2020年04月24日
(聞き手:佐々木快 田嶋あいか 西澤沙奈)
女性客に人気のスープストックトーキョーですが、女性の取締役は江澤さんが初めてでした。実はあまり出世に興味はなかったということですが、実際に副社長という立場になってみて見えてきたものがあるそうです。(※新型コロナウイルスの感染拡大前に取材しました)
副社長として、今すごくお忙しくお仕事をされていると思うんですけど・・・
私の場合、正直、すごく副社長をやりたいというわけじゃなかったんです。
えー!
やりがいはあるし、楽しいんですけど、すごいそれがやりたくてっていう感じでもないんです。
最初のスタートは、任されたり頼られたりすることは好きなので、任されたから頑張ってみようと。
期待されているのなら、それを超えようみたいな感覚でした。
そうなんですね。
でも、出世はしてみるといいと思います。
今この立場になって思うのは、世の中で「女性活躍」ってすごく言ってるじゃないですか。
これって女性たちにとっては、すごいチャンスなんですよ。
はい。
もし誰もやらなかったら、多分次につながる女性の道は作っていけない…自分がやりたいからというよりも、みんなのためにそういう道を作っておく必要があると思って決めたんです。
人のためなんですね。
人のためにバトンをつなぐような。
それは、すごく思ってます。
例えば、私がずっとこのまま副社長やるとか、そこに固執はしてなくて。
やってほしいと思う子がいたら、その子に役員を是非やってほしいし、その時には私は退けばいいと思うんです。
就活している中で、私は将来、結婚したいなっていう気持ちもあるんですが。
そこのところはどうですか?出世で遠のいてしまうイメージがあるので。
一般的にどうかは置いといて、私の場合は遠のいているかもですね(笑) 実際してないですし。
これまでも打診を受けるたびに悩みました。初めてマネージャーになる時に、当時付き合っていた方がいて。結婚も考えた時に完全に私のほうが収入も上がるし、役職も上がるしって思ったんですけど(笑)
でも、その役職を引き受けるって決めて。
自分が稼ぐんだって決めて、実際になったら別れちゃったんです。
それはつらいですね。
それはそれだなと思いながら。
そうですよね。
個人的には、結婚や出産をする前に、どれだけ自分の経験値とかスキルが上げられてるかによって、戻ってきた時にできる仕事が少し変わってくると思ってるんですよ。
なので良い意味で、自分のやりたいことや年齢的なものをいいプレッシャーというか、「きっかけ」に転換できればと思っています。
どれだけ自分というものを確立できているかを考えながら仕事をするのもひとつの選択肢です。
「いつか結婚して、いつか子どもも産みたい」
「いつか」が自分を縛りすぎて、まだそういうわけじゃないタイミングから縛りすぎて、やれること狭くなっちゃうじゃないですか。
確かに。
いろんな経験積んで、みんなから頼られて結果を出す。そのほうが、「結婚して出産もするので、働き方に制約を持ちます」って言った時、多分NOと言われないと思うんですよ。
制約があってもこの人はきっと何かやってくれるっていう期待値があるから、任される仕事は違ってくると思うんですよね。
今できる事をとにかく頑張っていろいろとやって、自分という価値をどれだけそこまでに高めておけるか、男女問わず言えることですね。
じゃあ、結婚とか出産はあまり考えすぎないほうがいいんですね。
だって、結婚、出産の予定が無いなら、この1年って転勤してもいいじゃないと思っちゃうんですよ。
確かにそうですよね。
転勤した先にすてきな人がいるかもしれないわけだし。
そう思うと、自分の可能性を自分で狭めるのはもったいないなって。
すごい響きました。もう気にしないことに決めました。
どんどん会社での立場が上がっていったということですが、戸惑いはありましたか。
立場が変わっても、自分は自分なので変わった気はしないんですけど。
社員が180人、アルバイトの方が1500人いて、みんなが働きやすくなるために考える立場になった時、対象が多すぎて何からやっていいのか分からなくなっちゃった。
自分が店長だったらどうしただろうとか、アルバイトだった時はどう思っただろうというのを、逆にこの立場になってから改めて考えるようになりました。
アルバイトの経験もすごく生かされたということですね。
アルバイトの方と働いていた時と、結局やる事は一緒かなと。
輝ける舞台を作ったり、道をひいてあげたり、背中押してあげたり、そうする事が必要なんだなって思うので。
大きく考えすぎて、一瞬プレッシャーとかパニックな感じにはなるけれども。
小さく分解して1人1人をよく知って、そこにちゃんと光を当てていくようにしたいです。
江澤さんにとってリーダーとは何か。書いてもらいました。
シーンを描いて発信していく。
「こうなりたい」とか「こうしたい」っていう“シーンを描く”というのは、うちの会社内でよく使う言葉なんですけど。
シーンを具体的にきちんと描いて、それを皆に発信していくこと。
それを伝える事で目指すべきものが一緒になることが、チームをまとめていくうえでもすごく大事です。
お話を聞いていて、何をやりたいがが明確だなって思って、すごくうらやましいなと思うんですけど。
私たちは就活をしている中では、どのように考えればいいですか。
そもそも、どういうジャンルの世界に入るかは、自分が興味あるかどうか。
私だったら食べ物が好きで、お客様に近い所で仕事をすることに興味があるから、そういうジャンルを選びました。
ふわっとしていていいので、自分の中で興味があるかないかは大事にしたほうがいいですね。
最初の段階では、大きい枠でとらえちゃってもいいんですか。
はい、そう思います。
仕事の向いている向いていないは、入ってみて周りが決めるっていうことなんですか。
自分にはこれが向いてるだろうとか、これが自分の強みというのはあったほうがいいと思うんですよ。
だけど、そればかりやってると結局何かつまんないというか、すでにある引き出しばかり使うことになりかねません。
確かに、チャレンジすることもなくなる。
そうなんですよ。
人に向いているんじゃないかって言われた時に断っちゃったら、多分そこで自分の引き出しが増えるチャンスは終わっちゃうけど。
素直に聞いてやってみたら意外な自分の一面が見えたりして。
意外とこういうことが向いていたんだ、というのに気付けるのは会社に属する面白さなのかなとは思いました。
他人から見た自分を知るというのも大事ですね。
江澤さんにとって、仕事とは?
「新しい自分を知るきっかけ」ですね。
色んな選択をする中、「そこに新しい自分があるから」と思って進まれているんですか?
そうですね。選択に悩んだ時に、大変だと思う方を選ぶっていうのは自分で決めています。
いつも思うのは、やってみてだめだったらやめようって(笑)
とりあえずチャレンジしてみようというのは大事にしてる部分です。
どんなところが評価されて今のお立場になったと思いますか。
多分その時その時の、自分に任された仕事に集中してやる点だと思います。
小さいこと大きいこと関係なく、集中して仕事してきたってことが信頼されてる部分なのかなと。
あとはやっぱり一緒に働く仲間をすごく大事にしてきました。
副社長になるって聞くと、なにか大きいことを成し遂げたことが評価されてなるのかなと思ったんですけど。
地道に積み重ねてきた努力の結果なんですね。
こちらもご覧ください。フリーターから副社長になった経緯を話してもらいました。
編集:加藤陽平