2023年3月3日
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【ショートコラム】「ウクライナにレーダーを!」

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年となった2月。

ウクライナと同様、ロシアと国境を接するバルト三国の1つリトアニアを訪れると、街なかで目につくポスターがありました。

リトアニア 首都ビリニュス中心部にあるポスター

「RADAROM!」

リトアニア語で「レーダー」を意味する単語と、「さあ、やろう」という意味の単語、2つを掛け合わせてつくったことばが「RADAROM」。

市民や企業から寄付を募りウクライナに防空レーダーを送ろうという取り組みで、3週間あまりで集まった額はおよそ20億円。14基のレーダーがウクライナに送られることになりました。

夫と年金で暮らす79歳のニヨレ・ブラジェニエネさんも寄付を行った1人です。

ニヨレ・ブラジェニエネさん(右)

18世紀以降主にロシア帝国に支配されていたリトアニアは1918年に独立を宣言しましたが、第2次世界大戦中の1940年に旧ソビエトに併合され、その支配はおよそ半世紀にわたって続きました。

ブラジェニエネさんは5歳のとき、ソビエトによる支配に反対していた父親が政治犯として極東の収容所に収容され、祖父母もシベリアに送られたということです。

私たちはたいへん苦しみました。ロシアに支配されることがどういうことか、よくわかっています。ウクライナの人たちは血を流して戦い、命を落としているのです。これが私たちにできる精いっぱいの支援です。

1918年の独立宣言を祝う記念日である、2月16日。

首都ビリニュスの中心部には大勢の人が集まっていました。

式典の会場となった大統領府前の広場では、人々が手に小さな国旗を持ったり、黄・緑・赤の国旗カラーの帽子やマフラーを身につけたりして記念日を祝っていました。

子どもを連れた人も多く、3人の子どもの母親は「ウクライナでいま何が起こっているかを見ると、独立を祝うことはいつにも増して重要です。子どもたちにも自由が簡単に手に入るものではないことを学んでほしい」と話していました。

レーダーを送る取り組みを主催した1人、エドムンダス・ヤキライティスさんは、支援活動の広がりにはリトアニアの安全保障への懸念もあると指摘します。

エドムンダス・ヤキライティスさん

もしウクライナがロシアの侵攻を止められなければ、次はリトアニアがねらわれると多くの人が思っているのです。私たちはソビエトに併合されたときのことを今でも覚えています。そうした歴史を繰り返したくはありません。ですからウクライナを支援しているのです。

ヨーロッパ各国で「支援疲れ」が指摘される中、多くの人がウクライナへの支援活動を続けているリトアニア。

その背景には、いまだに忘れることのできない「苦難の記憶」とロシアへの強い警戒感がありました。

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