証言 当事者たちの声「ことしも、あの事件は未解決のまま…」 ~世田谷一家殺害事件~

2021年12月30日事件

東京・世田谷区の住宅で一家4人が殺害された事件から、21年となる。

亡くなった宮沢みきおさんの母親の節子さんは、90歳を迎えた。

毎年この時期、4人のお墓参りを欠かさない節子さん。

「生きている間に少しでも解決の兆しを見たい」と、声を絞り出すように訴えている。

未解決のまま

2000年(平成12年)の大みそか、東京・世田谷区の住宅で、会社員の宮沢みきおさん(44)、妻の泰子さん(41)、長女のにいなちゃん(8)、長男の礼くん(6)の一家4人が殺害されているのが見つかった。

事件は、未解決のまま発生から21年になる。

12月30日 命日に

12月30日は、4人の命日である。

4人の変わり果てた姿は、21年前の大みそかに発見されたが、現場の状況などから前日の12月30日の深夜に事件に巻き込まれたとみられている。

宮沢みきおさんの母親の節子さん(90)は、4人の墓がある埼玉県新座市の霊園を訪れた。

宮沢節子さん

墓には、みきおさんの父親で事件解決を見ないまま9年前に84歳で亡くなった良行さんも眠っている。

節子さんは花を供え、静かに手を合わせていた。

節子さん
『みんながいる頃は、一番弱かったおばあちゃんが今は1人で頑張っているよ。1日も早く犯人が見つかるようこれからも頑張ります』と伝えました。

犯人には、なぜ4人をこんな目にあわせなくてはいけなかったのか、その理由が聞きたいです。

21年間変わらず、1日も早く犯人が捕まってくれないか毎日毎日祈っています

12月18日 事件解決を願い

12月18日。現場近くのホールで事件解決を願う集会が開かれた。

出席したのは事件の遺族や警察関係者、地域の住民などおよそ50人。

まず、全員で黙とうをささげた。

集会では、元捜査幹部や弁護士などが参加して、どうすれば犯人にたどりつけるかを議論するパネルディスカッションも行われ、会場には宮沢みきおさんの母親の節子さんの姿もあった。

ことし、90歳になった節子さん。集会の様子をじっと見守っていたが、帰り際に取材に応じた。

取材に応じる宮沢節子さん

節子さん
事件について討論していただくと、解決の方法も進歩すると思う。そのためになってくれればいいと思います。
 
ただ、事件から20年以上たちますが、解決に向かって進展しているとは思えません。

毎年毎年というよりも、毎日毎日『きょうも何の連絡もなかった』と思って過ごしています。

生きている間に、なんとか少しでも解決の兆しを見たいと思っています。

なんで子どもまでも、と思いますね。

子どもまでどうして殺したのかって。

捜査員にも世代交代が

捜査を担当する警視庁でも世代交代が進み、事件を長く担当してきた人が次々に退職している。

現在、東大和警察署の署長を務める野間俊一郎さんは、捜査1課でこの事件をおよそ11年間に渡って担当してきたが、まもなく定年を迎える。

野間俊一郎さん(12月14日)

野間さんが担当になったのは事件が発生してからおよそ4年後。

周辺で目撃された不審な人物や現場に残っていた犯人の所持品などから手がかりをたどろうとしたが、寄せられる情報は年々少なくなっていったという。

野間俊一郎さん
時間が経つにつれて、事件が起きた当時のことを思い出してもらうことが大変になっていきました。

当時の新聞を持って関係者に話を聞くなど、捜査員1人1人が工夫するようにしていました。

事件のあと、殺害された宮沢みきおさんの父親の良行さんが、事件の情報提供を呼びかける活動などで先頭に立っていた。

宮沢良行さん(2010年12月 集会での挨拶)

良行さんは2012年に亡くなったが、野間さんは、良行さんが捜査員の前で思いを語ってくれたことを今でもはっきり覚えているという。

野間俊一郎さん
良行さんがお話されたあとに、我々を気遣って『大変でしょうけど頑張って下さい』と言われたんです。

遺族の方にそのようことを言わせてしまうのはね…。

自分の力のなさを感じました。

事件がなぜ起きたのか、遺族の方にきちんと説明するためにも、我々警察は必ず犯人を捕まえなければならないと考えています。

長い間、この事件の捜査を担当していたにもかかわらず、解決に至っていないのは本当にじくじたる思いです。

まもなく退職を迎える野間俊一郎さんは、どんなわずかな情報でもいいので寄せてほしいと呼びかけている。

野間さん
ささいな情報でも、今まで捜査員が集めた資料などと照らし合わせることで捜査が進むきっかけになります。

たとえこれは関係ないと思うことでもいいので、とにかく情報を寄せてください。

事件に関する情報は、成城警察署の捜査本部(電話03-3482-3829)
または警視庁のホームページまで。

犯人について
⦿犯人は、事件当時 比較的若い(服装などから判断)
⦿身長:1メートル70センチ前後
⦿服やジャンパーのサイズが「Lサイズ」
⦿足跡から、靴のサイズは27.5.センチ
⦿事件当時、やせ型だったとみられる(ヒップバッグのベルトの長さが83センチ)
⦿利き腕は「右手」の可能性 ※現在は体型が変わっている可能性も

⦿現場からは犯人のDNAや血がついた指紋が検出されている
⦿血液型はA型であることが判明
⦿性別は男
⦿犯行時、いずれかの手に怪我をしたとみられるが、現在は傷痕が残っていない可能性もある

犯人の遺留品(2018年12月)