大きな地震が発生したトルコ。
トルコに向かう機内の中で、正直私は緊張していました。被害の大きさに加え、一部の報道では現地の治安悪化も伝えられていたからです。
災害の直後には、残念ながら混乱に乗じた犯罪やトラブルが起きることもあります。
ただ、現地入りしてみると、そんな私の不安はすぐに打ち消されました。

甚大な被害が出ているトルコ南部の都市、カフラマンマラシュの避難場所に着くと、そこでは被災した人たちが整然と一列に並んでいたのです。
その列は、食事の配給や手続きを行うためのものでした。
そこには、着の身着のまま避難してきた約8500人の人たちが生活を送っていて、厳しい寒さや衛生環境の悪化で体調を崩す人が相次いでいて、中には家族を失った人もいます。
そんな状況の中でも、不平も言わず、大人も子どもも静かに自分たちの順番を待っていました。
そして、私が日本人だと気付くと、会う人会う人が次のような言葉を口にしました。
「日本の人たちの支援に感謝しています」
トルコは、日本との結びつきが強い国と言われています。
明治時代にオスマン帝国の船が日本の沖合で遭難した際に、日本人が乗組員を助けたこと。日本が同じ地震国として防災分野などで支援を続けてきたこと。
こうしたことなどが背景にあるからです。
一方のトルコ側も、東日本大震災の時に、日本で救助活動を行うなど、互いに助け合う関係が続いています。
さらに別の日。
夫と息子を亡くした女性に話を聞かせてもらっていたときのことです。
涙を流し、家族を失った悲しみや今後の生活への不安を訴える女性。
取材を終え、お悔やみの言葉を伝えてその場を離れようとすると、女性は私を引き留めて、次のように言いました。

「私たちと同じように地震で悲しい思いをする人がもう出ませんように。日本のすべての人たちに、神のご加護がありますように」
家族を失い、家も失い、憔悴してひとりで立っていることさえままならない女性が口にしたのは、遠く離れた日本の人たちへの感謝と祈りの言葉でした。
4万人以上が亡くなった今回の地震。現地では100万人以上が避難生活を強いられています。
多くの住宅が倒壊し、トルコの人たちは生活再建の見通しも立っていません。
私たちはトルコの人たちのために何ができるのか?その問いに向き合い続けていきたいと思います。
