教えて先輩! 澤円さん【前編】

“プレゼンの神様”が解説!就職活動で「伝える極意」

2022年02月25日
(聞き手:石川将也 小野口愛梨 田嶋瑞貴)

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就職活動、特に面接の時、どうすれば自分の思いをちゃんと相手に伝えられるのか?ビジネスの世界で「プレゼンの神様」と呼ばれる澤円さんに、就活生が「伝える極意」を聞きました。

“プレゼンの神様”は“ボスキャラ”だった

学生
石川

最初に現在どんなお仕事されているのか教えてください。

9社で企業顧問、2つの大学で先生をしています。

澤円さん

このほかはオファーを受けて、企業研修などで月に15回くらい講演をしています。

そんなに!月の半分も。

2021年は8割から9割がオンラインで年間300回余り、移動がないんでできちゃうんですよね。

【澤円さんプロフィール】
生命保険会社のIT系子会社を経て、1997年に日本マイクロソフトに入社し2018年には業務執行役員に。20年に独立し圓窓を立ち上げる。年間250回以上のプレゼンをこなす「プレゼンの神様」としても知られる。

きょうは就活のことを質問させていただきます。

実は日本マイクロソフト時代は所属部門の新卒採用の最終面接者で僕は“ボスキャラ”だったんですよ。

僕の面接に通ったら入社できる役でした。

就活生からするとせっかく髪の毛を黒くして黒いスーツに白いシャツ着てきたのに、出てくるのこいつかよって思っていたかも知れないけど。

学生
小野口

ボスキャラですか?

面接でほかの面接官が「この人知ってる?」って就活生に聞いて、知らないって答えた人は面接を通らないことがほとんどでしたね。

何でかっていうと、会社のことをネットでちょっと調べればわりとすぐに僕のことが出てくるからです。

知らなければ「あ、この人はあんまりうちの会社に興味ないな」ってすぐ分かっちゃうんです。

学生
田嶋

なるほど!

過去じゃなくて、未来の話をしよう

面接官もされていたということで、就活では自分をどうプレゼンすればいいのでしょうか?

私はこうやって活躍する、こういうふうに会社にコミットしますって言えばいいと思います。

大して意味がないのが、過去に何をしたかという話なんですよね。

え、過去の話をしようと思っていました・・・。

僕が過去の話で唯一聞く耳を持っていたのは失敗談です。

どんな事をやらかしたのか、それをどういう考え方で切り抜けたのかっていうのはすごい聞きました。

未来につながるからですか?

そう。その人のサバイバル能力が試されるから。

ああ、この人はトラブルになった時にこうやって抜け出すだけの胆力はあるんだなって分かるんで。

一方で「サークルの部長、副部長としてチームメンバーをまとめました」っていう話は思い出に1個も残っていません。

インパクトが大事なんですか?

インパクトっていうよりも「こういう苦労をして、こういう形で折り合いをつけたんです」って話は仕事に応用がききます。

ネガティブな状態になった時に自分で行動できるかがわかるからです。

じゃあ、どう自分を売り込んでいけばいいですか。

「売り込む」じゃなくて、自分の“棚卸し”なんですよ。

まずは自己分析をしましょうと言われるでしょ、就活の時。

自分は極限の時にどういう行動するタイプの人間か、自分自身が分かってなきゃいけない。

自己分析は“今”の自分のためなんです。

解像度を上げながらストーリーをつくる

ほかの受験している人と差がつくポイントはどこですか?

「受験」っていう考え方がそもそも違っています。

就活って試験じゃないので、そのマインドセットを変えなきゃいけない。

お見合いなんです。

お見合い・・・

内定が取れなくてへこむ人がいるけど、取る側って相性で見ているので「優秀だけどうち向きじゃない」っていう落ち方がけっこうある。

優秀だから必ず入れるとは限らないんですよ。

例えば、スポーツやる人いる?

はい、バスケットボールをしています。

バスケならセンターってポジションだけで試合に勝てる?

勝てないです。

だから面接でセンターしかやらないんですって言うと「今のチームにはこれ以上センターをやる選手は必要ないからな・・・」って採用は見送られるわけです。

フレキシビリティーは絶対武器になるので、戦略としては「私はどういう場面でも柔軟に対応できます」って言い切っちゃってもいいと思う。

絞りすぎないってことですか?

バスケの例えで言えばポジションはどこでもやるし、なんならモップがけも得意ですよって言う。

だってバスケってモップがけも非常に重要なタスクの一つなので、それやりますって言ったほうが「こいつ頼りになるな」ってなるわけですよ。

注目されないことであっても特化できる場所を見つけていくということですか?

それでもいい。

バスケっていうものをあえて雑に捉えると、5対5で輪っかの中にボールを放り込む球技です。

だけど、解像度をグッと上げていくと、ゲームが始まるまでにやらなきゃいけないタスクがいっぱいある。

例えば体育館を予約する、ゴールを出す、ボールの空気を入れる。

重要なのは、解像度を上げていきながら響きそうなストーリーを作れるかどうかってことです。

徹底的に調べたうえで例えば「会社のこういう部署に興味があるんです」って言ったほうがいいってことですか?

