目指せ!時事問題マスター

1からわかる!「SDGs」

2019年05月10日
(聞き手:鈴木マクシミリアン貴大 伊藤七海)

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いま、企業経営で存在感が高まっている「SDGs」と「ESG」。面接やグループ討議でも話題になるかもしれません。社会に出ても、知らないままでは済まされない「SDGs」と「ESG」のうち、まずは「SDGs」について、初心者向けに知っておくべきポイントを、学生リポーターが取材しました。

訪ねたのは、みずほ情報総研。「SDGsとESG」とひとくくりに耳にすることが多かったのですが・・・似ているようで違う、関連もあるけれどもそれぞれ専門の担当者がいるテーマなのだそうで、お二人のアナリストが対応してくれました。

「SDGs」って、何のこと?

SDGsは「Sustainable Development Goals」を略したもので、「エスディージーズ」と読みます。日本語にすると「持続可能な開発目標」です。

SDGsについて教えてくれたのは、山本麻紗子さん。入社前はアフリカのナイジェリアで5年間、地域の発展に関する事業に携わっていたそうです。

学生
鈴木

いろいろな企業が「SDGsは大事なニュースだ」というのですが、SDGsって、そもそも何ですか?

SDGsとは、2015年の国連サミットで、世界で17の目標に向かって頑張っていきましょうと発表されたものなんです。

山本さん

2030年までに解決を目指す、世界共通の目標。1の「貧困をなくそう」、2の「飢餓をゼロに」といった目標だけでなく、8の「働きがいも経済成長も」には雇用や生産性の問題が、11の「住み続けられるまちづくりを」には環境問題が含まれていたりと、先進国にも関係が深いものとなっている。

実は前身となっている目標がありまして、それがMDGs(ミレニアム開発目標)です。

これはどちらかというと貧困削減など開発途上国向けの目標で、開発援助の性格がすごく強かったので、日本の企業や経済界はそこまで注目していなかったんです。

ただ、貧困削減など開発途上国の問題だけをやっていてはダメなんじゃないかという問題意識があって、日本や先進国でも、高齢化や働き方や女性の社会進出などたくさんの課題がありますよね。そういったところも目標に盛り込もうと。

それでSDGsは、途上国だけでなく先進国も、全世界で社会課題を解決しましょうというかなり大きい包括的な目標になりました。

なぜ広まってきたの?

SDGsになって、開発途上国から全世界の目標に広がったんですね。

2015年に発表された当時は、日本の企業や経済界もそこまで注目はしていなかったんです。

でもその後、世界各国の政治・経済界のリーダーが意見を交わす「ダボス会議」という大きな会議があったんですよ。

その中で、SDGsを達成しようと取り組むことによって約12兆ドルのビジネス価値と3億8,000万人の雇用が創出されるという推計が発表されて、かなり経済界が注目する契機になりました。

日本ではMDGsの時は外務省が中心だったのですが、SDGsは全省庁が達成を目標にしています。企業にも「政府がやるなら自分たちもやらなければ」という機運がだんだん高まり、2017年、2018年くらいから、いろいろな企業が社の活動とSDGsを結びつけるようになってきました。

学生
伊藤

きっかけはダボス会議で、SDGsに取り組むことはビジネスでも価値があるということが分かってきたということですか?

SDGsは、そもそも理想の社会ってこんな社会ですよね、それを実現するために何をしなければいけないか考えましょう、解決策をやりましょうというもの。

結構、理想が高いですよね、SDGs。

そのためにも、たくさんやらなきゃいけないことがあって、お金も必要になってくるので、各国の政府だけでは足りないんですよ。

なのでもっと民間企業がこれをビジネスチャンスと捉えてどんどん投資を促進させていきましょう、経済界全体で盛り上がっていきましょうと。SDGsは政府だけでなく企業も市民も、全員で取り組もうという位置づけになっています。

企業には浸透しているの?

SDGsは日本でどれくらい浸透しているんですか?

日本でも大企業ではかなり認知度が高まってきています。

ただ、中小企業にはなかなか浸透していなくて。

2018年12月に発表されたアンケート調査の結果をみると、実は80%くらいの中小企業が「SDGsについて全く知らない」との回答でした。日本は90%が中小企業なので、そこへの浸透率を高めましょう、と。

大企業と中小企業の差はどこから生まれるのでしょうか?

やはり、企業の体力、というところはあるんですけど。

SDGsって「全世界が取り組む共通言語」としての意味合いがあるんですね。大企業は世界中でビジネス展開しているなかで、SDGsに対応していない、取り組んでいないというのは企業価値的にはマイナスになるんですよ。

特に、直接消費者に届くものを作っている製造業では、消費者の意識も非常に高いので、SDGsといった社会的な責任に対応していなのはあまりよろしくない。

それで大企業はアクションが早い、というのがあります。

SDGsに取り組んでいないと、企業としてマイナスになってしまうんですね。

中小企業はやはり、資金も人材も限られますよね。新たに情報収集したり事業計画に取り組んだりするのは、時間や資金などの面で難しいと思います。ただ、やらなきゃいけないという意識は、みなさん持っていますね。

あと、国民の中の認識もまだそこまで高いとは言えなくて・・・。みなさん、生活の中で聞いたことはありますか?

最近は学生のイベントで、「SDGsを知ろう」というものを目にするようになったというイメージがあります。

SDGsを小学校の教科書に載せるという話もありまして、これからどんどん認知度は高まってくると思います。

教科書に載ったりして私たちが広くSDGsを知ることが、何かメリットとか利益につながるんですか?

