目指せ!時事問題マスター

1からわかる!副業(3)副業が自分のキャリアを守るってどういうこと?

2021年03月16日
(聞き手:勝島杏奈 佐々木快)

  • お問い合わせ

新型コロナウイルスの影響もあって、少しでも収入を増やそうと副業をする人がいま増えています。副業が広まると、何が変わるの?私たちの働き方にも影響があるの?気になるギモンを1から聞きました。

副業が日本人の働き方を変える?

学生
佐々木

副業を解禁する企業が少しずつ増えていますが、今後さらに広がった場合、私たちにはどんな影響があるんですか。

今、日本の雇用のあり方そのものが変わりつつあるという話はこれまでにもしたよね。

竹田
解説委員

副業が広がっていくと、日本人の働き方が、さらに大きく変わるかもしれない。

竹田忠解説委員は経済、雇用、社会保障が専門。経済部記者時代には通産省(当時)や商社などを担当。日本だけでなく、世界10か国以上の雇用現場を取材した経験も。

学生
勝島

日本型雇用というのは、新卒一括採用、年功序列賃金、終身雇用が大きな特徴なんですよね。

そして戦後の高度経済成長は、この仕組みのおかげで成功したというお話でした。

その通り。日本型雇用を簡単にいうと、人材を長期に囲い込んで育てる仕組み。高度経済成長の頃は、皆が何を目指すのか目標がハッキリしていたので、うまくいった。

でも今はグローバル化と急激なデジタル化で、これまでの方法では必要な人材を育てることが難しくなっている。そこで導入する動きが出てきたのが、ジョブ型雇用

ジョブ型雇用って何ですか?

簡単に言うと、企業には最初からジョブ、つまり何の仕事をするのかが、ポストとして細かく配置されていて、そこに後からヒトをはりつけるというやり方。欧⽶では、ジョブ型雇⽤が当たり前なんです。

これに対して、日本型はメンバーシップ型の雇用といわれています。

会社という共同体の一員、メンバーになることだけが決まっていて、何の仕事をするかは決まっていない。後から配置転換で営業とか、企画とかいろんな仕事を任されるのが普通です。

つまり「就職」と言えるのは本当はジョブ型の話で、日本のメンバーシップ型は「就社」という言葉がふさわしい。

例えば、メンバーシップ型の日本の職場では、一人ひとりの仕事の内容や範囲が明確に区切られていないので、仕事が早く終わっても課長から「隣の人の仕事も手伝ってあげて」という指示が出てくる。

当たり前のような気がしますが…

でもジョブ型雇⽤の世界では、基本的にありえない。それは別のポストの人の仕事を奪うことになるという考え方になるんです。

それと、メンバーシップ型の雇⽤は、正社員を中心にした考え方。今は低成長の中で多くの企業が正社員のピラミッドをぎゅーっと⼩さくしていて、外側にはじき出された仕事が⾮正規雇⽤に任されている。

だとすると、非正規の人たちの働き方は何型になるんですか?

日本の非正規の人たちの多くは、年功賃金も長期雇用でもない。だけどやる仕事だけは決められている。だからジョブ型です。

メンバーシップ型で働く正社員集団と、その正社員集団の利益を守るために人件費抑制の目的で増やされたジョブ型非正規の人たちとの雇用格差が深刻となっているわけです。

これから社会に出る私たち若い世代にとっては切実な問題ですね。

でもそうして守ってきたメンバーシップ型の働き方が今度は在宅勤務やテレワークには向いていないということで正社員についてもジョブ型の働き方が注目されるようになってきた

ジョブ型雇用

どこで何の仕事をするのかが雇用契約やジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で最初から決まっている働き方。欧米では一般的な仕組みで、転勤や異動は、会社が勤務地や仕事内容を途中で変更することになるため基本的に認められない。日本では⽇⽴製作所や資⽣堂、KDDIなど大企業を中心に導⼊の表明・実施が相次いでいるが、完全なジョブ型ではなく、仕事の限定や成果主義的な賃金など、一部分の導入にとどまっている例も多い。経団連は、春闘などでジョブ型の検討が必要だと訴えているが、連合は、人件費の抑制や人材育成の縮小につながりかねないとして慎重な議論を求めている

新型コロナがジョブ型雇用を後押しした面もあるということですか?

