2020年03月05日
(聞き手:井山大我 勝島杏奈)
前編の3Dアバター「イトッポイド」を活用して新時代のマーケティングを仕掛けているのが、今回の先輩、伊藤彰宏さん。需要の高まるアバターを、ビジネスにどう展開できるのでしょうか?様々な企業から相談される、今、引っ張りだこの28歳に聞きました。
伊藤さんのお仕事について教えてください。
私はインターネットが死ぬほど好きなんですね。とにかく好き。すごく好き。だから「毎日のインターネットを楽しくする」っていうことをモットーに働いています。
今は3Dアバターを世の中に広めるプロジェクトを展開する会社でマーケティングマネージャーをしていますが、そのほかにもフリーランスとしてデザイナーやプランナーなど、いろいろな仕事もしています。
私がアバターが欲しいといったら、どういうのを選べばいいですか。
なるほど。それはお仕事のオファーかな?
(笑)
ちなみに、今、どういうサークルに入っている?
自転車です!
ロードバイクですかね?
そうです。おすすめのコースは、群馬県の渋峠!スゴイ絶景で、自転車で走ると気持ちいいんですよ。
じゃあ、その体験をみんなに伝えるためにはどうしたらいいと思いますか?
う~ん。絶景の中を走るPR映像を作るとか?
いいね!「車載カメラ動画」みたいに、後から自身の声でコメントをつけるのがいいと思います。でも、顔出しでPRムービーに出れますかね?
ちょっと恥ずかしいかも…
そこで、キャラクターなんです!
例えば、ヘルメットをかぶったサイクルジャージ姿のキャラクターがアバターとして映像の中に出てきて紹介すれば、恥ずかしさも減るし、映像を見てもらえる確率も高まります。
なるほど。
アバターを使ってどういうことをしたらいいかを提案したり、お手伝いしたりするのが私の仕事です。
大学生の時からクリエイターだったんですね。
僕、出身が茨城の田舎で、周りに店とか遊ぶ場所が何もなかったんです。ワクワクするものって、だいたいパソコンの中の、インターネットにありました。
インターネットってポジティブなワクワクした気持ちになれるし、自分が作ったものを次の世代が見て、「いいね!俺もやってみたい!」と思ってくれたら、ワクワクがさらに広がっていくと思って。
ちょうどインターネットの成長過程だったので、フリーでウェブサービスとかネット広告の仕事を請け負って、いろいろ学ばさせていただきました。
どんなことを学びましたか?
一生懸命やった企画でも、リリース前に簡単にポシャるということ学びました(笑)
どんなに準備してどんなに頑張って撮影しても、ちょっとタイミング悪いとか、ちょっと微妙に予算がでなかったってなると、それだけで簡単に企画がお蔵入りになっちゃうんですよ。
ひ、ひどい…
それで、クライアント企業の方はどんな事を考えているんだろう、どんな事情があるんだろう、組織人の世界を学びたいなと思って、就活ではあえて大企業に入りました。
あえて、大企業に?
フリーランスは、やっぱり一人で働く働き方になりがちです。
でも、このまま続けていくだけだと、組織の中でどんな判断が行われているのか分からなくて、レベルアップができないって、大学時代に痛感したんです。
入社して、ひとりの組織人になってみると「ああこの人は部長に提出する数字がほしいんだ。だからこういうこと言っているんだ」とか、裏の事情が分かってすごく勉強になりました。
なるほど。
「新卒」ってカードを使えるのは人生で1回だけです。新卒っていうだけで、業務経験がなくても就職できちゃうんです。本来はありえないんですが、日本の就活のルールってそこが穴なんですよ。
だから新卒で入るべき企業はどこかというと、今の等身大の自分だと絶対に手の届かない所とかおすすめです。
新卒のカードを使えば、自分の人生の中で、そこに入れて、勉強できるので。
あとは、「アニメ」とか「自転車」とか「スポーツ」とか、具体的に携わりたい商品とか仕事があるとしたら、あえてそれと全然違うものを扱う会社に行くのもアリです。
それは、なんでですか?
