2022年8月26日
TICAD ロシア 中国 アフリカ

日本とアフリカが会議 TICADって何?

8月27日から始まるTICAD(ティカッド)=アフリカ開発会議。
日本がアフリカの国々と開く国際会議です。
なぜ、アフリカとの関係強化を進めているのか。
分かりやすく解説します。
(国際部・小島明、田村佑輔)

そもそもTICADって?

2019年 横浜でのTICAD 各国首脳の記念写真

TICADとは、Tokyo International Conference on African Developmentの略です。
1993年に日本政府が国連などとともに東京で初めて開き、以降、定期的に開いています。アフリカの54か国の首脳らが参加し、日本との経済関係の強化や開発援助について議論してきました。

8回目となる今回は、8月27日と28日に北アフリカのチュニジアで開かれます。アフリカでの開催は2回目となります。

岸田総理大臣は新型コロナウイルスへの感染のため、出席を取りやめ、オンラインでの参加になります。

また、全体会合やビジネスフォーラムなど一部のイベントは対面で行われるものの、関連イベントのほとんどはオンラインでの開催となります。

新型コロナの影響を受ける中での開催ですが、日本とアフリカの結びつきを深める重要な機会となります。

アフリカとの関係 各国も強化してるの?

こうしたアフリカとの国際会議を開いているのは、実は、日本だけではありません。
アフリカの将来性や、豊富な天然資源、それに国連加盟国の3割近くを占める影響力も見越して、各国が競うように関係強化を進めています。

中国アフリカ協力フォーラム(2021年11月) 

例えば中国は、2000年から定期的に「中国アフリカ協力フォーラム」を開催しています。

去年11月の会議では習近平国家主席がアフリカに新型コロナウイルスワクチンを10億回分提供するほか、医療従事者など1500人を派遣すると表明しました。
巨大経済圏構想「一帯一路」のもとインフラ建設や巨額の融資を続けていて、アフリカ諸国との結びつきを強めています。

「ロシア・アフリカ経済フォーラム」(2019年10月)

そして、ロシアも資源開発や武器の輸出などを通じてアフリカ各国との関係を深めています。

2019年には「ロシア・アフリカ経済フォーラム」を初めて開き、プーチン大統領も「アフリカ各国との関係構築はロシアの外交政策の優先事項のひとつだ」と強調しています。ウクライナへの軍事侵攻を受けて欧米との対立が続く中、アフリカ各国との関係をこれまで以上に重視しています。

また、アメリカのバイデン政権も、8月、アフリカについての外交戦略をまとめ、中ロ両国に対抗する姿勢を鮮明にしています。ことし12月には、首都ワシントンにアフリカ各国の首脳らを招いて会議を開き、経済や食料の安定確保、テロ対策など幅広い分野での関係強化を図るとしています。

このほか、EU、韓国、インドやトルコなどもアフリカの国々との国際会議を開いていて、各国が影響力や存在感を高めようと、しれつな競争を繰り広げています。

アフリカとの関係強化がなぜ重要なの?

もともと、TICADの焦点は「アフリカへの開発援助」でしたが、この10年ほどは「民間企業によるビジネスチャンスの拡大」が注目されるようになっています。

これは世界的なトレンドで、実際、アフリカには世界から多くの投資が集まり続けていて、国連の統計では20年間で6倍以上に増えています。

その理由はアフリカの「広さ」、「人の多さ」、そして「若さ」が、世界を引きつけていることにあります。

まずは面積です。上の図の通り、アフリカの面積は日本の80倍あります。

さらに人口。今のアフリカの人口は14億人あまり(世界全体の約18パーセント)ですが、増加を続け、国連の推計では、2050年までに24億人を超えるとされています。実に世界の4人に1人がアフリカの人々になると予測されています。

ウガンダの雑踏

そして若さも注目です。アフリカの人々の平均年齢は2022年の推計で18.7歳。世界全体では30.2歳、ちなみに日本は48.7歳です。

日本側の関係者は「アフリカの最大の資源は『人』だと思う」としたうえで、「1つ1つの国を見ると大小はあるが、大陸を1つの経済圏として見ると、さらなる成長が見込まれ、マーケットとしての魅力がとても大きい場所だ」と話しています。

国際社会でのアフリカの重要性は?

国際的な政治面でもアフリカの発言力は高まっていて、世界の分断を背景にした、大国間の綱引きの場ともなっています。背景にあるのが欧米をはじめとした民主主義国家と、ロシアや中国など権威主義国家との対立です。

ことし3月、国連総会で、ウクライナへの軍事侵攻を始めたロシアを非難する決議案の採決が行われた際には、欧米や日本など141か国が賛成した一方、5か国が反対、35の国が棄権しました。

棄権した国のうち半数近くを占めたのが、アフリカの17の国々でした。なかにはロシアによる軍事的な支援を受けている国もあり、こうしたつながりから採決を棄権し、ロシアに一定の配慮をしたと受けとめられています。

加盟国193か国からなる国連総会では、各国がそれぞれ1票を持っていて、アフリカ諸国で単純に54票にのぼり、全体の3割近くを占めます。

ロシアにとってはアフリカの国々と関係を強化することで、国際的な孤立の解消につながると指摘されています。
一方でアメリカは「ロシアが安全保障や経済的な結びつきを利用してウクライナ侵攻に対するアフリカの反対の声を弱体化させている」と対抗する姿勢を示しています。

今回の会議で日本は存在感を高められるのか?

今回のTICADでは、日本からの投資や人材育成の支援といった従来のテーマに加え、ロシアのウクライナ侵攻によって深まる食料危機や、新型コロナ対策を含めた保健医療分野での協力などについても意見が交わされます。

モザンビークの市場

アフリカでは、ロシアとウクライナからの穀物の輸入に依存している国も多く、食料不足や食料価格の高騰が深刻になっています。
このため、アフリカの農業生産能力の強化をどう図っていくのか、日本の協力についても意見が交わされる予定です。
日本はアフリカでコメの生産量の倍増を目指す国際的なプロジェクトを主導していることもあり、農業分野でのアフリカ側からの期待は増しているということです。

また、日本政府は、▽再生可能エネルギーの普及に向けた官民挙げての投資や、▽農業や保健医療、エネルギー分野などでの人材育成など、アフリカの成長を後押しする取り組みを表明することにしています。

日本がアフリカにとって「共に成長するパートナー」であることを明確にするとしていて、最終日にはこれらの議論の成果を盛り込んだ「チュニス宣言」が採択される見通しです。

アフリカの将来はバラ色なの?

このように人口増加と豊富な資源を背景に「最後のフロンティア」としても国際政治の場でも注目を集めるアフリカですが、課題も山積しています。

各国それぞれの事情は異なりますが、過激派のテロやクーデターといった政情不安、汚職や貧富の格差、それにぜい弱なインフラや公共サービスなど、投資環境が整っているとはいえません。

実は、日本からアフリカへの投資は減少傾向です。「リスクや日本からの距離を考えるとアフリカは選択肢になりにくい」という声も聞かれます。

アフリカ側からは今回のTICADを契機に、日本からの投資の増加に期待する声が出ています。

8回目となるTICAD。長年、アフリカの支援に取り組んできた日本としても、官民での経済協力を通して存在感を高め、長期的に日本と価値観を共有できる国を増やすことにつなげられるかという点でも、注目されます。

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