2020年06月26日
(聞き手:田嶋あいか 堤啓太)
キリンの公式SNSの“中の人”山崎真理子さん。後編は、営業から“中の人”に転身したワケ、そしてSNS発信のツボやコミュニケーション術について聞いてきました。
1日の中で、山崎さんはいつTwitterをチェックしているんですか?
朝起きたらまずチェックしますね。Twitterのトレンドは、地域ごとに設定できるので、「日本全体」と「東京」のトレンドを両方チェックしています。
私たちは日本全国のお客様に発信しているので、偏りが出ないように幅広く話題になっている情報を収集するようにしています。
ツイートする時間帯も意識していますよ。
例えば、このツイートは毎週日曜日の午後7時50分にツイートしているんです。
おおー「麒麟がくる」に合わせてですね。
今年の大河ドラマのタイトルが、「麒麟がくる」で。
なんだか期待されているようで、とても悩みました(笑)
それで、ネットで「本麒麟」と呼ばれていたのを知って、急きょ撮影しました。お客さんとコール&レスポンスが楽しみたくて、シンプルな内容にしたんです。
SNSは、投稿の内容ごとに合った時間があるんです。
例えば、「今日は○○の日」っていうワードは、午前中にトレンド入りすることが多いので、午前のうちに投稿した方が見てもらえるんです。
「年越し」とか「母の日」とかだと、午前0時になるタイミングで投稿しないと乗り遅れちゃうし。
細かいところまで考えられていてすごいです。
できる限り、お客様が反応しやすい時間やモーメントにのるような時間を考えて、投稿のスケジュールを立てています。
独特の発想力はどうやって培われたんですか?
えー何だろう。でも何かすごくSNSは好きだったので、いろんなアカウントをフォローしてみるようにしていました。
どういう人がどういう言い回しをしているかだとか、なんかこういうのって面白いなって。
やっぱりSNSの“中の人”やるんであればSNSを楽しむというのがすごく一番、近道かな。
「SNSを検索ツールに」というのが気になったのですが?
もちろんグーグルでも検索するんですけれど、Twitterで検索すると、その言葉がどういう使われ方をしているのか見えてくるじゃないですか。
「最高においしい」みたいなことを「最&高」とか、「天国的」とか…。“ツイッター文脈”みたいな言葉ですね。
ネットスラングとかも、常に情報をリフレッシュしていかないと分からなくなってしまうので、どういう時にどういう意味で使っているんだろうっていうのを知って、仕事にも反映させています。
面白いですね。
山崎さんの就活についてお伺いしたいのですが、どうしてキリンを選んだんですか?
自分の生活に身近なものを、作ってから売るまで全部やっている会社で働きたいと思ったので、メーカーに絞って就活をしていました。
「日常に彩りを加えられて、人に喜びや驚きを提供できる会社」を軸にしていた気がします。
デジタルマーケティングに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
もともとSNSが好きだったこともありますし、キャンペーンの仕事を担当していた時などは、お客様の反応をツイッターでよくエゴサーチしていたんです。
そんな中、社内にデジタルマーケティング部ができたので、お客様の声をリアルに集めて仕事に生かせると思い、チャレンジしてみたいと社内公募に手を挙げました。
SNSによって、変わったことはありますか?