SDGsの認知度が高まってくると、企業が「うちの製品はSDGsではこういうことに貢献しています」とアピールすれば、じゃあそういうものを買おうかな、となり、新しいビジネスチャンスにつながることもあります。

あとはみなさんたち大学生がSDGsに対する関心が非常に高かったりすると、就職する企業を選ぶときの基準として、「この会社は従業員の働き方に気を配っている」とか「社会的課題を解決するためにこんな事業をしている」といった点を重視するかもしれない。

企業としては、SDGsに取り組むことで、優秀な人材、意識の高い人材を集められるというメリットもあります。

17個の目標を見ると、ざっくりしているというイメージを受けたのですが、達成されたかどうかの明確な基準はあるのでしょうか?

SDGsは軍事以外のすべてのことを包括するというものすごく広い目標なんですけど、国によって事情が違うじゃないですか。なのでそれぞれの国で、「自分の国ではこれを達成することで貧困の削減に到達しました」といった達成目標を設定しているんです。

2番目の「飢餓をゼロに」といわれても、日本で? というイメージがあると思うんですけど、実はここには、AIやIoT(※)を使ったスマート農業(※)をする、というのも含まれるんですね。

※IoT・・・あらゆるモノをインターネットで結ぶ技術。生産性の向上や省力化のほか、ネット上でやりとりされるデータからこれまでにないサービスが生み出されることも期待されている。

※スマート農業・・・ロボット技術や情報通信技術を活用して、省力化や高品質生産を実現する新たな農業のこと。担い手の高齢化や労働力不足が深刻な課題となっているなか、スマート農業を活用することで、農作業の省力・軽労化や新規就農者の確保、栽培技術力の継承などが期待されている。

トラクターなどの農作機器を自動操縦する技術の開発も進められている

日本ではAIやIoTといった技術を使った社会的課題の解決が、目標にかなり盛り込まれています。これは、アフリカなどの途上国とは少し違った達成目標ですね。

現在、日本で「これは達成した!」というものはあるんですか?

海外の民間組織が、すべての国連加盟国が17の目標をそれぞれどれくらい達成しているのかを毎年示しているんですけど、日本で唯一達成したといわれているのが、4番目の「質の高い教育をみんなに」ですね。あとはすべて、未達成です。

1の「貧困をなくそう」も未達成なんですか?

そうですね、貧困も未達成ですね。

17の目標にはストーリーがあった!

SDGsの17の目標、ぱっと見るとたくさんあって「えっ、全部ですか?」ってなると思うんですけど、ストーリーのようになっているんですよ。

ストーリーですか?

例えば、1~6の、貧困をなくします、ごはんを食べられます、教育が受けられます、水がありますというのは、「社会の基盤を作る」というプロセスなんですね。

その次の7~12、エネルギーや働き方やまちづくり、ものづくりの在り方って、いわば「経済の基盤」ですよね。

確かに。

1~6の目標で、まずは住みやすい社会を作ろう。次に7~12の目標で、持続可能な経済圏を作ろう。その次に13~15の目標は、われわれを取り巻く環境を守ろうよ、と。

この15までの目標を達成するために必要なのが、16の平和を維持すること。そして、17のお互いのパートナーシップなんですよね。企業や行政や支援団体などみんなのパートナーシップで解決しましょうと。社会を作り、経済を作り、さらに環境を守るためにお互いに協力しましょう、という流れになっています。

なるほど、16の平和と17のパートナーシップは、15までの目標を達成するために必要だという位置づけなんですね。

日本など先進国は、17ある目標のうち後半の、どう持続可能な生活や経済を維持するか、環境を守っていくかということにかなり重点を置いていることが多いんです。

アフリカなどの国はまだまだ社会的な基盤の方が足りていないので、目標全部を見ないといけないんですけど、この目標を特に重点的にというのは国や地域によって異なりますね。

SDGsを達成するために今後どう取り組んでいくか、という議論はされているのですか?

SDGsの取り組みにもステップがあります。

まずは「知りましょう」。SDGsって何ですか、何をすればいいんですかというのを知る。

まずは知ることからですね。

それから、自分たちが今やっていることがSDGsにどう貢献するのか。企業だったら、自社の製品やサービスがどう貢献するかというのを考えるステップに移ります。

さらにそれだけではなくて、「理想的な社会をつくるために、われわれの会社は何をすればいいのだろう」というのを企業の戦略目標などの中に落とし込み、取り組んでいくというステップがあります。

でも、それで終わるんじゃないんですね。SDGsで重要なのは、それをみんなに知らしめること。「私たちはこんなことをやっています」と公表することで、パートナーシップを呼び込んだり、周囲を啓発していくということも含まれます。

ことしはG20が日本で開催されますし、オリンピックや万博などかなり世界から注目されるイベントがこれから日本でありますよね。そういった場で日本の企業や市民団体、行政はどんどん発信して、一緒に連携しましょうという動きになってきています。

学生には、SDGsについてこの程度までは知っておいてほしいなというのはありますか?

17の目標にはどんなことがあるのかということと…。

そうですね、知ることの上限ってないんですけど(笑)

もちろん、知れば知るほどいいとは思うんですけど(笑)

できれば身近な問題として考えてほしいですね。

国連が定めたというと、すごく高尚な問題と受け止めがちだと思いますが、これは身近な問題だと思うんですよね。

自分とは関わりのない、遠い話だと思っていました。

自分たちが就職するときに、どういう働き方をしたいとか、女性が活躍できる場所なのかとか。SDGsはすごく自分から離れた目標ではなくて、自分たちの中にある目標だってことを念頭に置いて、生活の中で「あ、これってSDGsじゃないかな」と考えられるような視野を持ってもらえるとありがたいです。

ESG編はこちらからごらんください。

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