って正直、信用できないんです」っていう話を多くの学生がするなって思ってね。

ある学生から「100%正しい情報が欲しいです」って言われた。

ほしいです!

じゃあ100%、うそ偽りのない情報って何かなと考えた時に、何があるかなって。

で、「役に立つ情報を探す」っていうコンセプトは捨てちゃったんだ。

だって、絶対に受かる100%の情報なんかないから。

とにかく100%正しい情報って何か、学生が行く場所で・・・それで、いろいろ考えて辿り着いたのが「面接室」。

それを知ったからって受かるわけじゃないけど(笑)

そうですね(笑)

でも、面接室がこんな部屋なんだって事前に知っとくのって、ちょっとはみんなの参考になるかな、緊張しなくなるかなって思います。

しんどくても・・・

斎藤さんご自身についてお聞きしたいんですけど、テレビ番組制作の仕事をやろうと思ったきっかけは何ですか。

学生時代にバイトするじゃないですか。そうすると自分の向き不向きの仕事って分かるんです。

どっちかっていうと引っ越しみたいに、毎日、場所もやることも違う、みたいな仕事が続いた。

もともと作ることに興味があったし、いろんな現場にも行けるってことで、番組制作会社が第1志望でした。

衝撃的なのが、夜逃げ・・・

まあいい経験になってます(笑)

その時は番組が悪かったわけじゃなかったんですけど、給料も出てなくて会社が傾いてるなと思いつつも、どうしようもできないでしょ。

なんだか、すごい。

ある時、「あした番組の資料とか映像素材とか、会社の物、全部差し押さえられちゃうぞ」ってなって。

大至急で荷物運ぶから、24時間借りれるレンタカーで2トン車借りてこいって言われて、一人できらびやかな表参道を運転したんです(笑)

それでもこの仕事を辞めなかったんですね。

入ってみたら、面白かったんですよね。

大変だけど、提案が通れば取材で海外にも行けるし。楽しかったから仕事はよかった。

一番しんどかった経験ってありますか?

体力的にしんどいのはいっぱいある。多分テレビ番組を作ってる人って、ほとんどみんなしんどい経験をしているんですけど。

最後には絶対成功するんだよね。

失敗するというのはないんだ、それは言い聞かせてる。

失敗なんてない

成功と失敗って・・・

何かって話なんだけど。

結局、テレビ番組ってどんなことがあっても絶対作らなきゃいけないじゃん。

できませんでしたって放送に穴は開けられないから。

作品のレベルの差はあれ、つくらないといけないという事では「失敗」はないんだよね。

完成という時点では成功ではありますよね。

そう。だから就活でも、面接で落ちた時はつらいけど、結局、落ちたから今があるってなる。

1発目で受かった人はすごいラッキーって思うけど、そこで受からなければ、本当はすごい所に入る可能性もあるし。

ご縁ですもんね。

1つ目に受かろうが5つ目に受かろうが、最終的に自分の人生として正しい道はどっちかってのは誰にも分からないじゃん。

たしかに。

でも、落ちたときはどういうモチベーションでいればいいですか。

失敗してもいいと思うんです。必死になるだけ

必死になればなったほど、最後には絶対にいいことになると思いますね。

そういうこと就活のアドバイスでみんな言うよね。でも、たぶんみんなそういう経験をしているからだと思う。

仕事は人のため

最後に斎藤さんにとって仕事とは何か、書いてもらいました。

「カッコよくない意味で人のためにする」ですか。

人のためにやりましょうって、何かボランティアとかじゃなくても、例えばコンビニの店員をやっていてもそれって人のため。

テレビやってても人のためだし、宅配で物を運んでも人のため。

それって意外にかっこいいし、仕事っていいなみたいな。

なんか意欲湧くなってイメージしたんで、お伝えしたいと思った。

確かにそうですね。

学生まではバイトはするけど基本的には自分のために生きてきた。

でも就活をして仕事をすると、そこから人のために時間を費やすことになる

僕も番組で構成書いたり編集したりするのって、自分の楽しさでもあるけど、人に見てもらうため

ちょっといい時間を過ごしてもらえるために番組つくるっていうと、仕事したくならないかな。

はい。響きます。

就活の時とかも、やりたい事分かんなかったり、いい仕事見つけなきゃいけないとか、自分の道ってなんだろうって考えたりするんだけど。

要は人のためだから、例えばこの人のためになりたいなっていう方向から考えると、やりたいことが見つかることもあるんじゃないか。

その視点は無かったです。

どうしても、自分のしたいことって考えてしまって。

どんな仕事でも役に立ってんだって考えるとはおもしろいと思います。

就活の考え方が変わりました。ありがとうございます。

編集:加藤陽平

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