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追跡!ネット通販の闇

2020年7月14日

新型コロナウイルスの影響で新たな生活様式が求められている中、ますます生活に不可欠になりつつあるのがインターネット通販です。ところが、すぐに壊れてしまったり、出火の危険性があるような粗悪な商品や、偽造されたブランド品の販売が後を絶たないのが現状です。なぜ、そうした商品の販売がなくならないのか。ネット通販の事業者は十分な対策を取っているのか。私たち消費者は、どのように気をつければいいのか。追跡しました。(ネットワーク報道部 斉藤直哉/第2制作ユニット 門田收平PD)

ネット通販のトラブルが増加

新型コロナウイルスによって私たちの消費行動が大きく変わるなか、ネット通販の利用が急増しています。

マスクなどの衛生用品だけでなく、自粛生活のなかでこれまで店頭で買っていた食料品や日用品をネット通販で買い入れる動きも出ています。

こうした中、ネット通販でトラブルに巻き込まれたという声も目立つようになりました。ネット上には「マスクのひもがぽろっと取れてしまう」、「非接触式の体温計でいつも同じ温度が表示されてしまう」などの書き込みが数多く見られます。

国民生活センターによりますと、ことし4月から6月までの間にネット通販に関して寄せられた相談件数は5万8000件余り。去年の同じ時期より7割以上も増えています。

国民生活センター相談第2課 森澤槙子さん
「新型コロナウイルスにかかるかもしれないという不安な状況に便乗するような悪質な業者も見られます。そうした業者に対しては、詳細な情報を集め、注意喚起をしていきたいと考えています」

通販で買った商品が発火命の危険も

中には、ネット通販で買った商品が原因で、命にも関わるような深刻なケースもあることが分かりました。

群馬県内に住む夫婦の自宅で去年10月、2階の物置部屋から火が出て、壁一面や家具などが焼ける火事がありました。

夫婦にけがは無かったものの、火災による被害額は800万円に上りました。

消防による検証で火災原因と判明したのは、掃除機用のバッテリーでした。

そのバッテリーは、大手メーカーのダイソン社のハンディタイプの掃除機に使われるバッテリーでしたが、掃除機のメーカーが製造・販売している純正品ではない、第三者の業者が製造した「互換性バッテリー」だと判明しました。

前橋市消防局 松井正人さん
「リチウムイオンのバッテリーでは、メーカーの純正品ではない互換品のなかには過充電を防ぐ安全装置がなかったり、電池の構造が不適切なものが混ざっていて、充電中に発火してしまうおそれもある」

夫婦が購入したのは大手ネット通販のアマゾンで、値段は3千円ほどと純正品のおよそ半額で販売されていて、価格が安かったことで選んだと話していました。

被害にあった夫婦
「自分でも仕方がないと思うしかないなと思いながらも、悔しい気持ちはどうしても心には残ってしまいます」

実は、掃除機の互換性のバッテリーが原因とみられる発火事故は近年急増しています。

製品評価技術基盤機構=NITEのまとめによりますと、前の年度は1件だった事故件数が、昨年度1年間で30件以上に急増。

掃除機メーカーやNITEは、互換性バッテリーの使用について消費者に注意を呼びかけています。

偽ブランド品を摘発 しかし出品者がたどれず…

偽造されたブランド品の販売も問題になっています。

消費者庁ではことし4月に、アマゾン上で財布やバッグなどの偽ブランド品を販売していた13の出品者に対して行政処分を行いました。

ところが、消費者庁の担当者は記者会見のなかで、出品者を調査したものの、責任者の身元を確認することができなかったと明かしました。

調査にあたって消費者庁は、商品ページに記載することが法律によって定められている住所や電話番号などの情報を調べたものの、出品者の実態が無かったということです。

さらに、出品するにあたって通販サイトの運営者に提出していた運転免許証や在留資格カードなどの身元確認の書類を調べたものの、実在の日本人の名前を勝手に使っていたり、架空の人物の名前が書き込まれていたりと、いずれも偽造された書類だったということです。

消費者庁の担当者
「ネット通販上で偽ブランド品を探し出すのには時間はかからなかったのですが、その出品者は非常に手の込んだ手法で身元を隠していて、所在を追いかけるのに相当な時間がかかってしまっている」

消費者庁は、こうした悪質な出品者の対策に向けて、通販サイトの運営者に対して出品者の身元確認をより厳格に行うよう、法律の改正も検討していくとしています。

消費者庁取引対策課 笹路健課長
「通販サイトを悪用した違法な行為を行う人たちによって、日本の消費者が犠牲にならないように、きちんとプラットフォーム事業者の皆さんと政府と一体になって考えていくことが、今後ますます必要になってくる」

アマゾン 対策は…

問題が相次ぐネット通販での不良品や偽造品の販売。悪質な出品者による登録情報の偽装。

大手通販サイトのアマゾンはどのように対策を行っているのか。

アマゾン本社で顧客保護や不正対策を統括しているダーメッシュ・メータ バイスプレジデントにウェブインタビューしました。

アマゾン ダーメッシュ・メータさん
「日本の消費者庁が発表した偽ブランド品の状況についてはアマゾンはすでに対策を実施しており、同じ手口で同様の不正行為をできないようにしています。専門の調査員と機械学習のツールの組み合わせによって、2019年は250万の疑わしい出品者を見つけだし、60億点以上の疑わしい商品を販売前に差し止めました」

対策手法について尋ねると、詳しい手法は明らかにしませんでしたが、「独自の高性能のシステムで対応している」と答えました。

また、偽造品に関しては、今後、販売業者の審査強化だけでなく、法的な対応を行っていくとしています。

ダーメッシュ・メータさん
「アマゾンはまだ完ぺきではないということも認識しています。今後も継続的に投資を進め、信頼されるサイトにしていきます。偽ブランド品犯罪対策チームはその一環として立ち上げました。アマゾンにとって日本は最も重要な市場の1つであり、今後も日本のお客様からさらに信頼を獲得したいと思います」

コロナ禍で続々とネット通販に参入

コロナ禍で、新たにネット通販ビジネスへ参入しようという業者は急増しています。

出品者のコンサルティングを行っているアグザルファ株式会社の比良益章さんによりますと、問い合わせの件数はことし1月と比べて現在は4倍以上に増えているといいます。

アグザルファ 比良益章さん
「先行きが不安になったり、減った収入を補おうとして在宅や副業で通販事業に参入する個人が増えています。マスクや消毒液を売りたいという相談も多くあります。事業者どうしの競争が激化して、たとえ不正をしても売り上げを伸ばそうという業者が今後も増えてくると感じています」

別の販売業者によりますと、新たにネット通販を始めた出品者が、認証を得ていないマスクを海外から輸入して販売しようとして、日本の税関で荷物を止められるというケースも出ているということです。

アフターコロナと呼ばれるこれからの時代、通販サイトは私たちの生活に欠かせないサービスになりつつあります。

どうすれば安心してサービスを使うことができるのか、国やプラットフォーマーと呼ばれる運営者、それに私たち消費者がともに考えていくことが求められています。

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