2020年12月17日
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈)
為替について、ニュースでも使われるのが「円高」「円安」ということば。結局、円高だとどうなるの?円安だとどうなるの?その影響、背景について、1から聞きました。
こちらからご覧下さい。
円高や円安になると、生活にはどう影響があるんですか。
やっぱりものの値段かな。
円高方向、例えば1ドル100円から90円に進むと、外国の1ドルのものが100円払わないと買えなかったのに、90円で買えるようになるでしょ?
はい。
例えば外国産のワインとか輸入の衣料品。
そういうものが理屈の上では安く買えるようになります。
円高がすごく進むときには、「円高のメリットを消費者に還元します」って、デパートで安売りしたりする。
そうですね。
逆に、円安に進んで、1ドル100円だったのが、110円になったとすると、今まで100円で買えてたものが110円払わないと買えなくなる。
すると、輸入するバイヤーの人たちは、値上げをしないともうけが減ってしまうじゃないですか。
だから国内の売り値は、値上がりするものが多くなる。
円安が進んでいくと、輸入に頼る食品、たとえば小麦や大豆が値上がりする。
船の燃料になる重油が値上がりしたから、水産加工品を値上げしますというようなことも起きますね。
為替相場が動くことで仕入れ値やコストが変わるということを、日々業者さんは経験しているんです。
まず影響を受けるのは企業なんですか。
まあそうかな。
例えば円安が進んでどんどん仕入れ値が上がっちゃう時、しばらくは企業も自分たちの利益をちょっとがまんして、価格を据え置くことが多い。
がまんできなくなって小売価格を引き上げるとなると、消費者に影響します。
あと、石油やガスはほとんど海外からの輸入に頼ってますよね。
円安に振れると値上がりする。ガソリン価格や電気料金にも影響してきます。
あわせてご覧下さい。
ということは、企業にとっては円高と円安のどっちが良いってあるんですか。
円安と円高どっちがいいっていうのは一概には言えないと思います。
業種によります。
主に輸出でビジネスをしている企業だと、やっぱり円高は困る。
輸出でビジネスをしている企業ですか。
自動車とか電機メーカーとか、日本の代表的な輸出産業は一般的には厳しくなります。
同僚が調べてくれたデータでいうと、例えば1ドル100円が99円に1円変わるだけで1年間の営業利益が400億円とか200億円とか減るという企業もあります。
そうなんですね。
もちろん企業だってそれは分かってるから、損するリスクを避けるように工夫はしています。
典型的な対策は、現地で仕入れて現地で作ること。
要するにドルで仕入れてドルで売れば関係ないってことで、自動車とか輸出関係の企業は海外に工場を建ててきた。
ただ、日本は戦後、海外にモノを売って成長してきた国ではあるので、円高を恐れるマインドは強いと思います。
何円から上が円高とか、円安とか、基準はあるんですか?
うーん・・・難しいよね。ないというか、あるというか・・・。
企業によってメリットデメリット、損益分岐点が違うから。
ひとつの参考としては、日銀がいろんな企業に「為替相場、いくらくらいを想定して事業を組んでいますか?」という調査しています。
最近だと平均1ドル=107円くらいを想定して事業計画を組んでいるそうです。
だからその意味で言うと、今は少し円高なのかな?企業からすると。
為替相場は日々変動するけど、企業の想定の範囲内に収まってればいいんだと思うんです。
円高、円安の範囲ですね。
想定した範囲ならばもうけがでるように、みんないろんな⼿⽴てを考えているわけです。
それが急に上がったり下がったりすると計画が大きく狂う。
だから企業は過度な変動を特に気にしていると思います。
輸出企業の場合は急に上がったら良くないっていうことですね。
その円高、円安の変動って何が原因で変わってくるんですか?
一義的には、円がほしい人とドルが欲しい人の力関係で変わってきます。
円がほしい人ってどういう人ですか?
例えば海外ですごく頑張ってドルを稼いだ日本企業の場合。
日本の従業員に給料を、投資家には配当金を払わなければならないけれど、そのためには円に換えないといけない。
そういう時にドルを売って円を買うから、ちょっと円高要因になります。
あとは、日本の景気がよさそうで日本企業の調子もよさそうだっていう時に、外国人投資家が「じゃあ日本の株を買おうかな」って思ったとします。
その時もドルやユーロを売って円に換えて、株に投資することになる。
それも円高の要因になる。
はい。
円の需要が高くなると、それだけ円の価値がどんどん上がって、円高になるということですか。
そういうことです。
円を必要とする企業が買うことで相場が動くこともあるけれども。
「日本の景気が良さそうだから買っとこうか」みたいな思惑で動くこともあります。
なるほど!
今のは円高になる要因でしたが、円安になる要因は何がありますか。
景気が悪くなった時とかですか。
そうですね、海外の投資家などが、とりあえず日本からお金を引き揚げたほうがいいかなって思った時。
資金を海外に移す際にドルとかユーロの資産に換えることになるので、日本円は売られます。
すると、円安になる。
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日本は災害が多いじゃないですか、そうすると、災害の度に円は売られてしまうんですか。
一般的にはそうなんだけど、それが難しくて・・・うまく説明できないんですよ。
例えば東日本大震災がありましたよね。
あの時って逆に円がすごく値上がりしたんです。
えっ!?
僕はその時マーケットの取材を担当していたのですが、「何でこんな日本人が困ってる時に円高になっちゃうんだ」ってすごく思ったんです。
けど、そこにはいろんな思惑があって、当時よく言われたのは日本の企業が外国にいろいろ投資をしていて、ドルとかユーロで資産を持っていたと。
はい。
だけど、日本国内で甚大な被害が起きたから、復興のためにお金が必要になるでしょ。
だったら、日本企業が外国にある資産を売って、日本円に換えて、復興に使うんじゃないか。
このあとすごい円買いが起きて円高になるぞって思った投資家が、先回りしていっせいに円を買っちゃったという解説です。
「安いうちに買って、円が必要な人に⾼く売りつけよう」みたいなことも起きたりする。
そういうときに円高になられちゃうと困りますよね。
日本はこれから復興して稼いでいかなきゃいけなくて、輸出しないといけないという時だったので、円高は困るという人たちはけっこう多かったと思います。
投資家の人に何というか、情はないんですか?
うーん、まあそれだけが理由じゃないとは思います。
専門的になっちゃうんですけど、実は当時、逆にアメリカもリーマンショックですごく景気が傷んでた直後で、ようやく立ち直り始めていたころでした。
なんとか景気を良くしようと、アメリカがドル安になりやすい政策を続けていたので、もともと円高傾向にはあったんです。
それもあわさって一気に円高になったという事情もある。
なので、為替はすごく難しい。
そうなんですね。
株は買うか売るかっていう、わりと一直線の話なんだけれども、為替は例えばドルと円の関係で決まるので、日本の事情で動く時もあるけれどアメリカの事情で動くこともある。
むしろ経済の規模では圧倒的にアメリカのほうが大きいので、アメリカの事情で円とドルの関係が動くことのほうが多いんじゃないかという気もします。
結局、シーソーゲームみたいな形なんですよ。
いつも相対的な関係で、そこが難しいところです。
次回は、外国為替の裏にある国と国の思惑について、さらに詳しく聞いていきます。
編集:加藤陽平
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