そうですね。弊社の場合、直接消費者の方に商品を手渡しているわけではないので、問屋さんや各流通のバイヤーさんとの商談なんですね。
でも、SNSはエンドユーザーと密にやりとりできるので、お客様のことをより知ることができるようになったなと思います。
よりお客さんと身近になったんですね。
あと、プロモーションの仕方が変わったかなと思います。
今はSNSで、おいしいものを食べたら、「おいしかったよ」ってつぶやいたり、インスタに写真をアップしてくれたりするじゃないですか。
マス広告で一方通行に伝えるだけじゃなくて、お客様から自発的に商品を語ってくれる機会を作ったり、そういう仕掛けをする必要が出てきたりしたのは、大きな変化だと思います。
就活生に向けて、役立つテクニックがあれば教えてください。エントリシートや作文に生かせる文章術とか。
懐かしいな、エントリーシート(笑)
私も苦手だったので、苦労したことを思い出します。
でも大事なのは冒頭だと思います。
冒頭ですか。
Twitterやインスタもそうですけど、タイムラインってみんなどんどん流しちゃうじゃないですか。だいたい1秒、2秒ですよね。
その短時間でパッと目に留めてもらうには、やっぱり書き出しが一番キーになると思います。
なるほど。
「私はこれを言いたい」ということを冒頭に書いて、詳細や補足説明的なことを中に書くようにして。
自分が何を一番伝えたいのかというのを意識して書くといいと思います。
目に留めてもらうには、最初が大事なんですね。
そうですね。面接もそうだと思うんですけど、ファーストインプレッションが後の印象にすごく大きな影響があると思うので、書き出しが面白いとグッと引き込まれるはずです。
そこを意識すると読んでもらえる、いい文章になるかな。
他の就活生と差をつけるために、“他の人と違う内容を書かなければいけないのでは”と思うんですが、どうですか?
そうですね。でも、奇をてらいすぎると逆に届かないこともあります。
エントリーシートってどんな人が読むか分からないじゃないですか。30代が読むのか、50代が読むのか、男性か女性かでも変わってきちゃう。
そうですね。
Twitterもそうですが、エントリーシートもシンプルにした方がいいのかなって。
奇をてらい過ぎると、「この人何が言いたいんだろう」となっちゃうので、あまりこねくり回しすぎない方が伝わるのかなっていう気がします。
エントリーシートを提出する前に親や友達とか、いろんな角度から見てもらった方がいいと思いますか?
そうですね。この人に見てもらえると何か安心みたいな人が1人2人いるといいなと思います。
あんまりたくさんの人に聞くと、それぞれいろいろ言ってきて、自分で何を言いたかったのか迷っちゃうと思うので。
1人2人決めておいてその人にしっかり見てもらったり相談してもらったりする時間をとると、ブレない気がします。
勉強になります。
私もどうツイートしようか悩んだ時に、この先輩に聞いたら安心できる、何かほっとするという先輩がいて、相談しています。
就活生に伝えたいことはありますか?
「私だからできる自信を持とう」ということですね。
就職活動をしていると、いいことばかりじゃないと思うんですね。お祈りメールが届くこともたくさんあって、「私って採用してもらえるのかな」って不安になったり。
はい。
でも、やっぱり過去の自分と未来の自分をきちんと信じてあげることが、就職活動の中で支えになると思っていて。
心が折れそうになったら「大丈夫、私だからできる」っていう言葉を心の中で言い聞かせて、自信を持って笑顔で臨んでもらえればいいなと思います。
最後に、山崎さんにとって仕事とは?
「ドライブ」かな。
仕事って車の運転と一緒で、自分でハンドリングしていくものだなと思っていて。
「今、アクセル踏めるな」と踏み込む時も、子供や家族の事情で「アクセルをゆるめようかな」っていう時もあると思うんですよ。
はい。
仕事って与えられるものじゃなくて、自分から主体的・能動的に決めたり動いたりしなきゃいけない。
自分のキャリアは自分でしっかりハンドルを握って、ブレーキを踏むところとアクセルを踏むところを見極めることが大事です。
電車に揺られているだけじゃダメなんですね。
そうですね。ドライブって見たことのない景色を見せてくれるじゃないですか。会社って、自分一人じゃ見えない世界を見せてくれるとものだなと思っていて。
自分ひとりじゃこんなに規模が大きい仕事はできなかったと思うし、こんなにたくさんの人を喜ばせることができなかったと思うので。
自分が車を運転することによって、すごく景色のいいところに連れて行ってもらったと感じます。
私もドライブ頑張ります!ありがとうございました。
編集 成田大輔