ネット公告の闇 ネット公告の闇

巨大ECサイト「アマゾン」 不正の現状どう考える?

2020年8月3日

7月14日に放送したクローズアップ現代+「新型コロで被害拡大 追跡!ネット通販の闇」では、通販サイトで販売されている商品のなかに偽造品や不良品があり、火災など深刻な被害を起こしかねないリスクがあることや、悪質な販売業者が身元を隠して販売している実態を追いました。
「懐中電灯が表示されている防水性能を満たしていない」「掃除機の互換性バッテリーを分解してみると安全基準を満たしていない構造だった」など、本来は販売してはいけない商品は、いまも通販サイト上で後を絶ちません。
こうした現状について、通販サイトを運営するプラットフォーマーは、どのような対策を行っているのか。巨大通販サイト「アマゾン」の不正対策の責任者にリモートでインタビューを行いました。

アマゾン本社 不正対策責任者に聞いた

アメリカからリモートでインタビューに答えたのは、Amazon.comでバイスプレジデントをつとめるダーメッシュ・メータさん。テクノロジーなどを駆使して通販サイトの顧客を詐欺や不正商品などの被害から守るチームを統括していて、以前東京にも住んでいた経験があるといいます。

後を絶たない不正出品 現状は?

不正対策のため法律などの専門家を集めたチームを率いているというメータさんに、日本のネット通販でも販売が後を絶たない偽ブランド品の現状について尋ねました。

(Amazon.com ダーメッシュ・メータ バイスプレジデント)
「Amazon.co.jpや世界各地のストアで消費者の購入額は年々増えています。お客様が閲覧した全商品のうち99.9%以上で偽ブランド品だという申告はありませんが、それで完璧でないことは分かっています。高度なテクノロジーに投資し、専門的な調査員などを雇い入れるなど、今後も引き続き改善を図っていくつもりです。その一環として偽ブランド品犯罪対策チームを立ち上げました。法執行機関と協力して犯罪者の責任を追及し、消費者に対する犯罪行為を抑止していきます。例えば2019年には5億ドル以上(500億円以上)を投じました。8000人以上のスタッフが偽ブランド品などの不当な商品と戦っています。」

悪質な出品者への対策は?

ことし4月、消費者庁は日本のアマゾンで偽ブランド品を販売していたとして、13の事業者の名前を公表しました。消費者庁では業者への聞き取りを行おうと、法律で表示が義務付けられている販売者の名前や住所を調べましたが、いずれも偽物で、担当者の名前が分からず偽名のまま処分を公表するという異例の事態になりました。
消費者庁では、通販サイトで出店するための審査の際に提出された身分証明書なども調べましたが、まったく無関係の日本人の情報を勝手に使っていたり、架空の名前を使っていたりしていたことが分かったといいます。

Q:偽造品や不正商品の出品者が後を絶たないことについてどう考えますか

「サイトに商品を載せる業者には法律や規則の遵守を求めていますし、業界でも最先端のツールを使って常にストアをモニターすることによって、安全でない商品など規則に反する商品がサイトに載らないようにしています。重視しているのは、先手を打って、疑わしい商品、有害な商品、そして安全性に問題がありそうな商品を出品できないようにすることです。専門の調査員と最新のテクノロジーを組み合わせて、不正商品の出品を防止しています。2019年には60億点以上の不正商品の出品を防止しました」

Q:出品者が、偽の身分証明書や偽造運転免許を使って登録していたことについてどう考えますか

「出品の審査を悪用することは絶対に容認しません。私たちのシステムを悪用して不正に出品する者を抑止するために、予防措置的なテクノロジーやイノベーションに継続的に大規模な投資をしています。私たちが見過ごしてしまった不正の報告が届いた場合には、迅速に調査して行動を起こします。ご指摘のケースでは既に手を打っており、不正出品者が同じ手口でサイトを悪用できないようにしました。また、このケースでは日本の消費者庁と連携して対応しています」

Q:処分を受けた業者は、複数のアカウントを持っていて、偽ブランド商品が返品された際に、別のアカウントを使ってラベルを張り替えて、また出品するという手口を使っているとみられます。それに対して何らかの措置をとりましたか。

