目指せ!時事問題マスター

1からわかる!物価高 いつまで続く?賃上げは?

2024年03月07日
(聞き手:堀祐理 吉田遥希)

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私たちの身の回りで続く、物価の上昇。あれもこれも値上げになって、もううんざり…。この状況、いったいいつまで続く?賃金の上昇は?経済分野が専門の解説委員に気になるギモンを尋ねました。

物価の上昇 いつまで?

学生

最近どの店に行っても「値段が高い」と感じます。この状況、いつまで続くんでしょうか?

そう思いますよね。まずは、現状を見てみましょう。

今井
解説委員

家庭で消費するモノやサービスの値段の動きをみる「消費者物価指数」という統計があります。

去年1年間に「物価」が上がった代表的なものがこちらです。

総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年平均」をもとに作成

いろいろなものが値上がりしています。

そうですよね。値上げは食品だけでなく、さまざまなモノやサービスに広がっています。

この値上げの動き、実は今後も続く見込みなんです。

そうなんですか!?

はい。民間のエコノミストの予測のまとめによると、ことし物価上昇の勢いは少しずつ弱まってはいくそうですが、それでも2%を上回る物価の上昇が続く見通しなんです。

教えてくれるのは今井純子解説委員。京都放送局や経済部の記者を経て2004年から現職。「時論公論」「みみより!くらし解説」「おはよう日本 ここに注目!」などのコーナーで、主に経済、家計、消費者政策の分野を担当。

学生
吉田

なんとか物価を下げる方法はないんですか?

やっぱりそう思いますよね。

いまの物価の上昇は2021年の後半から始まっているんですが、国際的な原材料価格の上昇や、円安による海外からの輸入コストの増加といったことが背景にあります。

総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国」をもとに作成

物価は上昇の勢いが弱まることはあっても、かつてのように下がることはないだろうとみられています。

そうなんですね…。

そうした状況なので、私たちの給料、賃金が増えてくれないと困ってしまうわけです。

それも物価が上がる以上に、賃金がアップすることが重要になりますよね。

しかし現状は、物価が上がっているほど、賃金は上がっていないんです。

賃金上昇のカギ「春闘」

その状況、何とかできないのでしょうか?

そこで大きな焦点となっているのが、いま行われている「春闘」で、どれだけ賃金を増やせるかなんです。

「春闘」は学生にはあまりなじみがないのですが、どういったものですか?

みなさん就職すると、労働者の団体、労働組合に入る人もいると思います。

春闘は、正式には「春季生活闘争」と言います。

労働組合側が、雇う側=経営側に、労働条件についての要求を出して、交渉するんです。

交渉では、賃金の引き上げが最も注目されます。

労働組合側は具体的にどんな要求をしているんですか?

その前提として知ってほしいのが、去年(2023年)の春闘の結果です。

実は去年、およそ30年ぶりとなる高い水準で賃金が引き上げられたんです。

労働組合「連合」のまとめによると、賃金引き上げの割合=賃上げ率は平均で3.58%。

大手企業を中心に異例の早期決着や労働組合の要求どおりの満額回答が相次ぎました。

2023年10月 労働組合「連合」の定期大会

そうだったんですね。

それでも、さきほど説明したように、物価の上昇に賃金の上昇は追いついていないんです。

このため連合は、ことしの春闘で、去年を上回る賃上げを求める方針を掲げました。

ベースアップ相当分として3%以上、定期昇給分をあわせて5%以上を要求しています。

連合「2024 春季生活闘争方針」をもとに作成

その「定期昇給」と「ベースアップ」って何でしょうか?

「定期昇給」は、年齢や勤続年数などに応じ、企業の昇給制度によって定期的に行われる昇給です。

一方の「ベースアップ」は、給料のベース、つまり基本給を引き上げることです。

定期昇給と異なって、給与水準そのものを引き上げることを言います。

「定期昇給」と「ベースアップ」のイメージ

このベースアップを含め、どのくらいの賃上げが行われるかが、注目されているんです。

賃上げに経営側も積極姿勢 背景に人手不足

ことしの春闘は、賃金の上昇に結びつきそうですか?

大企業をみますと、早い段階で、大幅に賃金を引き上げる方針を明らかにする動きが相次いでいて、積極的な姿勢が目立ちます。

それは働く人たちのことを考えている会社が多いということでしょうか?

もちろん、生活が厳しいという従業員の声に応えたい思いもあるでしょう。

ただ、これほど経営側が前向きになる背景には、なんといっても深刻な人手不足があります。

例えば「ホテルでベッドメイキングする人が足りず、宿泊予約を断らざるをえない」「レストランで料理を運ぶ人がおらず、定休日にせざるをえない」などの事例も出てきています。

確かに、最近はいろいろなところでアルバイトを募集している気がします。

特に新型コロナの影響を強く受けた職場では、働く人が大きく減り、コロナ後に利用者が増えても、働く人は以前のように戻ってきていません。

こうした事態に、経営者の間で、優秀な人を雇って働き続けてもらうためには積極的に賃金を上げる必要があるという考えが広がってきているんです。

どの会社で働いていても、給料が上がっていくことになるんでしょうか?

