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「ハーフ」は調子に乗ってる、って・・・ネットワーク報道部・木下隆児記者

外国にルーツを持つ子どもたちをめぐるいじめ。 ご意見をいただいた中に、「私にご協力できることがあれば、ご連絡いただければと思います」と話す男性がいました。 またメッセージにはこんな文章も。「ルーツに起因する所で結構ねじくれた生涯を送っているなと思います」。
どんな思いで連絡をしてくれたのか。直接聞いてみたいと思い、会ってきました。

私は彼女だったかもしれない

連絡をくれたのは、アメリカ人の父親と日本人の母親を持つ、日本生まれ日本育ちの26歳の男性です。

「『日本に戻らなければよかった』という記事を読んで、私も彼女になっていたかもしれない、そう思いました。 “ハーフ”である私のことばで、外国にルーツがある子どもたちに何か届くかもしれないのなら、ぜひ協力したいと思いました」。

彼は、メッセージを投稿した理由を、こう説明してくれました。

「英語しゃべってよ」

「自身はいじめられた経験はありますか?」。

それに対して彼は「彼女のような壮絶ないじめは受けていませんでした」と答えたものの、質問を進めていくと、みずからの経験を話し始めました。

「子どものころは白人っぽいというだけで、『お父さんはアメリカ人?』と言われ、常に奇異な目で見られている気がして、嫌でたまりませんでした。 高校生くらいまでは、やはり見た目から『英語しゃべってよ』とことあるごとに言われました。学校の先生からも『英語の文章読んでくれる』と言われることもあって、自分ではやりたいわけでもないし、とても嫌でした」

「ハーフ」だから

外国にルーツを持つ子どもたちの取材をしていると意外なほど聞くのが、学校の先生たちからの無神経な発言です。特殊なケースかと思っていましたが、彼も先生から次のようなことを言われたそうです。

「父親の影響で英語は得意だったので、先生からすればおもしろくなかったのかもしれません。高校1年生のころ英語の先生から『あんたハーフだからって調子乗ってるんでしょ』と言われたことがあります。 これだけが原因ではありませんが、このとき『この学校ってどうなの』と思ったことも事実で、その後、半年くらい引きこもりになって、そのまま退学しました」

自分のルーツは「嫌なもの」

こうしたこともあって、子どものころの彼にとって、自らのルーツは「嫌なもの」でしかありませんでした。「ハーフ」であることは、精神的にかなりの負担でもありました。 「ふつう」の日本人だったら、ずっと楽だったんじゃないか。そんな風に思うこともあります。それでも、年を重ねるとともに、少しずつ自らのルーツをプラスに考えるようになったといいます。

「ルーツを気にすることに精神的なエネルギーを相当取られるので、気にするのをやめようと決めて、少しずつならしていきました。 今では、“ハーフ”だから英語ができて、“ハーフ”だから、すぐ人に覚えてもらえるというふうに、“ハーフ”であることはメリットもあると考えられるようになりました」

「ハーフ」の自分にできること

みずからのルーツが外国にもあるからこそ、ルーツが原因でいじめを受けている子どもたちへ伝えたいことはありますか、そう尋ねると、次のように答えてくれました。

「自分のルーツは変えられないものだから、『自分は、ばりばりの日本人なのに』と悔しい思いもしてきました。一方で、私のようにルーツが日本以外にもある人間への理解は少しずつでも広がっていくと思っています。 今はルーツが原因でいじめられる不利益もあるかもしれません。それでも、外国にルーツを持って生まれたからには、ルーツをプラスにとらえて、みずからよい方向に変えていくことができるはずです」

「ルーツを原因にいじめてくるヤツには関わる必要はありません。 あなたを理解してくれない人につきあい続ける必要もありません。嫌だと思ったら、迷わず逃げてください」