2023年4月28日
アメリカ大統領選挙2024 トランプ前大統領 アメリカ

アメリカ共和党 トランプ支持者が地方で“下克上”?

「トランプか、反トランプか」

アメリカの野党・共和党の地方組織ではいま、トランプ氏を支持する勢力が力を伸ばし、“下克上”ともいえる事態を引き起こしています。

大統領経験者として史上初めて起訴されたものの支持率は下がらず、その人気は衰えていないトランプ氏。

いま地方でいったい何が起きているのか。共和党内で深まる分断を取材しました。

(国際部記者 岡野杏有子)

史上初の起訴でも際立つトランプ人気

まず訪れたのは、中西部インディアナ州のインディアナポリスで行われたNRA=全米ライフル協会の年次総会。

NRAは銃規制に反対するロビー団体で、共和党の有力な支持団体です。

毎年行われるこの総会は、大統領選挙を目指す政治家が支持を訴える場としても知られています。

主催者発表で7万人以上が参加した会場で目立ったのは、トランプ氏の名前が入った帽子をかぶったりTシャツを着たりしたトランプ支持者たち。

演説が始まる4時間以上前から長蛇の列ができていました。

そして会場にトランプ氏が登場すると、全員総立ち。大きな拍手と歓声が沸き上がり、会場内は一気に盛り上がりを見せます。

全米ライフル協会 年次総会で演説するトランプ氏

トランプ氏

「大統領としての4年間ですでに多くのことを成し遂げたが、まだやらなければいけないことがある。

 美しくすばらしいホワイトハウスを取り返しアメリカを再び偉大な国にするのだ」

大統領経験者として史上初めて起訴されたものの、その後も支持率が下がらないトランプ氏。

会場でもトランプ氏を支持する声が目立ち、その人気の衰えは感じられませんでした。

会場訪れた人

「トランプ氏を支持する。彼の理想は私とほとんど同じだ」
「彼はホワイトハウスにいる多くの人に比べ悪いことをしていない。彼はこの国をよくする」

トランプ支持の新興勢力 その実態は?

こうしたトランプ氏の人気がいま、共和党の地方組織に激震をもたらしています。

その1つが、ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊のバトラー郡。

昔から共和党が強い地域で、前回の大統領選挙でもトランプ氏が圧勝しました。

ここでいったい何が起きているのか。その中心人物の1人に話を聞くことができました。

地元のスーパーマーケットで働くザック・シェーラーさん(20)です。

高校生だった頃、トランプ氏をきっかけに政治に関心を持つようになったシェーラーさん。前回の大統領選挙で不正が行われたというトランプ氏の主張にも賛同する、熱烈なトランプ支持者です。

シェーラーさん

「トランプ氏によって目を覚ました若者は多いと思う。普通の人みたいなところが好きだ。 ひぼう中傷もするけど、それが若者っぽくて好きになる」

トランプ氏の選挙活動を手伝ってきたシェーラーさん。

前回の大統領選挙後には、バトラー郡でも不正があったのではないかと仲間とともに独自に調査もしましたが、そうした動きに協力的ではないようにみえた地元の共和党支部に不満を持つようになったと言います。

シェーラーさん

「バトラー郡では、20年、30年も支部の役職についている人が多い。正直、彼らは自分のために役職にいるだけだと思う。今は刷新する時だ」

古くからの支部のメンバーは、トランプ氏が批判する「既得権益」にすがっていると感じるようになったシェーラーさん。

去年5月に行われた共和党支部の委員を選ぶ選挙に60人以上の仲間とともに立候補します。

その結果、トランプ氏を支持する人たちが委員の過半数を占め、事実上、支部を支配下に置くことに成功したのです。

昔ながらの共和党員は何を思う

バトラー郡の共和党支部で40年、代表を務めてきた弁護士のアル・リンジーさん。

シェーラーさんたちの台頭によって去年、退任に追い込まれました。

バトラー郡共和党支部元代表 アル・リンジーさん

リンジーさん

「とてもいい組織だったが、突然バラバラになってしまった。

 彼らはトランプ氏のような大衆迎合で現実と向き合っていない。選挙で民主党に勝つことより、共和党を支配することの方が大切で、それが勝利につながると信じ切っている」

トランプ支持者だけでない、保守層すべての大同団結を支部の方針としてきたというリンジーさん。

シェーラーさんたちの動きは保守層の分裂を招く行為だと考え、危機感を抱いています。そして、出した結論は新たな団体の立ち上げ。

トランプ氏を支持する勢力に”乗っ取られた”支部に対抗するため、自分たちの考えに同調する人たちを増やしていき、再び主流派になろうと考えているのです。

リンジーさん

「彼らが私たちのことについて納得することはないだろう。ではどうやって党内をまとめることができるのか。 われわれ側がもっと票をとることができたらいいのだ。再び奪い返すのだ」

“下克上”の先にあるものは…

バトラー郡の共和党支部で主流派となったシェーラーさん。

しかしその後、主流派の中でも主導権争いが起きるなど、なかなか支部としてまとまることができず、戸惑いも感じています。

シェーラーさん

「よいことをしていたつもりだったが内部の争いだけを引き起こし、いろいろな人がリーダーになりたがるようになった。何も事態は進展しなかった」

バトラー郡のように、共和党の地方支部の中で、トランプ氏を支持する勢力が穏健派のメンバーを追い出す動きはいま、各地で目立ち始めています。

こうした状況は来年の大統領選挙に向けて共和党の弱体化を招き、民主党を利することになるのか。

それとも、共和党内でトランプ氏の存在感がさらに強まり、逆に結束を強めることになるのか。

地方で起きている共和党の“変化”を、これからも取材していきたいと思います。

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