2019年06月25日
(聞き手:勝島杏奈 高橋薫)
今回の先輩はニュースアプリ「SmartNews」でフェローをしている藤村厚夫さんです。ニュースを扱う会社ですが社内に記者は1人もいません。その背景には、「ニュースの価値を決めるのはメディアではなく、ニュースの消費者である市民だ」という考え方があるそうです。
さっそくですが、現在はどのようなお仕事をされていますか?
SmartNewsというスマホのニュースアプリを運営する会社でフェローをしています。
SmartNews
世界各国でおよそ4000万ダウンロードを記録する人気ニュースアプリ。国内外のメディアからニュースの提供を受けて配信しており、1日あたりに扱うニュースは数万件におよぶ。配信するニュースを選ぶのは人間の「編集長」ではなく、ネット上で話題になっているかどうかなどの指標をもとにアルゴリズムが判断している。
フェローというのは耳慣れない肩書きなのですが?
これまでは執行役員としてコンテンツをどうするかというメインの業務に携わっていました。
去年からはフェローという一歩引いた立ち場に変わりました。ほかのメディアの助けになれるように我々が持つテクノロジーやデータをどう使えばいいか、という大きな枠組みを考えています。
なぜ他のメディアの助けになることを考えるのですか?
SmartNewsは自分たちでは取材せず新聞社などのメディアのコンテンツを使わせてもらっています。
その恩返しではないですけど、メディアが取材した有益な情報が消費者にきちんと届く仕組みを考えています。
お仕事のやりがいを教えてください。
メディアっていうのはコンテンツを載せて運ぶ仕組みだと思うんです。それを新しいやり方で運ぶ、人々に届けるモデルを作っていきたいんです。
今は新聞やテレビ、それにスマホという新しいメディアが出てくることで、コンテンツの表現がすごく変化しています。
そこに目を向けて、次はどうなるんだろうってワクワクしながら、人の役に立てるかを考えるのは楽しいですね。
スケジュールを拝見して1番最初に思ったのが、起床が午前3時!
どうしてここまで早起きなんですか?
新しい情報に触れる習慣をつけようと思っているからですかね。
どのタイミングで見ても新しい情報ってあるのかもしれないけど基本的には時差がある海外で起きた情報に1番最初に目を向けたいなと思っていますね。
国内より海外のニュースを先にご覧になるんですか?
国内のニュースは夜中…自分が寝てる間にあまり変化しないので(笑)
やっぱり早起きすれば何となく人よりは早く変化にキャッチアップできるっていう事はあります。
毎日ニュースをチェックされて、SNSにアップしたり、ツイートしたりされているのはどうしてでしょうか?
そうですね。1日で多いときは10本ぐらいSNSに投稿しています。短い表現で「これは面白いよ」と伝えることは、表現力のトレーニングにもなるんですね。単にリツイートをしても自分の能力は向上しない。
情報を受けとった自分がどう考えたとか感じたとかを短い文章で伝える力っていうことですか…?
そうそう。結構それ重要だと僕は思っていて。リツイートする際に僕はこう考えるみたいな事を、ひと言だけでもつけて伝えるには、自分なりの蓄積や考えを伝えられるので価値があると考えています。
情報が溢れている中でどうやって取捨選択しているんですか。
あのメディアのこの人が書いてるから信頼できそうとか、この見出しで使われてる言葉は僕が最近気にしているワードなのでちゃんと読もうとかっていうさまざまなシグナルを感じ取って選んでますね。
学生でも真似できるかな。。
みなさんもあふれる情報を全部を見てるわけじゃなくて何らか判断してるわけですよ。面白くなさそうだったらスワイプしちゃうみたいな。
(学生のみなさんも)何らかの基準で、ものすごく高速に取捨選択してる事に変わりはないとは思いますよ。
情報の選び方にも関係しますが、できるだけ多くの情報を見るべきですか?
僕の場合はある程度そうかもしれませんね。そう言うと、なんでそこまであくせくして情報に触れなきゃいけないかって感じるかもしれません。
ただ、数少ない情報だけで物事を判断して、結論を出してしまうことは少し不安ですね。偏ったものに触れてそれだけで世界を切り取ってしまう心配もあるし、複数の視点によってちゃんと考えよう、とかね。
藤村さんは転職を重ねてこられていますが、転職する際にはどうやって会社を選んできたんですか?