「なんの仕事をするか」ももちろん大事ですが、「どんな職種になるか」ということも大事だからです。営業とか、開発とか、企画とか。
アニメの企画をやりたいなら、最初は企画をガッツリ学べる会社に入って勉強して、そのあと、アニメ系に転職するというルートです。ある程度企画ができるようになってから、好きな仕事をするというルートですね。
今は昔と比べて、すごく転職しやすい時代です。転職して、いま楽しいと思う方向、自分のやりたい方向に人生を変えられる。だからこれが一番いい方法だと思ってます。
就活生に対して伝えたいことはありますか。
なりたい自分をデザインしよう。このなりたい自分っていうのは職業じゃなくて、自分の「状態」のことです。
いろんなものを作ってエキサイティングしたいとか、大切な人と過ごしたいとか。理想の状態になるために、自分をどう持っていけばいいかをデザインするのが大切なんです。
どうしてその言葉を選んだんですか?
今は昔と比べて選択肢がすごく増えました。副業OK!とか。人生で一つの仕事しかできない時代でもない。
大切なのはデザインで、「どういうふうに自分を持っていけばいい感じになるのかな?」、「どうすれば自分が良いと感じるのかな?」って、普段からよく考える癖をつけるといいかもしれません。
ただ、就活でよくやる「自己分析」はちょっと違うなと思っていて。
へ!?
自己分析はぶっちゃけあまり意味がないと思っています。やりたい事って何だろうって考えたって、若いうちは分かる訳がない。トライ&エラーをしてないわけだから。
なるほど…
就活だったら、自己PRだけ作ればいいんですよ。「これをやってみた、そしたらこう思った、だからなんとなくこれをやりたいと思ったんです!」これが自己PR。なりたい自分って、今の自分じゃない。
だから、わからなくて当然です。新しい自分を踏み出すための一歩が何よりも大事で、その想いを言葉にできるかが大切です。
就活で企業の人は何を見ているんでしょうか。
重要なのは、コミュニケーションできるかです。
ちゃんとお仕事で会話できるかなとか、職場の空気悪くしないかなとか。仕事って実はそっちの方が大事なんですよ。
コミュニケーションが大事なんですね。
そして、僕のこの髪もコミュニケーションの一貫、ということもできます。
はい!?
みなさんは「うわーなんかよく分かんねえ髪のやつがいる、NHKのこの企画大丈夫か」っていうメッセージを受け取るわけです。
もしかしたら「こういうしっかりしてなさそうな人にもフォーカスを当てる企画にシフトしたのかな、そしたらちょっと軽いノリで聞いてみようかな」という受け取り方をしたかもしれない。
この髪色に染めておけば、「ああ、そういう感じのやつね」という第一印象になって、「それちょっと微妙じゃないですか」的な失礼なことを言ったとしても、「まあこいつ、こういうやつだから」ってなる可能性が高いわけです。
逆に私が髪をオールバックにまとめて、スーツ姿でゴツい時計をしていたら・・・きっとまた違ったメッセージを受け取りますよね。人っているだけでメッセージを発しているんです。
それがコミュニケーション。仕事で大事なのって、ほとんどそういうことだったりします。
副業もされていますが、バランスはどう取っているんですか?
前提として、いま所属している企業が、社員のクリエイターとしての活動を認めて下さっている、というのがあります。
もちろん、昼間は自社プロジェクトに利益が出ることを第一に考えて働いています。
自分をもっと成長させたいな、もっとチャレンジがしたいな、と思えるところで、夜の時間を使って副業をやっています。
いろんな企業さんと一緒にやることで、自分ひとりじゃ実現できないような、ワクワクするコンテンツを世の中に生み出せると思っています。
周りの友達とか見てても、やりたいことが分からないという人も多いんですけど、それを見つけるにはどう考えたらいいですか?
なりたい自分とか、やりたい事を見つけるのって実は私もできていません。
え…
「自分はいったい何になりたいんだろう?」、「自分、何やりたいんだろう」と常にすごく悩んでいます。今も悩んでいます。本当に悩んでいます。
伊藤さんでも…
具体的に言えば、クリエイターかマーケターか、ディレクターかプロデューサーか、自分が何になりたいのか、すごく悩んでいる。
そうなんですね。
でも、やりたいことは見つかっていませんが、好きなものは見つかりました。やっぱり、「うおお、ワクワクするぞ!」っていうのが好き。
「若いうちはやりたいことなんて分かるわけないから、そんなこと考えずに興味出たものは全部やれ」って先輩に言われたことがあって。本当そう思います。
ちょっと大変だけど、とりあえずやってみて、やっている途中で自分の好きを見つける。そして、その好きを活かす自分にデザインしていくのがいいんじゃないかと思います。
なるほど…
なので、自分がテンション上がるところとか、自分の好きという感情に耳を澄ませて下さい。いいなと思ったことには全部Bet(ベット)です!