働く人のおよそ7割は中小企業で働いていて、賃上げの動きは、大企業だけでなく中小企業にも広がってきています。

中小企業が多く加盟する日本商工会議所の調査では、6割を超える中小企業がことし賃上げを実施する予定だということです。

3%以上の賃上げを予定する企業も4割近くに上ったとしています。

ただ中小企業には、コロナの影響で借金を背負って、業績が厳しい企業も少なくありません。

ですから政府も、中小企業での賃上げを後押しする対策をまとめて協力を呼びかけています。

中小企業が人件費の上昇分を販売価格に転嫁できるよう指針をまとめたり、賃上げした企業に法人税の一定額を差し引く「賃上げ税制」を使いやすく見直したりしています。

※賃上げ税制について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

令和6年度税制改正 「賃上げ税制」で中小企業を支援

「5%以上の賃上げ」実現は?

そうすると、連合の要求方針どおりの賃上げは実現しそうでしょうか?

そこまでは厳しいかもしれません。民間のエコノミストのまとめによると、賃上げ率の予測は、平均で3.88%となっています。

内訳は、定期昇給分が1.66%、ベースアップ分が2.22%です。

「日本経済研究センター ESPフォーキャスト調査(回答者38人)」をもとに作成

つまり、連合の要求方針の「5%以上」までは達しないけれど、高い水準だった去年をさらに上回るのではないかという見通しになっています。

「物価上昇を上回る賃上げ」なるか

その予測どおりに賃金が引き上げられたら、「物価の上昇を上回る賃上げ」は実現するのでしょうか?

実はことしの後半ごろから、その可能性が出てくるかもしれないという予測があります。

さきほど基本給を底上げするベースアップ分の賃上げ率の予測の平均は2.22%でしたね。

これに対して、物価の上昇の予測は、ことし前半の2%台半ばから、後半になると少しずつ勢いが弱まる見通しです。

それぞれ予測通りになれば、ことしの後半ごろから、賃上げの水準が物価の上昇を上回る状態になる可能性が出てくるということです。

また政府はことし6月から、所得税と住民税あわせて1人当たり4万円を減税する方針です。

国民の収入を下支えして、手取り収入の伸びが物価高を上回る状態を作りたいという考えなんです。

わたしたちの暮らしはよくなっていくのでしょうか?

賃金の上昇が物価の上昇を上回る状態が続けば、少しは生活にゆとりを感じられるようになることが期待できるかもしれません。

日本経済にとっても、よい循環につながっていく可能性が出てきますね。

経済取材を長年続けてきた今井解説委員は、いまの賃上げの動きをどう受け止めていますか?

いまのような高い賃上げの動きは本当に最近のことで、その前となると、いわゆる高度成長期やバブル経済のころまで遡ります。

次のグラフを見ても分かるとおり、賃金の上昇はおよそ30年間にわたって低迷してきました。

連合「賃上げ状況の推移」資料をもとに作成

この間の経営側(経団連)の報告書を見ると、「ベアは論外」「定期昇給制度の廃止、ベースダウンも話し合いの対象に」などと、賃上げには厳しい方針が続いてきました。

しかし今、ついこの前まで「人件費はコスト」と言っていた経営側から「社員は一番大事な経営資源だ」という声が上がるようになりました。

働く人に今度こそ恩恵が広がって、生活に明るさを感じられるように、労働組合側と経営側が真摯に交渉して、前向きな結果を出してほしいと思います。

これからの時代はチャンス

これからの時代、私たちはどんなことを意識すべきでしょうか?

「自分をみがきステップアップを!」です。これからの時代、若い人は特にチャンスなんです。

企業にとっては、製品やサービスを単に値上げして売り上げを増やすだけでなく、利益を増やし続けるための「稼ぐ力」が求められます。

AI、IT、ロボットなどを活用して、社員1人あたりの生産性を高める。ビッグデータの情報を分析して、地球温暖化対策など社会課題の解決につながるビジネスをつくり出していく、などです。

そのために大事なのは“人財”です。企業も人への投資に、より力を入れるようになっています。

自分の力をみがくことで、どうステップアップを図れるかを常に考えて、いろいろなことにチャレンジしてほしいと思います。

ことしの春闘についてはこちらの解説番組でもご紹介しました。

「2024春闘をわかりやすく解説 中小企業や非正規社員も賃上げを!」

次回は、インフレ・デフレってそもそもなに?について、👇の記事でわかりやすく徹底解説します。

編集:加藤誠

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