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超多国籍都市トーキョーあなたのきっと知らないアメヨコの話2019年3月15日 ネットワーク報道部 國仲真一郎記者 三宅明香ディレクター

東京・上野の「アメ横」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか? お正月に向けて、マグロやカニ、カズノコといった海産物を買い求める人たちでごった返している姿…という人が多いのではないでしょうか。
かくいう私自身も、ニュースで流れる年の瀬の風物詩というイメージが強くありました。そんなある日、一緒に取材をしていたディレクターから聞かされた衝撃のひと言。「そういえば、今のアメ横って、ほとんどが外国人らしいよ」。

あなたの知らないアメ横がそこにある!?変貌する「超多国籍都市トーキョー」の今を、体当たりでお伝えします!

アメ横が“AMEYOKO”に!?

なにはともあれ、現場に行ってみないと始まらない!

ということで向かったアメ横。平日の午前中から多くの人でにぎわっています。けれど、どこか様子が違います。海産物を売る店が、なんだか、少ない…?

この疑問に答えてくれたのは、商店街の約400店舗をとりまとめる「アメ横商店街連合会」の千葉速人さん。革製品店を経営するかたわら、連合会の副会長を務め、アメ横の移り変わりをいちばん近くで見てきました。

  • 「アメ横商店街連合会」 千葉速人さん

「実は今や、商店街の40店ほどが外国人が経営するお店なんです。お客さんも、正確な統計は取っていませんが6割くらいが外国人。昔は中国人が多かったけど、最近ではベトナムとかの東南アジア、ヨーロッパからの人たちも多く来てくれています。昔から一定数はいたけれど、こんなに増えたのはここ5年くらいでしょうかね」

そう聞いて並んでいるお店をよく見ると、ケバブにタピオカ、中国料理や韓国料理と、海産物どころか“日本っぽくない”お店が多くあることに気がつきました。どうしてここまで外国人経営のお店が増えたんでしょうか?

「昔から続いてきたお店の中には、後継者がいなくて店を続けられないというところもありました。空き店舗にはしたくないと考えていたところ、外国人がそこに新しく店を開いてくれたんです」

ちなみに千葉さんによると、海産物が並ぶあの光景は年末の一時期だけで、ふだんは全く別のものを売っているお店が、この時期だけ業態を変えるのだそうです。取材に応じてくれた靴店では、年末にカマボコを売るために、毎年、営業許可を取っているということでした。

YOUはどうしてアメ横に?

この場所でケバブ店を経営する、トルコ出身のオスカルさん。もともと海苔を売る店があった跡地に、4年前に店をオープンさせました。

取材に訪れたときにはウズベキスタンからの留学生グループがボリュームたっぷりのケバブサンドをほおばっていました。

かつては別の場所でも店を開いていたオスカルさん。アメ横に店を開いた理由について、外国人が多く訪れる秋葉原や浅草、銀座といった観光地に近く外国人が集まりやすいこと、またスパイスをはじめとする食材がそろいやすいことを理由に挙げてくれました。

“世界の台所”AMEYOKO

さらに“ディープ”な世界があると聞き、向かった先は商店街にあるビルの地下。「地下食品街」と書かれた看板をくぐると、そこには不思議な空間が広がっていました。

見慣れない食材に…。

外国語ばかりが書かれた値札…。

これ、どうやって食べるの…?

生の肉や野菜、スパイスの香りが複雑に混じり合ったにおいに、飛び交う外国語。階段を降りただけなのに、自分はどこか別の国に来てしまったのではないか?という錯覚に陥ってしまいました。

この店では、中国やタイなどアジア圏のものを中心に、野菜や果物のほか、調味料やお菓子、即席めんなどを輸入し販売しています。

開店当初は日本人向けに野菜や魚を売っていましたが、それに加えて海外から輸入した香辛料も、量は少ないものの販売していたそうです。その情報が口コミで日本に住む外国人の間に広まり、15年ほど前に、外国食材を売る店へと業態を変更。今では客のほぼ100%が、日本で暮らす外国人になりました。

品ぞろえも外国人客のニーズに合うように工夫を重ねた結果、すべてが外国産、あるいは日本国内で生産された外国人向けの食材になったということです。

この地下街で気になる人を見つけ、話を聞いてみました。店舗をはしごしながら買い物をしていた、アフリカ西部ガンビアからの留学生。

買い物袋を見せてもらうと、さまざまなスパイス、豚肉に、見慣れない野菜、それに川魚が丸ごと1匹。同じアフリカからの留学生とともに、ふるさとの料理を作るための食材の買い出しにやってきたそうです。

「留学生仲間からこの場所のことを聞いてきました。これまでも都内各地を探しましたが、ほしい食材はここでしかそろわないんです」と、笑顔で話してくれました。

時代とともに変わるのが“アメ横スタイル”?

「アメ横で外国人が増えている」という話から始まった今回の取材。戦争直後のヤミ市に源流をもつというアメ横を歩きながら感じたのが、外国人が増え続ける街、東京の最先端がここにある、ということでした。

今回の取材で特に印象的だったのが、外国人向けに魚介類を販売する店で聞いたことばでした。

「戦争直後にものが足りなかったら、ものをそろえる。年の瀬になったら、カニやマグロをそろえる。外国人のお客さんが増えたら、外国人がほしいものをそろえる。どれも時代の変化を敏感にとらえて、それに合わせて柔軟に対応するということ。それがアメ横のスタイルだし、これからもそのスタイルを続けていきたいですね」

さまざまな国から、多くの人が集まり続ける「超多国籍都市トーキョー」。その最先端で、どんな変化が起きているのか?アメ横の人たちを見習って、“敏感にとらえる”取材を続けたいと思います。