そう決めるのもいいっていうことです。

ただ「こうしたほうがいいですか」っていうのは僕が決めることではない。

これは戦略の一つです。

戦略・・・。

そういうアプローチでいってみようかなって自分で決める話で、これでOKってことは絶対ない。

面接官だって人間で、二日酔いで話が耳に全く入ってないかもしれないし、不確実でコントロールできない。

だから自分がコントロールできるところに集中する、もうこれだけです。

「私はこう考える」という思考を

面接で想定外の質問が来たときは?

正しいことを言わなきゃいけないって思った瞬間に、すごく大変になるんですよ。

たしかに。相手にあわせてこう答えたほうがいいだろうなって探してしまって。

「私はこう考える」って答えると決めれば良いんです。

ふだんから「私はこう考える、こういうふうにしたいんだ」ってさっと考えられる状態にしておくのがすごく重要です。

面接では「私はあなたの会社の、ここに書かれているものに対してめっちゃコミットできる、私はこのマインドセットであなたの会社に入って活躍をしたい」

これを言ってほしいんです。

こういう時にこういう行動をする人間ですって、ユニークなところをしっかり伝えればいいっていうことですか?

“ユニーク”っておっしゃいましたが、これも注意した方がいいポイントです。

ユニークであろうとしたとき、他者の存在を意識しすぎるのはあまり意味がありません。

そもそも全員がユニークで唯一の存在っていうのは最初から決まっている話なんですよ。

当たり前の話ですね。

だから「私はこう思います。こんな人生歩んでいます。こういう感受性を持っています。こういう失敗ぶっこいたけれども、こうやって私は生き残ってここにいるんです」っていうほうがよっぽどいい。

ぱっと考えて思いつかないとか、そんなにユニークなことやってないなって思う人もいるかもしれませんが、それは思考の解像度が粗すぎるだけかもしれません。

ちなみに「私はこう考える」って、入社した後にも自分を幸せにする唯一の方法です。

そうなんですか?

「私はこう考える」っていう意思を持っていないと、常に組織の論理だけで時間を過ごすことになります。

なので自分の考えを常に持って、それに照らし合わせて働くことが後悔しない社会人生活を送る秘けつです。

もちろん自分の考えがなかなか通用しない場面もありますが「ここまでなら許容範囲だな」と折り合いをつけていくのが社会人生活です。

なるほど。確かにそうなのかもしれません。

以前は「最初の3年はとにかく滅私奉公」みたいな価値観がありましたが今の世の中にはマッチしていないと思います。

でもいまだにそのような古い価値観を押し付けてくる会社が存在しているのも事実ですよね。

面接の段階でそれを感じ取って、自分の中で違和感を持ったならその会社に入ることは避けた方がいいかもしれません

自分に対する感度を上げる

なりたい自分の見つけ方ってありますか。

「これでばっちり!」という方法論はないと思っています。

なぜかというと、自分自身のありたい姿とかなりたいものの見つけ方は人それぞれ全く違うからです。

「効率よく手に入れよう」と考える前に、とにかく自分自身について徹底的に思考する方が大事ですね。

じゃあ、インターネットで検索するのも・・・

何をどう検索するのかによりますね。

特に「正解がどこかにあるかも」と思って検索するのはちょっと違うかなって思います。

ヒントは得られるかもしれないけれど、やり方を一生懸命考えるよりも、とにかく自分に対する感度を上げること。

自分はなんでこれにワクワクするんだとか、なんであの人と一緒にいるとハッピーなんだろうというのを言語化する、こっちのほうが重要です。

どう感じたかっていうのは常に言語化されているんですか?

そう、僕は自分の身に起きたこと、自分が目にした記事なんかをネタにして話をしているので、自分の思考を言語化することは完全に習慣になっています。

僕らでも誰かに話すことは大事になってくるんですか。

話をするっていうのもいいし、できれば文字とか記録にして残すと見直せるのでいい。

どう感じたかだけを書いておけばいいんじゃないかと思います。

ありとあらゆる出来事を面白がる

就活生へのメッセージをお願いします。

「全ての出来事を面白がろう」

繰り返し言うけど就活って試験じゃなくお見合いなので、だめだったとしてもそれは縁がなかったってことだけ。

それも含めて面白がればいい。

面白がる・・・。

「うわー、あの面接官の髪型が面白かったー」かもしれないし「あの会社、本当にきれいだった」かもしれない。

「あのイスはなんであんなに座りづらかったんだろう」でも、なんでもいい。

一個一個の出来事に対して解像度を上げて面白がるっていうのはすごく大事ですね。

さらにそれを言語化していけばストーリーになる。

人生は壮大なネタ作りですから、就活は一回しかないネタ作りができる絶好のチャンスと捉えてほしいです。

なるほど。

考えが変わります。

過去の話ではなく、未来の話に重点を置く。そのための解像度が高い自己分析と失敗体験の言語化。そしていつも主語を自分に。澤さんが語る就活時のポイントです。次回は社会人のプレゼンのポイントについて伺った内容を紹介します。

撮影:梶原龍 編集:鈴木有

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