2023年01月31日
(聞き手:佐藤巴南 梶原龍)
SDGsってよく見聞きするけど、人に説明できるほど詳しくはない…。
なんのための取り組みでどんな目標があるの?
確認しておきたいSDGsの基本情報を1からわかりやすく解説します。
SDGsの意味を改めて教えてください。
英語ではSustainable Development Goalsといい、その頭文字を取ってSDGs(エスディージーズ)です。
直訳すると「持続可能な開発目標」ですね。
世界全体が2030年までに持続可能で、誰も取り残さない社会を作り、よりよい発展をしていくための国際的な目標です。
教えてくれるのは土屋敏之解説委員。科学・環境分野が担当で地球温暖化や脱炭素社会、生物多様性などに詳しい。科学番組のディレクターとして「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」「ためしてガッテン」「サイエンスZERO」などの番組を制作してきた。
SDGsは2015年にニューヨークで開かれた国連サミットの場で、150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択されました。
国連で決まったんですね。
はい。貧困や飢餓の撲滅をはじめ、経済成長や環境保全など17の目標(ゴール)の達成を目指しています。
17の目標にはどんなものがありますか?
詳しく見ていきましょう。これが目標の一覧です。
たくさんあって一見わかりづらいかも知れませんが、この並び順に実は意味があるんです。
そうなんですか?
SDGsの目標は、大きく3つのテーマに整理できます。
1列目の1~6番は人間の命や権利に関する目標です。
1列目の目標
1「貧困をなくそう」 2「飢餓をゼロに」3「すべての人に健康と福祉を」4「質の高い教育をみんなに」5「ジェンダー平等を実現しよう」6「安全な水とトイレを世界中に」
貧困や飢餓をなくし、医療や教育を誰もが受けられるように。男女平等で、水やトイレといった衛生的な生活を。どれも人間の基本的な権利に関わるものとも言えます。
人の暮らしや権利についてが1列目なんですね。
1列目は開発途上国が中心となる目標が多いのですが、5のジェンダー平等などは日本でも大きな課題になっています。
2列目の7~12番は経済活動についての目標です。
2列目の目標
7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」8「働きがいも経済成長も」9「産業と技術革新の基盤をつくろう」10「人や国の不平等をなくそう」11「住み続けられるまちづくりを」 12「つくる責任 つかう責任」
エネルギー、働きがい、産業やインフラの整備、格差の是正、まちづくりなど、開発途上国だけでなく先進国や企業が取り組むべき目標が多く並んでいます。
また、12の「つくる責任 つかう責任」は企業だけでなく私たち消費者にとっても関わりのある目標ですね。
私たちの責任も明記されているんですね。
3列目の13~17番は、気候変動など「地球」規模の課題に関する目標などです。
3列目の目標
13「気候変動に具体的な対策を」14「海の豊かさを守ろう」15「陸の豊かさも守ろう」16「平和と公正をすべての人に」17「パートナーシップで目標を達成しよう」
17個全部覚えるのは大変だと思うけど、1列目、2列目、3列目でそれぞれテーマがあるというふうに考えておくと、理解しやすいですよ。
テーマごとに並んでいるとは知りませんでした。
目標が若干あいまいな言葉だなと思うのですが、なぜですか?
実はこの17の目標の下に169の具体的なターゲットというのがあります。
ターゲット?
17の目標については概念的なことで、具体的な内容は下にぶら下がっているターゲットで細かく設定されているという構図になっています。
ちなみにそのターゲットをどのくらい達成できたかを計る指標は232個あります。
例えば、1の貧困をなくそうだと、1日1.25ドル未満で暮らす人をなくすというのがターゲットの一番はじめにあります。
それはすごく具体的で数えやすいんですが、先進国だと一日1.25ドル未満で暮らしている人は少ないはずです。
たしかに、国によって違いますもんね。
だから、2つめのターゲットは、各国がそれぞれに定めた貧困の基準ラインを下回って生活する人の割合を減らすというようになっています。
そもそもなぜSDGsが作られたんですか?
SDGsの元となる「サステイナブル(持続可能)」という概念自体はかなり古くからあって。
今から半世紀前の1972年にストックホルムで国連の「人間環境会議」が開かれました。
それにタイミングをあわせて国際的なシンクタンクのローマクラブが、地球環境や資源の有限性を指摘する「成長の限界」というレポートを出したことで、多くの人に認識されるようになってきたと言えるかもしれません。
その後、1992年にはリオデジャネイロで国連の「地球サミット」が開かれ、「気候変動枠組条約」や「生物多様性条約」といった持続可能性に深く関わる国際条約もできました。
以前からさまざまな取り組みがあったんですね。
SDGsのひとつ前には、「MDGs」(エムディージーズ)という国際的な目標がありました。
これは、2001年にできた「ミレニアム開発目標」の略で、2015年までに達成すべき国際社会共通の目標としてまとめられたんです。
MDGs?
MDGsは、開発途上国の貧困・教育・健康・環境などを改善するための8つのゴールと21のターゲットを掲げました。
特に、極度の貧困や、それに関連する課題を解決することに主眼が置かれました。
このときは開発途上国の発展が目標だったんですね。
でも、いろんなゆがみが生まれてしまったんです。
例えば、ある途上国で資本を投入して商品作物を大量に栽培したら、森林の伐採が進んで土地が荒廃し、食料や水不足に繋がってしまったり。
あるいはお金が一部の関係者にのみ集中して、貧富の格差が広がったり。
それこそアフリカだと部族どうしでの争いになって、内戦に発展したりってことも起きました。
かなり大変なことになったんですね。
そこで、SDGsでは途上国の発展に限定せず、世界全体の経済発展、そのベースになる自然環境、人間の権利、教育、生きていくために必要なインフラ、そういうもろもろのものを同時に解決していくことが必要だと考えられました。
必要な様々な要素をゆるやかに包括して、17の目標にまとめることにしたんです。
17個ってちょっと多い気もしますが…。
こんにちの社会が抱えているいろんな問題は17項目のどこかに入り、それがお互いに関わりあっている要素だ、というところが大きいと思います。
1つだけを追及しても全体に良い結果にならないということで、17項目が作られたんですね。
SDGsは世界の課題を同時に解決していくための国際的な目標でした。次回は、日本の取り組みについて見ていきます。
撮影:堀 祐理 編集:石黒志織
SDGsについてNHKの番組やイベントの情報はこちらからも
NHK・SDGsキャンペーンのサイト「未来へ17action」
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