これまでに10回以上転職しています。僕は大きい会社はあまり好きじゃなくて、小さい会社で人がやってる事も自分がやってる事も互いに見えるみたいなところで仕事するのが楽しいっていうタイプなんです。
だから転職で次の仕事を決める上で大切な要素は、自分がそこにいる事で、何かが変化したっていう、自分の価値が、分かりやすいことなんです。その方が手応えってあると思いませんか?
そう思います。
そういう意味では、2人とか3人の会社に入ればすごく大きいインパクトをもたらすじゃないですか。だけど社員が何百人とか何千人のところに自分が1人入っても、手応えはひょっとすると感じにくいかもしれないので。
日々の生活で、情報収集に限らず気を付けていることはありますか?
スキマ時間をうまく使えたらいいなと思ってますね。それこそSmartNewsも、そういう種類の道具としてはよくできたものだと思うんですね。
スマホを持っているだけで、電車から降りてエスカレーターに乗って、地上に出るまでの間に記事を読めるわけじゃないですか。
そういうスキマ時間って日々の生活の中で結構ありますよね。
僕は今までぼんやりして使われてなかった時間、この時間をどうにか活用できないかと考えています。
SmartNewsで表示するニュースはどうやって決めているんですか?
いろんな基準がありますが、1つはSNS上で騒がれているとか、インターネット上で話題になっているかどうかです。
インターネット上での反応ということですか?
そうです。記事の内容も大切ですが、その記事が多くの人の話題に上っているかどうかも重要な判断基準だと思っています。
テレビや新聞とは異なる選び方なんでしょうか。
テレビや新聞といった報道機関は例えば編集長とかの価値観で、このニュースがトップだなとか決めていると思います。
これに対して、我々は「集合知」、つまり多くの人の反応や考えを元に決めていると言えると思いますね。
同じニュースを扱うメディアでもそんなに違うんですね。
もちろん、どちらが正しいということはありません。たった1人のすごく見識の高い人が価値を決めた方がいいと思われる人もいると思います。
その一方で、特定の人には決められたくない、みんなが民主主義で投票してたくさん票を集めたものが重要で、その方が透明性があると考える人もいると思います。
そういう基準で選んでるとはまったく思いませんでした。
ただ、人間vs機械みたいには考えてほしくはありません。集合知、つまり多くの人たちの反応によって決められてるっていうのは、別に人間以外のものが決めてるわけではないですから。
情報とは「知恵の集積」だと思っています。知恵って集積できるし、集められる。だからその集めてくる事によって価値が高まる、と僕は思っています。
もうひとつ聞かせてください。藤村さんにとって仕事とは?
「自分を生かすもの」ですかね。僕にとって仕事とは与えられるものではなくて、自分がどう寄与できるか、どういった価値を生み出し、人の役に立つことができるかってことなんですね。
人に役に立つことで自分の価値を高められるというか、自分を生かせると思っていますね。
最後に学生に向けてこれだけは学生時代にやっておいた方がいいよとか、自分がいま学生だったらこれをやるなとか、ありますか。
情報のアンテナを磨いていくこと。難しいテーマである必要はなくて自分はこれを専門的に考えてるんですって、人に聞かれたら説明できるテーマを持つことだと思うんですね。
どういうことでしょうか。
自分が専門的にやっているテーマが見えてくると、そこに情報が集まってくる。たとえば僕は、メディアとテクノロジーっていうのが専門分野なので、そう言ってしまうと、そこに関する情報は集めない訳にいかないじゃないですか。
宣言してしまうと後には引けなくなりますよね。
そうなんです。自分を押し出していくこと。自分の中心を、決めつけでもいいので、持つことかなと思います。
自信を持って専門分野って言えるものを持てるように頑張ります!
あと、実用性という意味では絶対に英語も。英語は世界を広げるんで役に立つと思いますよ。
英語も…頑張ります笑
自分なりの考えを持つためにも、まずは多種多様な情報に触れることの必要性を学びました。私も情報のアンテナを磨いて自分の「専門分野」を発掘していきたいです!
お仕事を「自分を生かすもの」と表現されたことがとても印象的でした。人の役に立つことで自分の価値も高められると言うことは普段の生活でも意識していきたいです。