2020年10月23日
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈)
「それでは、株と為替の値動きです」。お昼のニュースの最後の定番ですよね。
時に、「株価が暴落」となると、大きなニュースになります。でも、大切なお金の話と思いながら、どこか身近に感じられない・・・。私たちはいったいどこまで知ればいいのでしょうか?まずは株について1から聞いてきました。
よろしくお願いします。
さっそくですが、株価ってなんで毎日ニュースに取り上げられているんでしょうか?
まさに景気を映す鏡だからじゃないかな。
1日の動きじゃわからないけど、それを継続的に伝えることで景気がどうなっているのか。
株価が発するシグナルは何かというのを読みとこうと思って、日々数字を追いかけています。
布施谷博人 デスク
1993年NHK入局。経済部の記者として金融の現場や財務省を取材。アメリカ・ワシントンにも駐在し、TPPやアメリカの金融政策を取材した。現在は経済部デスクとして取材指揮にあたり、7月まで金融業界を担当した。
例えばどういう業界の人は株価をよく見ているとか、傾向ってありますか?
うーん。気にしていない人って少ないと思うよ
社会人は皆さん気にしてるんですか?
いわゆる上場企業で働いているんだったら、自分の会社の株価は気にはなると思います。
株価というか、株価を通じて見える景気を気にしないといけないというか。
株価を通して見える景気・・・
例えばデパートで働いている人なら、「株価がすごく上がると株でもうかった人たちが、高価なものを買ってくれるかもしれない」って思ったりします。
やっぱり株価が良いか悪いかっていうのは重要で無縁じゃない人たちってあまりいないと思います。
学生も株価の情報って知っておいたほうがいいですか。
別に投資するわけじゃないなら、すごく細かい事まで知らなくてもいいと思います。
けれど興味のある業界や会社があれば、気にしたほうがいいです。
ちなみに、上場企業って公開企業だから、いろいろなことを情報公開しなきゃいけないんです。
はい。
上場企業
株式を証券取引所に上場して売買できる状態にある企業。日本では東京証券取引所が主要な取引所。上場することで企業は資金を調達できるほか、上場には審査があるため信用も得られる。一方で四半期ごとの決算発表など、情報開示も義務づけられている。
新製品の発表や業績だけでなく、不祥事も発表する必要があります。
日々いろいろな情報を投資家に向けて発表して、それによって株価が上がったり下がったりするわけです。
企業のアクションと株価を見ていると何が重要な情報なのかとか、何を知っておいたほうがいいのかが分かるので、勉強になると思います。
なるほど、株価を目安にするんですね。
ただ、株価が上がっているからいい、下がっているからダメということではなくて、なんでその数字になるのかという背景を見ていくと、発見や気づきみたいなものがあるかもしれないね。
世界経済がどうなっているのかとか、どういうつながりがあるのか、大くくりで経済の流れが株価を通じて見えてくると思います。
なるほど。
例えばコロナの感染拡大で、日経平均株価は当初すごく下がっちゃったんです。
自分の行きたい会社の株価はどうなっているのかなって、関心を持ってみたりすると。
「あれ、コロナなのに意外に強いじゃん」ということが分かるかもしれない。
そういう見方もあるんですね。
逆に、日経平均株価以上に急落してるとしたら、何でだろうってよく調べてみる。
「この会社ってアメリカでの事業がすごく大きい。アメリカで感染が拡大しているから、売り上げが落ちると株主に思われてるんだ」ということが分かるかもしれません。
ちなみに、社会に出るうえで株の知識はどれくらい必要ですか?
あったほうがいいと思いますよ。ビジネスをしていくうえでは基礎知識のひとつ。
それに、20歳から国民年金の掛け金を払ってるじゃないですか。
関係しているんですか?
実は国民年金って株にも投資しているんです。
国民年金の運用
20歳から全員が加入する国民年金。私たちが納めた保険料のうち、一部をGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用している。資産の半分は国内外の株式に投資している。
えっ、そうなんですか?
だから、自分たちに関係ない!ってことはないんだ。
ほかにも就職すると、確定拠出年金のような仕組みがある企業の場合は、運用先を選んで将来の年金を積み立てを始めたりします。
自分たちの将来のための資金を積み立てていかなきゃいけないから、株の知識はあったほうがいいと思います。
そうすると、社会人の皆さんはそれをどこで学んでるんですか?
学生の時は知識ないのに・・・。
そうだよね。そこが実は日本の課題でもあって。
子どもたちも社会人も含めて、金融リテラシーが低いんじゃないかと国際的にも言われているんです。
海外だと、もうちょっと子どものころからお金の運用のしかたを学ぶ仕組みもあったりします。
そうなんですね。
世界的に見ても日本では、お金の振り向け先として個人レベルで株関係を選ぶケースは少ない。
そこをだんだん高めていったほうがいいのではないかと、ずっと言われているんです。
個人がもうちょっと株にお金を振り向けるようになると、企業はもっと資金を集めやすくなります。
たしかに。
そうすると、より経済のダイナミックさが増していくのではないかと言われてるんです。
最近はおつりを投資するような少額投資のサービスもあります。
そういう意味で言うと、昔と比べるといろいろなところで投資や運用というワードを目にする機会が増えてきてると思います。
だから僕らが若かったころより、はるかに皆さんのほうが・・・
環境としては整ってる。
そう。何よりも自分の資産をどのように運用していくかっていうことは重要でしょ。
将来、受け取る年金にも関わってくるので、それこそ自分ごとですから。
そう考えると、今から知っておいたほうがいいって思えてきました。
次回は、そもそも企業はなぜ株を発行するのか?上場企業と上場していない企業は何が違うのか?についてお伝えします。「1からわかる!株・為替(2)そもそも株の仕組みって?」は、こちらです。
編集:加藤陽平
あわせてごらんください
時事問題がわかる!
目指せ!時事問題マスター 1からわかる!株・為替(2)そもそも株の仕組みって?
2020年10月30日
時事問題がわかる!
目指せ!時事問題マスター 1からわかる!株・為替(3)株価の値上がり・値下がりは何を意味する?
2020年11月06日
時事問題がわかる!
目指せ!時事問題マスター 1からわかる!株・為替(4)そもそも為替って? 円高・円安って何?
2020年12月10日
時事問題がわかる!
目指せ!時事問題マスター 1からわかる!株・為替(5)円高・円安、影響を受ける企業は?
2020年12月17日
時事問題がわかる!
目指せ!時事問題マスター 1からわかる!株・為替(6)為替から見える世界の経済と政治
2020年12月25日
先輩のニュース活用術
教えて先輩!ヘッドハンター中田莉沙さん 転職市場で求められる人材ってどんな人?
2020年07月31日