「そういった状況についても既に対策を実施しており、同じ手口で同様の不正行為をできないようにしています。日本の消費者庁とも協力をしています。出品者にはしっかりと正確な情報を提供することを義務付けています。専門の調査員と機械学習のツールの組み合わせによって、何百というデータポイントをスキャンし調べた上で、疑わしいアカウントを特定できるようにしています。疑わしいアカウントによる商品の出品を阻止した多くのケースで、専用の機械学習の仕組みによって不正行為を行う出品者を特定して、不正行為を繰り返すことを防止しました」

Q:既に対策を実施したということですが、もう少し詳しく聞かせてください。

「まず、出品者から提供された情報の正確性を検証する手法を向上させたということがあります。また、独自開発した高性能のシステムがあって、それによって何百という項目をしっかりとチェックして、事前に疑わしい出品者のアカウントを検知することができます。
1つだけ対策を実施したという単純なことではありません。私たちの最新システムは継続的に学習することで性能が向上します。先手を打って不正行為者や偽ブランド業者そしてシステムを悪用する者からサイトを守ることに注力しています。それに加えて、法執行機関と連携して犯罪組織と戦っています」

発火事故 プラットフォーマーとしての責任は?

通販サイトが抱える問題は偽ブランド品だけではありません。ネット通販で売り上げが伸びている互換性の掃除機用バッテリーが発火する事故がいま急増していて、製品評価技術基盤機構=NITEのまとめによりますと、前の年度は1件だった事故件数が、昨年度1年間で30件以上に上っています。掃除機メーカーやNITEが、互換性バッテリーの使用について消費者に注意を呼びかけるなど、対策が急がれています。

ネット通販で購入した互換性バッテリーが原因で火災が起きた現場

Q:ネット通販で購入した粗悪なリチウムイオン電池によって実際に火災が起きています。こうした粗悪な商品に対しては何か対策を取っていますか。

「消費者が信頼して買い物をすることが極めて重要です。そのためのプロセスが不正行為者を見つけることです。2018年には250万のアカウントを停止して商品をサイトに載せるのを阻止しました。偽ブランド商品や安全性に問題がある商品をサイトに載せようとする会社や個人を阻止しました。またお客様の期待に応えないような商品を阻止しました。お客様のあらゆる苦情について調査を実施しています」

Q:被害を受けた消費者がいることに対して、プラットフォーマーとしてどのような責任を感じていますか。

「真正で安全な信頼できる商品を提供することが極めて重要だと考えています。すべての出品者には、商品が法令や安全品質基準を満たしていることを確保する責任があります。出品者が、様々なカテゴリーに関して安全テストを実施しているかどうかを検証します。弊社のポリシーやシステムを悪用していると分かれば、速やかに強制措置を取り、お客様に被害を及ぼすのを阻止します。商品の真正性、安全性、品質などがそろって初めて信頼できるお買い物ができるようになります」

新たな生活様式に向けて 通販サイトができることは

Q:新型コロナウイルスによって新しい生活様式が求められるなか、ネット通販の重要性はますます高まっています。アマゾンでは、新しい生活様式に関してどのように責任を果たしていこうと考えていますか

「新型コロナウイルスの危機によって生活様式は大きく変わりました。しかし、世界で最もお客様重視の企業であるというアマゾンの使命が変わることはありません。ウイルスの流行によってオンラインショッピングの需要は増えています。
今、アマゾンはお客様にサービスを提供するだけでなく、地域にも貢献するという重要な役割を負っていると考えています。新型コロナウイルスが流行するなかで、アマゾン・ジャパンは政府、NPO、地方自治体と連携して、子どもや家庭、高齢者や恵まれない方のニーズに応える取組みを行っています。組織、フードバンクなど、数多くのプログラムに寄付を行いました。新型コロナウイルスの危機を一丸となって乗り越えるために、今後もこうした取り組みを続けていきます」


日々、新たな手口で不正に儲けようとする悪質な出品者と、テクノロジーを駆使して未然に防ごうとするプラットフォーマーとの闘い。新型コロナウイルスによって、私たち消費者にとってネット通販の利用がますます重要になるなか、詐欺や不良品の心配がなく安心して利用できる環境の整備が求められています。
取材班が追跡したネット通販の不正な業者の実態については、こちらの特集記事でご紹介しています。
記事 追跡!ネット通販の闇
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200714/k10012515291000.html

情報・ご意見をお寄せください >>