2022年6月24日
ウクライナ ロシア

【詳しく】ロシア侵攻4か月 広がる犠牲、今の戦況は?

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから、6月24日で4か月。依然として、戦闘の終結に向けた道筋は全く見えない状況です。
犠牲はどのくらい広がっているの?戦況はどうなっているの?
詳しく解説します。
(国際部記者 吉元明訓、後藤祐輔、野原直路)

ウクライナ側の犠牲は?

ウクライナ大統領府で顧問を務めるアレストビッチ氏は、6月11日、ウクライナ側の兵士の死者数が1日あたり、約100人に上るという見方を示し、これまでにあわせて1万人の兵士が犠牲となった可能性に言及しました。

また、ウクライナ側の兵器の損失について、ウクライナ軍で地上部隊の補給を担う司令官は、アメリカの軍事専門誌「ナショナル・ディフェンス」(6月15日付け)のインタビューに対し、これまでに、戦車約400両、歩兵戦闘車約1300台、ミサイル発射システムなど約700基を失い、それぞれの損失の割合は、最大で全体の50%に上ると答えました。

ロシア側の犠牲は?

ロシア国防省は、ロシア側の死者数について、3月下旬に1351人と発表して以降、人数を公表していません。

一方、イギリスの国防省は5月23日、ロシア軍の死者数が約1万5000人に上る可能性が高いことを指摘しています。

ウクライナ側の経済的な損失は?

ウクライナでは、ロシア軍の砲撃や空爆による経済的な損失も増大しています。首都キーウの経済大学は、インフラ被害の総額について、6月8日の時点で1039億ドル、日本円で14兆円あまりに上るとした上で、道路、空港施設、医療機関、学校など、幅広い被害が確認されたと報告しました。

ウクライナが受けた経済的な損失は、5月下旬の時点で、GDP=国内総生産の5倍にあたるという指摘もあり、被害が拡大し続けています。

現在の戦況は?

ロシア軍は、5月下旬、ウクライナ東部の要衝マリウポリを掌握したあと、東部のルハンシク州とドネツク州の完全掌握を目指して攻勢を強め、ルハンシク州ではすでに90%を占領したとみられています。

これに対して、ウクライナ軍は徹底抗戦の構えを崩さず、ルハンシク州に残る拠点のセベロドネツクと、川を挟んで隣接するリシチャンシクの防衛に臨んでいました。

このうちセベロドネツクでは、激しい市街戦の末、ロシア軍が街の大部分を掌握し、ウクライナ側は「アゾト化学工場」を拠点に抵抗を続けてきましたが、火力で上回るロシア軍に対して、苦戦が伝えられていました。

そして、ウクライナ東部ルハンシク州のハイダイ知事は6月24日、地元メディアのインタビューに対して「残念ながら、ウクライナ軍はセベロドネツクから撤退せざるを得ない」と述べ、これまで街の防衛にあたってきたウクライナ軍の部隊が別の拠点に移動することを明らかにしました。

火力にはどれくらい差があるの?

ウクライナのレズニコフ国防相は、イギリスの有力経済誌「エコノミスト」のインタビューで「一部の戦闘地域では、ロシア軍の火力が、ウクライナ軍の10倍ある」と話し、欧米各国に兵器の供与を加速するよう呼びかけています。

一方、ロシア側の損失も積み重なり、戦況を分析するイギリス国防省は、6月16日、東部のロシア軍が深刻な兵員不足に陥り、進軍が鈍っていると指摘しました。

こうした現状について、アメリカ軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は「第1次世界大戦のような激しい消耗戦だ」と述べ、東部の戦況は、今後の全体の戦局を大きく左右するとみられています。

ロシア、ウクライナ双方の狙いは?

東部でロシア軍が攻勢を強めているのに対し、ウクライナ軍は南部で反転攻勢に乗り出そうとしています。南部のヘルソン州は、8年前ロシアが一方的に併合したクリミア半島に隣接し、ロシア国防省は、3月中旬以降、州全体を掌握したとして、行政機関を管理下に置いてきました。

これに対して、ウクライナ側は、欧米からの兵器の供与を待って反撃に転じる方針を示し、ヘルソン州の奪還に強い意欲を示してきました。ウクライナ側としては、ロシア軍の兵力が比較的手薄とみられる南部で反撃に転じ、東部の戦況を有利にしたい狙いもあるとみられます。

アメリカのシンクタンク、戦争研究所は6月19日「ヘルソンの州の境で、局地的にウクライナ軍の反撃が続き、ロシア軍が押し戻されている」と指摘しました。

ロシアが掌握したとする地域は?

ヘルソン市 イーホル・コリハエウ市長

4月、ロシア側に市長の職を一方的に解任されたへルソン市のイーホル・コリハエウ市長に、6月17日に取材した際、ヘルソンではウクライナからの支援物資や通信が遮断され、ロシアによる支配の既成事実化が進んでいると訴えていました。

具体的には、ロシア側が、企業の法人登記を移し替え、個人の家屋を許可なく利用しているほか、ロシアのパスポートを一部の市民に発行したということです。

一方、こうした支配に抵抗する動きも根強く、コリハエウ市長は現在も、公共交通機関の運営や水道事業などに関しては遠隔で指示を出し、行政に影響力を残しているということです。

コリハエウ市長は「敵と関わる人はいるが、数は少ないだろう。ロシアに権力を譲ったように見られてはいけない」と話し、抵抗姿勢を強調しました。

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