2020年01月24日
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈 西澤沙奈)
景気が良いとか、悪いとか。学生にとっては、身近には感じにくいのが現実です。バブル景気とリーマンショックを例に、好景気で何が起きたのか、不景気だとどうなるのか、解説します。
私がNHKに入ったのは1993年です。
1993年ってどういう年かっていうと、バブルって聞いたことありますよね。
はい。
あとで説明しますけど、バブル景気がちょうど崩壊した翌年か直後ぐらいで、景気が悪くなり始めるころだった。
なので1993年入社って、けっこう大量採用のなごりが続いてるんですよ。
私と同じ1993年入社の記者の数ってどれぐらいだったと思います?今は60人くらいだと思うんだけど。
うーん・・・150人?
そこまではいかない(笑)
記者の数だけで90人ぐらい採用した。
でも、今よりずっと多い。
NHKだけじゃなくて、ほかの企業も結構大量採用で。
だから今49歳なんですけど、同期はけっこう多い。
そういう時代に会社に入りました。
そんなバブル景気の話をしましょう。
バブル景気(1986~91年)
「高度経済成長期」以来の好景気。物価が安定していた一方、地価と株価が高騰した。日経平均株価は1989年12月に史上最高値となる3万8915円を記録。都心には「億ション」が登場。資産の価値が実体からかけ離れて大きくなる様が、「バブル」と表現された。
私はかろうじてバブルの雰囲気っていうのは経験したんです。
ジュリアナ東京とか聞いたことないですか?
聞いたことあるけど、ちょっと具体的には思い浮かばないです。
なんだろう・・・平野ノラさん?
バブルっていうと、よくテレビでも映されるお立ち台で女性が踊り狂っているようなやつ。
ああ、扇みたいなのを持っている。
そうそう。
で、銀座とかではタクシーにも乗れなかったんだって。お客さんが多いから、タクシーも客を選んで、乗車拒否とかあった。
今じゃ考えられない。
たくさんお金を払ってくれる人を乗せるっていうので、道に並ぶサラリーマンが一万円札を見せて、「俺こんなにお金持ってるよ」ってやっていたそう。
本当にいたんですか?
いたんです。盛ってませんよ(笑)
それほど、景気がよかった。まあ、過熱していたんだけどね。
バブル景気の原因って何だったんですか?
資産の価値がすごく上がっていったっていう事かな。
土地の値段は必ず上がるという「土地神話」ということばが流行したんだけど。
土地の値段がすごく上がって、その土地を担保にたくさんお金が借りられる。
お金借りてもあんまり損はしないから、どんどん借りてお金が回った。
なんで、バブル景気のままにはいかなかったんですか?
やっぱり、サイクルがあるんです。「景気循環」というんですけど。
ピークを過ぎて右肩下がりの時は、「後退局面」といいます。
バブルの時は、土地の値段が高くなり過ぎて、当時のサラリーマンがもらえる給料じゃ、都心に家は買えなくなった。
それはちょっと過熱しすぎているっていうことで、規制をしたんですよ、財務省が。「不動産総量規制」っていうんですけど。
不動産総量規制
1990年、旧大蔵省が金融機関に対して行った行政指導。地価の高騰を防ぐため、不動産業向けの融資の伸び率を、貸し出し全体の伸び率を下回るよう求めた。バブル崩壊の一因とされる。
その「不動産総量規制」がバブル崩壊のきっかけなんですか?
「総量規制」もひとつのきっかけになって、土地の値段が下がり始めてバブルがはじけた。
だから景気も良いサイクルが緩やかに続いている分にはいいんだけども、経済の実力以上に良くなりすぎるっていうのもだめ。
バブルの崩壊だったり不景気の時って、暮らしはどうなるんですか。
就職氷河期世代って聞いたことある?
あっ、あります。
就職氷河期世代
バブル崩壊後の1990年代中頃から2000年代初めまでに、社会に出た世代。企業の採用抑制の影響を受け、1993年から2005年まで有効求人倍率は1を下回り、「フリーター」などの非正規雇用が増加した。今の30代半ばから40代半ばの世代。
バブル経済が崩壊したあと、日本は長い不況に突入したんだけど、やっぱり不況になると企業は採用を減らす。
バブル崩壊後の景気後退局面に就職活動してた人たちって、今の30代半ばから40代半ば。そういう人が「就職氷河期世代」。
採用の数を絞ってるから、就職できない人が年間10万人くらいいた。
10万人!
そんなにいたんですね。
結局そういう人たちがどうしたかっていうと、就職できないままか、正社員を望んでいるのに「非正規」の形で就職する。
日本の雇用って、今はちょっとずつ変わりつつあるけれども、新卒一括採用が伝統で。
一度、契約社員とかの形になると、正社員を望んでいるのに、ずっとその雇用形態のまま仕事をしないといけないっていう人がたくさんいたんですよ。
そうなんですか。
たまたま景気が悪い時に就職活動の時期を迎えた。
それだけで、自分の本意ではない働き方をする人たちがたくさん出たというのが、バブル後の景気悪化の大きな特徴なんです。
あとは、リーマンショック。これは聞いたことありますよね?
はい。
リーマンショック
2008年9月、アメリカの投資銀行「リーマン・ブラザーズ」の経営破綻を発端に世界に波及した金融危機。アメリカの住宅市場の悪化による住宅ローン問題がきっかけ。世界経済が冷え込んだことで、日本にとっても輸出が鈍るなど影響が広がり、景気悪化を招いた。
世界的な金融危機が起こった2008年。そのころ日本でも景気が悪くなって。
1回内定出したんだけど、やっぱり取り消しますという「内定取り消し」。そういう人が2008年度には2000人を超えた。
リーマンショックとか就職氷河期とか、そこで影響が出た人たちって今も苦しんでいる状態なんですか?
うん。ずっとその契約社員とか、そういう雇用形態のままの人もいます。
でも、別に彼らの責任じゃないわけだから、それはいけないということで、政府が対策室をつくった。
あと宝塚市役所とか自治体も、そういう就職氷河期世代の人を対象に正職員を募集すると言ったら応募が殺到した。
政府の就職氷河期世代支援
この世代の正規雇用を3年間で30万人増やす目標。内閣官房に「就職氷河期世代支援推進室」を設定。「行動計画」では、2022年度までの3年間で650億円を超える財源を確保。人材ニーズの高い業界と連携した職業訓練や、自治体の取り組みを後押しする交付金の創設などを行う。
不景気の時に影響受けやすいのは、やっぱり雇用なんですか?
そうだね、雇用は不景気の影響を直接受けるんだよね。
企業も物が売れず自分の身を削る事になるから、リストラというふうになってしまうんですよね。
そういうサイクルに1度入ると、元に戻すのはなかなか簡単ではない。
ここまで、好景気と不景気では何が起きるのか解説しました。そもそも景気とは何か、どんなデータを見れば分かるのか。これからの景気の行方はどうなるのか。こちらの記事で解説しています。ご覧ください。
編集:加藤陽平