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「壁にぶつかるその前に」外国人の子どもに就学前支援の充実を水戸局・土橋和佳記者

都市部に限らず、全国津々浦々で急増している外国籍の子どもたち。 住民の約8%を外国人が占める茨城県常総市も、日本語が苦手な子どもたちへの教育が大きな課題となっています。
そこで、長年外国人を支援してきたNPOは、「問題の解決は根本から」と、ある取り組みを始めました。

外国籍の子ども 社会との接点なく

「2年前、市内に住んでいる外国籍の未就学児の実態を調べたところ、約330人のうち半数近くが保育園などに通わず家にいて、家族以外との接点がほとんどなかった。小学生になって初めて日本の社会やことばの壁に直面していることが分かったんです」

そう話すのは、生活相談や通訳業務など外国人を支援する取り組みを長年続けてきた茨城NPOセンター・コモンズの横田能洋代表です。

常総市でも、外国人の子どもの教育は大きな課題の一つです。学校側も専門の教員や支援員を配置して特別授業を行うなどの対応をしていますが、NPOでも10年ほど前から、学校の勉強から取り残されがちな子どもたちを対象に、放課後に日本語を教えたり補習をしたりしてきました。

そういった活動を続ける中で見えてきたのが、かなりの数の外国人の子どもたちが、小学校で初めて日本の社会に接するという実態でした。

「それでは子どもが日本語ができなくても当然ですし、保護者も日本の教育制度や学校のルール・マナーが分からず不安を感じていました。子どもが学校に行きたがらなくなるなど本当に困って相談してきてから対応するのは大変で、自信をなくして不登校になってしまう子も見てきました。根本的な解決のためには、子どもや保護者を就学前から支援しなければと考えるようになったのです」(横田能洋さん)

まずは「プレスクール」から

そこで横田さんたちが始めたのが、「プレスクール」です。

もうすぐ小学1年生となる子どもと保護者を対象に、1月から3月ごろにかけて数回開催。子どもたちには学校での過ごし方や日本語でのあいさつ、ひらがななどを教え、保護者には学校に提出する書類の書き方や学校の仕組み、保護者の役割などを説明します。

2018年のプレスクールでは、地元の小学校の協力を得て、実際の1年生の教室を使わせてもらいました。

もっと深い支援を

また、2018年には、プレスクールの要素を取り入れた保育園も設立しました。家にいる就学前の子どもたちの居場所にもなります。現在通っている子どもは10人あまり。日本人と外国人のスタッフが、さまざまなルーツを持つ子どもたちそれぞれの文化を尊重しながら、日本語や日本の生活習慣などを教えていきます。

取材に訪れた日の、プレスクールの時間のスタッフと子どもたちのやりとりです。

「好きな遊びや好きな色、発表したい人は手を挙げて」

「好きな『果物』は、肉と白いごはんと・・・」

「それは『果物』ではなくて、『食べ物』ね」

子どもの言いたいことは伝わりますが、スタッフが間違いをきちんと指摘します。

日本語での日常会話は何となくできても、学習の場で使う日本語を身につけるのは難しいといいます。

「多言語を話せる子どもたちには大きな可能性があります。しかし学校でつまづいて進学をあきらめたり中退してしまったりしたら、可能性は狭まってしまう。子どもたちが自信を持って日本で育っていけるように、問題はなるべく早い段階から、根本から取り組んでいかなくては」(横田能洋さん)