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この日、大臣は何を? “大臣日程表”を見比べて

各省庁で、大臣の日程表が即日廃棄されていた問題。

今回、私たちは、廃棄される前の各省庁の日程表を入手しました。
その内容を見て驚きました。(霞が関リアル取材班 記者 北村洋次)

ついに公開された日程表!

大臣の日程表は、各省庁の大臣がいつ、どこで誰と会い、どんな仕事をしたのかが記された公文書です。

ところが、ことし4月、東京のNPO「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長が情報公開請求した結果、多くの省庁でこうした日程表が即日廃棄されていたことがわかりました。

本来、大臣の日程表には、省庁の活動をひもとくうえで大事な情報が盛り込まれているはずです。

森友学園の問題も取材した私は日程表ではないですが、国有地売却を巡る交渉記録などがきちんと管理されていない実態を目の当たりにしてきました。

公文書管理のあり方は、その反省にたって見直されたというのに、むしろ「行政の効率化」という理由で即日廃棄されていた事実を知り、思わず三木さんに「これっておかしいですよね」と憤りを口にしました。

すると、三木さん。次の一手をすでに打っていました。
それは「請求を受け付けた時点で残されている日程表」の公開を改めて請求したというのです。

「せめて請求したその日の分だけは残されているのではないかと思ったんですよね」

さすが百戦錬磨です…。

各省庁の日程表、違いは…

三木さんの思惑どおり、後日、各省庁から廃棄される前の日程表が次々に開示されました。
いったいどんな内容なのか、省庁ごとに見ていきます。

まず、なかなか詳細な内容が書かれていたのが、経済産業省、国土交通省です。

経産省の日程表。世耕大臣がWTO=世界貿易機関やG20などについて担当幹部から説明を受けていたことが分かります。

この日は午後から夕方まで参議院の決算委員会の予定が続く

国交省の日程表には、石井大臣が出席した式典や国会での日程が具体的に書かれていました。

少なくとも、これぐらいの内容が書かれていれば、後々、大臣らの動きを検証することは可能だと感じました。

どうやってチェックすれば!

一方、その内容がさみしかったのが環境省です。

原田環境相の日程表 午後には何の予定も入っていない

記されていた原田環境大臣の4月19日の日程は、閣議後の記者会見など、午前8時半から午前10時半までのわずか2時間分のみ。
この日は、これだけしか公務がなかったのか?

原田大臣の個人ブログをチェックしてみました。

すると、同じ日(19日)、大臣はアメリカ・カリフォルニア州議員団による訪問を受けたり、長野県朝日村の村長に感謝状を贈呈したりしたと記されています。

そこで、環境省や朝日村に取材してみると意外な事実が…。
なんとブログに掲載されていた日付が間違っていて、実際2つの行事があったのは、この数日前だったというのです。

日程表に書かれた内容はわずか。
ブログにも正確な日付が書かれていないとなると、私たちはどうやって大臣の行動を確認すればよいのでしょうか?

黒塗りの省庁も

法務省が開示した大臣の日程表 内容部分に数多く黒塗りが

一方、開示はされたものの、黒塗りが多かったのが法務省と財務省です。これでは、ほとんど内容を理解することはできません。

2つの省は、黒塗りにした理由について、それぞれ次のように説明しています。

黒塗りの理由を“大臣の個人情報”や“犯罪捜査などへの支障のおそれ”を挙げたが…

「公にすることにより犯罪の捜査、公訴の維持、刑の執行等に支障を及ぼすおそれがある」(法務省)

「公共の安全と秩序の維持に支障をおよぼすおそれ」(財務省)

また、防衛省も国の安全など、防衛上の理由で日程表の中身の多くを開示しないということでした。

「政務」は記述されず

今回、明らかになった大臣の日程表を見ると、省庁によって、記載内容や公開の仕方に大きなばらつきがあることがわかりました。

その一方、三木さんはこれらの日程表に共通点があることに気付いたといいます。
それは大臣の政務に関する記述が、各省庁ともほとんどないことです。

「大臣としてではなく政治家として民間の支援者や企業経営者など外部の誰と面会したのかは、どこの省庁の日程表にも書かれていないですね」

三木さんも、本当に「政務」であれば、記述されていないことを一律に問題にはできないと言いながらも、「政務」を隠れみのにさせてはいけないと釘を刺しました。

「大臣がどんな支援者と会っているのか他の政治家に知られたくない気持ちもわかります。ただ、面会している支援者や民間企業の関係者は1人の政治家としてでなく大臣として面会しているケースもあると思います。

懸念するのは、こうした記録が政争に使われることをおそれ、大臣など政治のトップレベルの活動に関する記録を捨てたり、残さなかったりするインセンティブが働く状況になっていることです。

どうすれば記録を残していけるのか、公開の仕方も含めて議論していかなければならないかもしれない」

みなさんの意見を聞かせて下さい

この問題を取材して、同じ日程表でありながら、なぜこんなに省庁によって、対応が違うのか、今でも釈然としません。

やはり何らかのルールが(無論、開示がより進む方向で!)必要ではないかと感じます。みなさんはどう考えますか?
どうぞ、こちらまで、ご意見などをお寄せ下さい。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/kasumigaseki/

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