2022年8月2日
アフガニスタン アメリカ アジア

アメリカがアルカイダ指導者ザワヒリ容疑者殺害を発表なぜ?

アメリカのバイデン大統領は、国際テロ組織アルカイダの現在の指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者をアフガニスタンで殺害したと発表。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件の計画に深く関わったとされる、ザワヒリ容疑者。
そもそもどんな人物?
今回の作戦に至る経緯は?
わかりやすく解説します。

ザワヒリ容疑者とは?

国際テロ組織アルカイダ指導者 ザワヒリ容疑者(右)と ビンラディン容疑者

アイマン・ザワヒリ容疑者は、国際テロ組織アルカイダの指導者で71歳でした。エジプト出身の元医師で、地元のイスラム過激派組織を率いて、1990年代後半にオサマ・ビンラディン容疑者を指導者とする国際テロ組織アルカイダに加わりました。

資金を管理したり活動の基本理念を構築したりして、ビンラディン容疑者が最も信頼する側近の1人となり、アルカイダのナンバー2としての地位を固めます。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件の後、アメリカ軍などによるアフガニスタンへの攻撃が始まると、ザワヒリ容疑者は隣国パキスタンとの国境地帯に逃れたとみられます。

2011年5月にビンラディン容疑者が、潜伏先のパキスタンでアメリカの軍事作戦によって殺害された後、後継者としてアルカイダの最高指導者になります。ザワヒリ容疑者は、指導者になった後もアメリカなどへの攻撃を呼びかける声明を繰り返し出す一方、その動向が伝えられることはなく、たびたび死亡説も流れました。

そもそもアルカイダとは?

ビンラディン容疑者が率いていた国際テロ組織です。

1988年に結成され、96年に当時タリバンが勢力を拡大していたアフガニスタンに本格的に拠点を移し、メンバーへの軍事訓練を積み重ねました。

アルカイダは各地でテロを行っていて、1998年には、ケニアとタンザニアでアメリカ大使館を同時に爆破するテロを起こし、合わせて200人以上が死亡しました。また、2000年には中東イエメンの港に停泊するアメリカ軍の駆逐艦「コール」に爆発物を積んだボートが突っ込む自爆テロを行い17人が死亡しました。

そして、2001年9月11日、ハイジャックした4機の旅客機をニューヨークの世界貿易センタービルなどに激突させる同時多発テロ事件を起こし、日本人24人を含む、約3000人が犠牲となりました。

なぜアメリカはザワヒリ容疑者を追っていたの?

アメリカ同時多発テロ事件(2001年)

アメリカ同時多発テロ事件の計画に深く関わっていたとされ、事件の首謀者ビンラディン容疑者が殺害された後、アルカイダの指導者になっていたためです。

ザワヒリ容疑者は、2022年5月にアメリカを非難する内容の動画を公開していて、アメリカ政府は、拘束に直接つながる情報提供者に、最大で2500万ドルの懸賞金を出すとして、行方を追っていました。

作戦はどうやって実行されたの?

ザワヒリ容疑者を殺害したと発表する アメリカ バイデン大統領(2022年8月1日)

バイデン政権の高官によりますと、アメリカ政府は2022年に入ってから、ザワヒリ容疑者がアフガニスタンの首都カブールに潜伏しているとの情報を得たということです。

そして、2022年4月にホワイトハウスの高官の間で情報が共有された後、サリバン大統領補佐官からバイデン大統領に報告が行われました。潜伏先の住宅が判明してから、ザワヒリ容疑者が外出することは一度もなかったということですが、バルコニーにいる姿が何回も確認されたということです。

その後、攻撃によって住宅が壊れてザワヒリ容疑者以外の犠牲者が出ないよう、住宅の構造などについても調査したとしています。

7月1日、バイデン大統領はホワイトハウスでCIA=中央情報局のバーンズ長官などから作戦の説明を受けて、潜伏先の住宅の模型も示され、25日には、バイデン大統領に最終的な報告が行われたということです。この中で大統領は、会議の参加者に意見を聞き、全員が賛同したのちに作戦の実行を許可したということです。

そして、アフガニスタンの現地時間の31日午前6時20分ごろ、住宅のバルコニーにいたザワヒリ容疑者を、無人機からミサイルを発射して殺害したということです。現場にはアメリカ人の関係者はいなかったということですが、複数の筋から得た情報によって、死亡したのはザワヒリ容疑者だったとしています。

また、住宅にいた家族にけがはなかったほか、市民への被害も確認されていないということです。

ザワヒリ容疑者とタリバンの関係は?

タリバンは、ザワヒリ容疑者が率いるアルカイダと密接なつながりを維持してきたとみられていて、武器の提供や軍事訓練などで日常的に連携してきたと指摘されています。今回の件について一部の報道では、アフガニスタンで統治を進めるイスラム主義勢力タリバンの幹部の家で、ザワヒリ容疑者が殺害されたという話も出ています。

日本エネルギー経済研究所 保坂修司理事

この点について過激派組織の動向に詳しい日本エネルギー経済研究所の保坂修司理事に聞いたところ、次のような見方を示しました。

「そうであれば、タリバンがザワヒリ容疑者をかくまっていた可能性が高くなります」

一方タリバンは、8月2日に声明を発表し、7月末に首都カブールの住宅に対して空爆があり、調査の結果、アメリカの無人機による攻撃だったことが判明したと明らかにしました。

タリバンは、この攻撃とザワヒリ容疑者の殺害の関連については明らかにしていませんが「国際原則に反し、アメリカやアフガニスタン、地域の利益に反するものだ」として、攻撃を強く非難しています。

今回の作戦の意義は?

先ほどの保坂理事は、ザワヒリ容疑者の殺害について、次のように話しました。

日本エネルギー経済研究所 保坂修司 理事
「アメリカにとってザワヒリ容疑者は、ビンラディン容疑者と並ぶ最も重要なテロリストで、その殺害は、対テロ戦争において1つの大きな区切りになるのではないでしょうか。一方で、アルカイダの組織内でのザワヒリ容疑者の影響力はもともと限られていて、殺害は大きな打撃にならないとみられます。リーダーが殺害されたことは新たなテロを行う理由付けになり、報復として各地でテロが頻発する可能性に注意する必要があります」

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