そう、そしてジョブ型雇用と副業はとても相性がいい

どちらも重要なのはジョブで、一人ひとりの仕事が明確なんです。だから在宅勤務にも向いている

なるほど。

だから、企業がジョブ型雇用を導入すればするほど、副業人材も活躍しやすくなる。

そして副業人材が活躍するほど、ジョブ型雇用の必要性も高まって、日本型雇用が少しずつ変わっていくかもしれない。

学生も、よく知っておいたほうがいいですね。

本業で仕事している人の最大のライバルは、副業で来ている⼈ということが増えるかもしれない。

副業の人のほうが、よっぽどセンスがいい、仕事が早いとなったら、本業の人の仕事が奪われちゃうかもしれない。

企業の狙い

大変な時代がくるかもしれないんですね。

そうです。でも、この話には注意する必要もあります。

企業にしてみたら、⼈材を一から育てるよりも、外で高いノウハウを持っている⼈間に来てもらえば大助かり、ということになる。

正社員を長期に抱え込む必要はなくなり、要所、要所で必要な人材に副業で来てもらえば短期的には大幅なコストダウンが図れるかもしれない。

会社側のメリットが大きいんですね。

でも、逆の面もある。企業の自前の人材育成がおろそかになって長期的には企業の競争力は低下するかもしれない。

それに自社の社員だって副業で他社のほうが働きやすいと思ったら、よそに移っていきますよね。つまり副業は企業にとっての選択肢を増やすと同時に社員が企業を選ぶ選択肢も増やすことになる。

そうか。企業は⼤事な⼈材が流出しないよう、職場を良くしないといけないと。

副業でキャリアを作る

そうなんです。それからもう1つ、副業の意味が重要になるのが「人生100年時代」だからです。

人生100年、よく聞きますよね。

働く期間はどんどん延びて、今や企業は社員が70歳まで働けるよう支援することが求められる時代なんです。

70歳、働けるかな…

こうなると1つの会社で70歳までずっと働くというのは、なかなか難しいよね。

この先「自分はまだ働ける、頑張れるぞ」という40代、50代のときに自分を高く売って、より条件のよい会社に転職することも必要かもしれない。

そのためには、今のうちに副業をしながら自分のスキルを磨く、人脈を広げる。第2、第3の人生を考える地ならし、助走期間としても副業は役に立つと思います。

でも実際に、この先、会社に入って、働いて結婚して子育てをしてとなると、忙しくて副業までやる余裕がなさそうな気もします。

私は「副業すべきだ!」なんて⾔うつもりは全くありません。ただ、これから社会に出る皆さんに、イザという時に備えて⼼構えを持っておいてほしいと言っているだけです。

要するに本当に幸せなのは、意欲を持って、自分の得意な仕事を本業でできること

「本業が面白い!」「やりがいもある」「ちゃんと評価もされている」「高い給料ももらえている」という人は、副業なんて考える必要はないんです。

本業を突き進めばいいんです。だけど残念ながらそういう人って、そんなに多くない。

うーん…結構少ないかもしれません。

やりたい仕事ができない、評価されない…と悩んでいるなら、別にブラック企業のようなところに、しがみついている必要はないんです。

サラリーマンのことを自嘲的に会社の家畜「社畜」などという呼び方がありますが、労働者は決して会社の奴隷ではない

 

確かにそうですね。

ただいきなり転職、というのはリスクがあるので、まず副業で外の空気を吸ってみて、⾃分にどれくらい価値があるのか試してみる

自分にはやりたい仕事があるのに、会社は、なかなかそれを認めてくれない。

だったら副業でやってみて、どれだけ通用するか試してみる。それで本当にできそうだと思ったら、それから転職したり起業したりするのもありだしね。

自分の可能性を探る手法として副業が活用できると?

そう。これから社会に出る皆さんにぜひ伝えたいのは、副業で自分のキャリアを作る、守るということです。

大事なのは、⾃分のキャリアを会社任せにしないということ。以前、この就活ゼミでも解説した「キャリア権」が重要なんです。

明日の自分のためにキャリアを磨いておく、その努力をするために副業は重要な手段となるはずです

就職してからも、自分の働き方を常に考えてみようと思います。

勉強になりました。

あわせてこちらもご覧ください。

(1)なぜ今、副業?

(2)副業して大丈夫?

 

編集 栗田真由子 カメラ担当 伊藤七海

詳しく知りたいテーマを募集

詳しく知りたいテーマを募集

面接・試験対策に役立つ時事問題マスター